新・地震学セミナーからの学び
24 水の三態図と解離水爆発の関係(余震が起きる理由)
水は温度と圧力によって、固体とも、液体とも気体ともなる物質であります。水の三態として知られているもので、その関係は図ー1のようになります。高温、高圧の地下では、熱水状態を超えると超臨界水となります。さらに温度が上昇すると、酸素と水素に熱解離しますが、その解離度は温度、圧力、触媒物質の存在によって、変化します。一般には温度が高いほど、圧力は低いほど解離度が高くなります。珪酸化合物の存在は触媒となるために解離度が高くなるようです。解離度が等しいライン(等解離度線)を引くと図のような斜線で表されるはずです。
図ー1水の三態図と等解離度線の関係
図中の円形の部分を取り出して解離水の爆発現象を説明したのが、図ー2です。

解離度が低い領域にあった安定した結合水(超臨界状態の普通の水のことです)が、解離度の高い領域に移動または、環境の変化があると、解離水が発生します。解離反応は吸熱反応であるために、周囲の温度は低下します。爆鳴気とも言われる解離水ですが、すぐに着火することはありません。しかし次第にその外縁から熱の移動を受けると、低温度領域が減少して、着火・爆発に至ります。これが地震の発生であります。爆発は結合反応で、熱を放出しますので、再び結合水に戻ると共に、温度を回復します。

図ー2 解離水爆発の説明 (模式図 ) 高解離度領域への人為的移行は解離水(爆鳴気)を発生させて、地震の原因を作ることになる。大深度地下の利用工事には注意を要する。                   

しかし完全に元の温度・圧力関係に戻るのではなく、若干のエネルギー損失があるはずです。地震エネルギーとして消費されるためで、その分だけ地球が冷えたことになります。解離度の変化が激しい時には、大量の解離水が発生しますので、大地震となります。

この図のような解離反応と結合反応が繰り返し起こっていることが余震が続く原因です。余震は解離条件が安定するまで終わることはありません。

火山地帯等での出水を伴う大規模なトンネルエ事や、水蒸気を抜いて、地中圧力を減じてしまう地熱発電を行う場合などは、解離度を増加させることになるので、圧力と熱のバランスを十分に考慮しないと、人為的に爆発させてしまう心配があります。何年か前にあった安房トンネルエ事での事故や、岩手山山麓の松川地熱発電所近くで起こった地震などは大丈夫であったのだろうかと心配になります。炭坑内で生じる山ハネという現象も同じ理由で生じる解離現象でしょう。ベテランの炭坑夫は、山ハネの前には、腰から下が見えなくなってしまうほど、水蒸気が靄のように立ちこめることを知っているようです。解離水爆発の前にも、少しずつ反応が始まって、震源上部の圧力が高まり、バランスを崩した熱水が上昇しているのだと思われます。

これらの図はもっと広いことをも教えてくれています。石油や天然ガスを採掘するときに、急激に地下の圧力を減じると、その影響が採掘位置より下部に及び、そこの解離度を上昇させます。これは、地震を誘発する危険のある人為行為であります。近年の採掘は、効率を上げて、汲み尽くすために、採掘後の空間に置換水を送って圧力を維持させているそうですが、結果としては解離水爆発を防ぐことになるといえます。一九九五年のサハリン地震、同年新潟北蒲原地震などでは、そうした措置がなかったために人為的に地震を起こさせてしまったのではないでしょうか。戴峰氏は空洞地帯ができたことが地震を誘発したのではないかと心配しています。そして、阪神大震災の原因も「山を崩して六本ものトンネルを掘って大都会を作り・・・目に見えない地下構造を破壊してしまった」ことがきっかけになっているのではないか、と述べています。解離層の研究をせずに、安易に大深度地下空間を掘削してはいけないということを学ばなければならないと思います。


参考 ニューオフィス21 23

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