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2006-04-10 (Mon)
理解に苦しむ内核と外核の提案理由
あるサイトで地震波が届かないシャドーゾーンができるのは石田理論で説明できないという批判が載っていました。
これまでにも、地震波は二層構造の地殻内部を反射と屈折を繰り返しながら伝播するというのではシャドーゾーンが出来る理由が説明できないという批判を受けてきました。そんなに都合よく中心角103度の位置で減衰することは考えられないという理由からです。(セミナー[355]-8および[327]

しかし、下の図にありますようにその後の観測ではシャドーゾーンA―B間にも地震波は届いていることが判明しており、地震波が届かない「影の領域」という意味は無くなっているはずです。
http://www.ime.st/www.s-yamaga.jp/nanimono/chikyu/chikyunokozo-02.htm
によると、

「地震の観測網が整備されていくと、これまでは地震波(P波、S波)はまったく届かないと思われていた地震波の影(シャドーゾーン)にも、弱い地震波が観測されるようになった。
そこで、デンマークの地震学者レーマンは、核の内部にも不連続面があり、そこを境にして急に地震波の伝わる速さが速くなると考えた。
この地表からの深さ5100kmに存在する不連続面をレーマン面ということがある。
このレーマン面で地震波は、グーテンベルグ面と逆の屈折をして、地震波の影(シャドーゾーン)に出る経路をとるのである(下の緑色の経路)。」とあります。


これは地球内部の核にも外核と内核があるというさらに発展した話ですが、核という概念を最初に提案したのはオルダム(R.D.Oldahm 1906)です。オルダムはシャドーゾーンが出来る理由を説明するために核の存在を提案しました。また核が地表から2900kmの位置にあることを示したのは、地震波経路を計算した(インバージョン法にて)グーテンベルグ(Beno Gutenberg 1914)ということです。

しかし、影の存在は良く調べたら存在しないということが判明したというのに、何故核だけは残しているのでしょうか。核の存在も白紙に戻すべきではないのでしょうか。

また、さらに話を複雑にして内核まで持ち出し、影の領域と思っていた場所への地震波の到達を何故説明しなければいけないのでしょうか、理解に苦しみます。

なお、石田理論によるP波の伝播経路を模式的に表示すると黒い実線のようになります。薄緑が定説での経路です。


O〜A間は伝播速度の速い地殻第二層(橄欖岩)の中を反射と屈折を繰り返して伝播し、A点(中心角103度)には14分足らずで到達します。振幅は減衰しますのでB〜C間のような明瞭なものにはなりません。一方B〜C間は地球内部を伝播しますので、20分前後の時間が掛かりますが、はっきりとしたかなり強い波形になります。

B〜C間には明瞭な地震波が届き、A〜B間には届かない(当時の観測技術では検知できなかっただけ)、しかも到達時間にかなりの差があることの不思議さを地球内部の核という概念で解決しようとしたのがオルダムです。

しかし、B〜C間に届くP波以外は光ファイバーのような構造の地殻内部を通過していると考えれば、内核とか外核という概念は不要になります。また、マントルは固体だけど対流もする、とか外核は液体で内核は固体であると言うような複雑な設定は不要になるはずです。地球内部は熔融マグマが対流していて、それが原因で地球の磁場を形成している、という素朴な地球観のほうが正しいのではないでしょうか。

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2006-04-14 (Fri)
走時表の検討
ニューオフィス53に地震波の走時表についての検討「地震波の伝播経路(走時曲線の考察)」を追加しました。
http://www.ailab7.com/soujihyou.html
石田理論に従うと走時表がどのように表されるのかは、まだ計算しておりませんので不明ですが、現時点での疑問点などをまとめてみました。
マントルが固体であって、P波もS波もマントル内を伝播しているとする定説がどうしても信じられませんので、納得のいくまで探求してみようと考えています。
走時表に関する情報がありましたら、どのようなものでも結構ですが送っていただけるとありがたいです。事務局ansin@ailab7.com までお願いします。
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2006-04-20 (Thu)
プリュームの存在は走時表と矛盾しないのか
実測による地震波の走時表と理論走時が正確に一致することについてまだ納得できず、戸惑っています。

本日届いたニュースレター「グローバルテクトニクスの新概念」No37の中に、「深発地震分布にもとづくマントル構造についての再考察」という記事があり、オーストラリアのPeter M.Jamesという人の研究で、文頭に次のような文章がありました。

「Dong Choi(1)によると、地震波トモグラフィをテーマとする最近の論文では、とくに大陸および海洋ドメインの境界領域では、地球内部の最上部1000kmほどの部分は決して均質で等方向的でないことが示される。Choi論文は、地球外殻に関する伝統的文献に示される単純なタマネギ・モデルを、事実上、排除するものである。」

