新・地震学セミナーからの学び
44紀州沖・東海沖地震の押し引き分布
’04.9.5に発生した二つの地震は震源地が少し違うだけですが紀伊半島沖と東海道沖で発生したということになっています。定説地震学の説明では二つともプレート境界型の東南海地震とは発生のメカニズムが異なっているということになっています。今回の地震は図1にあるようなフィリピン海プレートの内部においてプレート表面に垂直な逆断層が動いた地震であるということです。
しかしこの解釈ではいくつもの疑問が生じます。

疑問1.逆断層とは上板がアップして下板がダウンするようなものですが、この図にある断層の動きですと、上板はダウンし、下板はアップしますので、逆断層ではなくて正断層ということになってしまいます。

疑問2.断層が垂直に動くということは、M7クラスの地震でもかなりの津波を引き起こすはずです。震源深さが10キロから40キロに訂正されたそうですが、訂正された原因が不透明な気がします。

疑問3.この断層からは志摩半島が南へ数センチ移動したと言うGPS観測の結果を説明できないと思います。

図1定説地震学による高角の逆断層(中日新聞9・6夕刊)
疑問4.この断層が地震の原因だとすれば、震源に近い尾鷲などでは縦揺れが激しくなるはずですが、実際には横揺れが顕著な地震であり、揺れ方の説明が出来ません。

それではどのような地震であったかということですが、石田理論によれば、右図にあるように震源から志摩半島に引いた線の左右45度に当たる地域が震源に向かって移動する引き領域になり、その外側が押し領域に該当します。右ずれと左ずれを区別してもあまり意味の無いことですが、震源から浜松付近に向かうライン上には、発生しているとすれば左ずれ断層が、震源から串本に向かうライン上には右ずれ断層が出来ることになります。
図2 石田理論(といっても石本博士の理論から学んだことですが)による断層の説明
四国関西方面へも津波が押し寄せていますので、押し円錐は少し西側がアップし、東側がダウンしているような傾斜だったのではないかと思います。したがって断層も完全な水平断層ではなく、少し傾斜の付いた断層で、押し領域がアップし、引き領域はダウンしていると思われます。

押し円錐の傾斜は解離ガス(爆鳴気)の爆発方向によって決まるもので、押し円錐の軸が垂直に近いものが直下型地震となります。今回の爆発は水平に近かったので、たいした津波にはなりませんでしたが、マグニチュード7クラスの直下型の地震ならば大きな津波となり、被害が発生しただろうと思います。

地震爆発説が正しく理解されていないために、津波発生の理屈も曖昧なものになっているような気がしてなりません。今回の地震と津波関連の気象庁発表から気になった点であります。