新・地震学セミナーからの学び
8 地震波はマントル内部を伝播するのではない
これは修正しています。セミナー[1464]を参照してください。

Fig.1 地球内部を伝播する地震波の経路。旧理論と新地震理論の相違点。
Fig.1の青い線は地震波が地球の内部を伝播していくと仮定して計算する時の地震波の経路図です。中心角度が103度を越えた地点では地震波が観測されないものですから、そこから先には”伝わらないように”中心核(外核)を想定して、核の内部は液体であると説明しています。しかし、142度を超えるとまた観測されますので、液体の核を通過した波が、さらに到達するように種々”工夫”して考えられています。現在はこれよりももっと複雑に、外核の内部にもう一つ内核をもうけて、そこは固体であると説明しています。

この関係図を認める限りはマントル固体論から抜け出ることはできません。しかし、マントルが固体では、物理的に不都合なことが一杯出てくるのです。たとえば、大地震が起きると、地球はしばらくのあいだ、お寺の梵鐘のように震動が続いて、やまないのです。マントルが固体であれば震動することは不可能です。(セミナー31)また、マントルは対流するから地球の磁場が出来るのではないでしょうか。それが地球が生きているという”証”でもあると思うのです。固体であれば磁場が発生しないと思います。いやマントルは固体だけれども対流するのだよ、と言う説明は矛盾しています。プレートを移動させるほどの対流を、固体が引き起こすとは考えられません。

Fig.2 モホロビッチが考えた地震波の経路と新地震理論による地震波経路
Fig.2はモホロビッチが考えた地震波の経路と新地震理論による経路とを示したものです。震源から直接伝播する波よりも、地下に潜った波の方が早く到達するので、走時が曲線になるということを説明したかったのです(地殻第二層の橄欖岩は地震波を早く伝えます)。しかし、モホロビッチの進路では図のb点で浮上する理由が見当たりありません。明らかに、波動論からいって矛盾した説明図です。概念図としてなら理解ができますが・・・。ライブラリー38も参考にしてください。
結果論としては、新地震理論の経路図が示すように液体マントルの上部で反射する地震波が地上に浮上しますので、モホロビッチの推論したことに大きな間違いはないと言えますが、正しい経路を通過していく波は長い距離を走行していますので、伝播速度は通常考えられている時速8kmより早いはずです。走時が曲線になる理屈はモホロビッチの推論で正しいわけです。なお、マントルが固体であると仮定すれば、マントル上面で反射せずに、マントル内に伝播していきますが、液体ならば、マントル内に進行できる波は、垂直進入に近い(地球裏側に向かって進む波だけ)一部の波だけになります。S波は勿論液体中は伝播しません。マントルトモグラフィーの破綻です(セミナー 26 120 145 参照)。現在でも、地震学者はモホ面より下は、外核に達するところまで固体であると考えています。この自縛が、モホロビッチにもあって、波動論に矛盾する地震波経路を選択したのだと推定されます。
Fig.3 新地震理論による地震波の経路 走時が曲線になる理由
Fig.3は、新地震理論で提示する地震波の経路と、それから理解できる走時(地震波の到達時間と距離の関係図のこと)が曲線になる理由の説明図です。ライブラリー40にも載せてあります。橄欖岩で出来た高速度帯を遠くまで(中心核103度の地点まで)、減衰することなく伝播させるのは、光ケーブルの伝播方式に近いものだと思います。図中Hのような波のことです。35と36の ラブラリーも参照してください。35 36

以上説明しましたように、地震波はP波の一部をのぞいて(S波は勿論のこと)、地球の内部を伝播するのではないことを説明しました。地球内部に、外核、内核があるかどうかは、知りません。しかし存在しなくても、何の不自由もありませんし、ないほうが、かえって、マントルが自由に対流できて、地球磁場を構成する仕組みが理解しやすくなり、地球が生きていると言う実感が湧き上がってきます。ニューオフィスLには地球内部の話が展開してあります。

地震波の伝播経路に関してはセミナー[1314][1315]および[1356]に最新の考え方が示してあります。(2007,9,16)

この問題はレオロジーの解釈を「マントルは熔融物質であるが高圧下では弾性体としても挙動する」 と解釈しなおしています。セミナー[1464]仮説の修正[1465]マントルトモグラフィーの理解に最新の解釈を示しています。(2008.7.26)

マントル熔融論、S波の伝播問題、レオロジー等に関する最新の見解は [2339]、[2341]を参照してください。

BACK