以上がその文章ですが、確かにマントル内のプリューム構造や、700kmの深部まで起きている深発地震の分布形状などは、タマネギモデルとは矛盾するのではないでしょうか。しかし、実測による走時表は地球内部がタマネギ・モデルに一致することを示しているので、どこかに矛盾があるとしか思えない。


http://www.s-yamaga.jp/nanimono/chikyu/chikyunokozo-02.htm#ホット・プルーム より
マントルが2900kmの厚さを持つ固体の成層構造でなくても、実測の走時表のようになる可能性は無いのだろうかと考えを巡らせているところであります。

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2006-04-23 (Sun)
カムチャッカ地震の実測走時
カムチャッカ半島でM7.7という大きな地震がありましたが、余震はまだ続いています。この地震をアメリカ各地で記録した地震波の波形記録が下記サイトで見ることが出来ます。
http://psn.quake.net/cgi-dos/event.exe
M6という余震の一例を掲載させていただきますが、観測点はテキサス州のダラスです。距離は中心角で64.41度ということです。

グラフにはP波とS波の到達時刻(P:7時32分36.6秒 S:7時41分13.7秒)が記入されていますが、この地震記録からP波やS波の到達時間が本当に秒単位で実測できるのでしょうか。さらにはPPとかSS、あるいは地球内部にあるという核で複雑に反射してくる波を判定できるものでしょうか。

別の記録を見るともっと不思議なケースもあります。表面波と思われるような激しい震動の中にP波やS波が隠れてしまっているようなものも(M7.7を記録したオレゴン州や、アイスランドの記録など)あります。
走時表は実測値と理論値が一致しているということですが、この地震を見る限り一致していないように思うのですが、どのようにして実測の到達時間を計測するのか、分かる方がありましたら教えていただきたいと思います。

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2006-04-23 (Sun)
地震波到達時刻の読み取り
理論走時表の解析前提であるマントル固体・成層構造(タマネギ構造)が正しいのかどうか、そして実測の走時表と一致するのかどうかを確認したいのですが、P波とS波の到達時刻読み取りが[1174]に紹介したように、それほど簡単ではないようであります。

検索して興味深い記事を見つけました。京都大学阿武山観測所で長年地震計の保守作業をしてこられた中川技官の回顧文で、抜粋して紹介します。

http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/~dptech/gihoh/gihono05/nakagawa.pdf
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36年 9 ヶ月間を思い出す      文部科学技官 中 川 渥
昭和42 年 7 月1日より阿武山観測所に勤務を始める。
(中略)

【ウイヘルト地震計】 周期の比較的長い周期の波を上手く捕らえる。震源距離の遠い波で地球内部を反射、屈折してきた波でどこに到着した波の波形があるのかまったくわからない。

その手助けになるのが走時表、これは震源までの距離がわかると、その波の到着時刻が記され。その時間を発震時刻に加えた時刻を記録上で見ると、記録のコントラストが悪く今まで見逃していた記録のゆれの中から地震波の到着波形が見つかります。このような厄介な手順による作業でかなりの時間をかけながら、使われることなく25 年も従事していたのです。今でも誰も見もしない記録を取らされていたのがまったく理解出来ないのです。

このウイヘルト地震計の観測は1991年7月1日9 時で終わった。
やっと終わったか、それ以外の特別の感情はわきあがって来なかった。
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「今でも誰も見もしない記録を取らされていた」というのは誠にお気の毒な感じですが、理論走時が否定されたら地震学の土台が崩壊しますから、研究者は誰も見ないのでしょうか・・・そんなことは無いでしょうから、理論が正しいことを完全に信じておられるのだと思います。

やはり、思っていたように、まず理論走時表ありき、で進められているようです。理論が正しいのかどうかの吟味が充分にしてあるのかどうか疑問に思ってしまいます。
また、S波の到着時刻の読み取り方法に関して、兵庫県南部地震余震の教材化というサイトに次のようにありました。

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~yossi/doc/omori1.pdf
-----------------------------------------
(2)P波、S波の到着時間の読み取り P波初動到着時刻と発震時刻との差より、P波の震源から観測点までの所要時間Tp[sec]を求める。
波形記録よりP-S時間(初期微動継続時間、あるいはS-P時間とも呼ばれる)Tps[sec]を読み取り、S波の到達所要時間Ts[sec]をTs=Tp+Tpsで求める。なお、S波の到着時刻の読み取りは専門家でも難しい場合があるが、水平動で大きく振幅や周期が変化し始める場所を読むとよい。
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S波の到着時刻の読み取りは専門家でも難しい、とありますが本当にPSとかPPSとかの波が読み取れるものなのでしょうか。

