月が大きく赤く見える理由
大地震の前には、月や星が大きく低く、かつ赤く見えることがあります。天が落ちるように感じたという報告もあるくらいです。また、月が地平線上に上がって来る時に、赤く異常に大きく見える時がありますが、その理由として、低い位置にあるときには、地上の家や立ち木などと比較できるので、錯覚して大きく感じるのです、という説明があります。今でも学校ではそのように教わるのかもしれません。しかし、月が大きく見えるのは、決して目の錯覚ではありません。光の屈折現象として、説明ができるのです。赤く見えるのも地震現象と関連して説明できるのです。ただ、すべてが地震現象と関連するわけでもないことも重要な知識です。

この図は地上のA点で観測される月の光の屈折状況を示すものです。大地震では、かなり前から、解離ガスの圧力で、暖かい水蒸気が地下から、噴出します。そのために、地震の前は蒸し暑く感じるのです。この水蒸気は地表面を暖かい空気層として覆います。そして、その上に冷たい空気が存在するという、明瞭な二層の空気層ができます。月の上端と下端から出る光線はそれぞれB点とC点で屈折し、A点に届きます。B点とC点での入射角度の違いから、屈折角度もC点でのほうが大きくなります。A点にいる観測者の目には月の上端はA-Bの延長上D点にあるように見えますし、下端はA-Cの延長上E点にあるように見えます。よって、見かけの月は実際の月よりも、低く、大きく見えるのです。月が上空に上がって角度差が現われ難くなるのにもかかわらず、なおも大きく低く見えるなら、かなりの規模の温度差がある二層になっているわけで、規模の大きな地震の可能性があるのです。たいていの場合、夕方見る赤い不気味な満月も、夜半になるといつもの大きさの黄色い月に戻っているのです。ライブラリー14に説明したように、この関係は船べりから見た海の底の様子と同じ関係です。底が浅く感じられて、岩や魚が大きく見えるのと同じ理屈です。

月が赤く見えるのは、夕焼けと同じ理屈です。月の光も太陽光線の反射ですから、七色光線で構成されているのは同じです。七色のなかでも、波長の短い青色光線は空気中の水蒸気やチリによって散乱し、波長の長い赤色光線だけが侵入してきますので、月が赤く見えるのです。

以上から分かるように、月が大きく赤く、低く見えるのは大地震の前兆である可能性があるのです。しかし、地中からの水蒸気上昇とは別の原因で、空気層が二層状態になれば、同じような現象になるわけで、全てが、地震の前兆現象ではないことが理解できると思います。

追加説明:(2007,8,29作成)

上の説明を聞いても、学校教育の中で、「目の錯覚」と習ったために、現実に月が大きく見えることが信じられない方が多いようです。そこで実験を追加して説明を行います。

上の図は右図のような状況を想定して、冷たい空気層の厚さを変化させて、月がどのように見えるかを、実験的に示したものです。

深さ24cmのバケツの底に不要になったCDを固定し、水深0cm〜24cmの間を5cm刻みになるように水を入れ、90cmの高さに固定したカメラから撮影した写真です。CDは2%程度ずつ大きく写っており、水深24cmではほぼ10%大きく写っています。

カメラの設置位置を変えて蒸し暑い空気層に該当する部分を、変化させていく実験でも、同じことになるでしょう。重要なのは二層間を通過するときの屈折角度ですから、月が上空に上っても大きく見えるときは、二層間の屈折率が大きく違っているわけで、蒸し暑い空気層が広がっている可能性を意味します。

また月が上空に上っても赤いということは、蒸し暑い空気によって短波長の波が散乱し、波長の長い赤い波が進入して来ているということで、大量の蒸し暑い蒸気が噴出している可能性を意味しています。

参考:セミナー[1299][1302]

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下図は月が水平線上にあるときの拡大率と相対屈折率の関係