新・地震学セミナーからの学び
51 プレート論の矛盾(パキスタン地震とスマトラ沖地震)
中日新聞の2005年10月13日夕刊にパキスタン地震に関して解説がありました。「印パ核実験の影も」あるという内容ですが、プレートによる地震の解説では矛盾が発生することを述べておきたいと思います。

まず解説の抜粋を紹介します。

「パキスタン、インド国境付近で起きた大震災。ヒマラヤ山脈」の”おひざ元”での自然災害だが、発生メカニズムは昨年末のスマトラ沖地震と密接に関係。印パ因縁の核開発競争も影を落としているという。」

と言う出だしで始まり、

「パキスタン地震の足元で、大型ハリケーンの来襲に相次ぐ大地震。"天地異"を実感する世界各地での大規模災害だが、今回のパキスタン地震と昨年暮れのスマトラ沖地震の関連性を専門家はどう見ているのか。

「地球上の表面には、いくつかのプレート(岩板)が水平に動いており、これがさまざまな地震や火山活動をもたらす。インド亜大陸を乗せて北上するインド・オーストラリアプレートと、ユーラシアプレートが衝突する南西アジアでは、過去にも頻繁に大地震が起きている。八千メートル級のヒマラヤ山脈は、この両プレートの境界が盛り上ってできた。また、津波で三十万人以上の死者・行方不明者が出た昨年末のスマトラ沖地震も、同じプレート同士の境界で起きた」と南山大学総合政策学部の目崎茂和教授(地理学)は解説する。

パキスタン地震はプレートの北北東移動が原因、スマトラ沖地震はプレートが東北に移動するのが原因と言うのでは矛盾が生じます。

その上で「同じ組み合わせのプレート境界での発生」と言う意味でスマトラ沖地震と今回のパキスタン地震は共通性がある。一カ所が崩れたわけだから。プレート全体が連動したり、周辺のプレートに影響することも考えられる。地球全体が活動期に入ったと想定できるかもしれない。」

と解説してあります。

しかし、「ヒマラヤ山脈は、この両プレートの境界が盛り上ってできた」と考えるのなら、インド洋側の海洋プレートが、スマトラ島の下に潜り込んで起こったと言う昨年12月のスマトラ沖地震の解説は矛盾するのではないでしょうか。プレートとは一枚の剛体と言う意味ですが、一つのプレート上で、ある場所の説明では北上して、ある場所での説明では北東に移動すると言うのではプレートが裂けてしまうことになって矛盾が生じます。
また、同じプレートなのに、ヒマラヤでは境界が盛り上がり、スマトラでは潜っていくのは何故なのか、ヒマラヤ付近とスマトラ付近の境界ではどのようになっているのか、教えていただきたいものです。

新聞の記事ではさらに「活断層に割れ目」を作る可能性と言う見地から、印パの核実験の影響を危惧する解説が続いていますが、「活断層に割れ目」と言うのはどのような物理化学の現象に連結するのか、私には想定が出来ません。核実験を容認すると言うのではありませんが、プレート論と活断層論が都合のいいように織り交ざったご都合主義解釈のように感じられてなりません。