グラフはカムチャッカ地震(M7.7)をニューヨーク(距離:67.078度)で記録したものです。S波の到達時刻(図中矢印)は理論値なのかもしれませんが、実測値には該当しないように思えます。その4.5分後に大きな波がありますが、これがSSなのでしょうか、Sよりも振幅が大きなSSというのがあるものでしょうか。
とにかく中川技官が述べておられるように、「地球内部を反射、屈折してきた波がどこに到着したのかまったくわからない。その手助けになるのが理論走時表」という作業方法では、地球内部がタマネギと違う構造になっている場合には新発見を見逃すことになってしまいます。

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2006-04-26 (Wed)
化学的マントル論と物理的マントル論
マントルを化学的立場から見ると、これまでにもセミナー([1110][1146]など)や ニューオフィス37で紹介してきたように400km以深のマントル物質は熔融している可能性があります。しかしマントルを物理学的に見た地震学の立場では、マントルは固体であるということが走時表の研究から証明されていることになります。
化学的マントル論と物理的マントル論とどちらが正しいのか、迷ってしまうのではないでしょうか。
マントル熔融論に立てば、大地震の後で地球が何日も(チリ地震では10日間)自由震動する現象を理解することが容易になりますし、深発地震の発生に関する石田仮説(石田理論という表記に反発される方もあるようなので仮説とします)をも支持するものです。海溝部では深発地震が起こるのに、海嶺部では浅発地震しか起こりません。その理由を説明できる仮説は他には存在しないように思います。

しかし地震が光ファイバーのような二層構造の地殻内部を伝播するというこれまで述べてきた石田仮説では実測の走時表のような関係は得られそうにありません。
P波に関しては熔融マントルの内部でも伝播しますので、温度分布がタマネギ構造になっている熔融マントル内を伝播し、理論走時のようなっているのかもしれませんが、S波に関しては到達時刻の読み取りに問題が無い限りマントル固体説を受け入れないと説明が出来ないようです。
マントルが固体なのか、熔融しているのか・・・、説得的な最新の情報をお持ちの方のご教示をお願いしたいと思います。

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2006-04-28(Fri)
定説を擁護する前に
石田仮説の出発点は、プレートテクトニクス理論(これも本当は仮説だと思いますが)で説明される地震の発生原因(プレートのもぐり込みと反撥)に疑問を持ち、カントらも述べているような爆発現象が地震の本当の原因ではないのかという点にあります。プレート論に疑問を抱く方々の仮説は石田仮説のほかにも、サージテクトニクスを提示しているマイヤーホフ(サージテクトニクスの著者)らのグループの仮説(地球ダイナミクスの新仮説)もあります。
そのグループが発行している「グローバルテクトニクスの新概念」に載っていたものですが、[1144]にも紹介したChoiらの論文には

「プレートテクトニクスモデルは地震メカニズムを説明できず、それゆえに、予知には使えない。現在、地震予知科学とプレートテクトニクスの全般がおちいっている窮地は、この事実を巧みにうらづけている。プレートテクトニクスに反する確実なデータがすでに厖大に集積されていて、それらを無視することは誰にもできない。地震は、プレートテクトニクス仮説以外の別の視点から研究されなくてはならない。
地震がもたらす甚大な社会経済的影響を考えると、地球科学者は虚心坦懐にものをみなくてはならない。そして、偏見なしに確実な証拠を直視し、より有効性のある造構仮説を構築するために改心する必要がある。」

とあります。私も「地球科学者は虚心坦懐にものをみなくてはならない」という意見に賛成するものです。
そこで [1155]にも説明したように読者に「考える材料を提供」するために、仮設を展開しているわけですが、「私が展開している話が不当であれば(読者の方々は)ますますご自分が学ばれて正しいと考えていた理論をさらに深く理解して、ヤッパリ定説が正しいと認識されると思います。」ということで結構だと思います。
ただし、その前に[1132][1143][1147][1149][1150]などに紹介してあるプレート論への疑問を解いてからにしていただきたいと思います。[1132]に展開した「アメリカ大陸が2.5億年前に海底にあったとき、そこは海洋プレートではなかったのか、海洋プレートならば寿命は2億年だから、浮上した現在4.5億年を越える古い地層が存在するのはおかしい・・・」に関しては以前にとりまき氏から以下のようなコメントをいただいていますが、3億年も海底に存在したプレートを大陸プレートがたまたま海底に在ったのだ、という解釈はおかしいと思います。セミナー[327]
「グランドキャニオンは大陸地殻にありますが、この地殻が海面下に没したとしても大陸地殻のままです。現在海底下にある大陸棚地域も殆ど全て大陸地殻からできています。大陸地殻と海洋底地殻の定義は、海に没しているかどうかとは直接関係がなく、その構成によっているのです(もっとも海洋底地殻は現実には全部海の底ですが)。」
石田仮説を批判されている方々には、定説を擁護される前にまずプレート論の疑問を解く作業をお願いしたいと思います。

なお、藤田至則他著「新しい地球観を探る」(1993愛智出版)にはサージ構造論のほかにもいくつかの理論(仮説)が紹介されています。

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2006-05-07 (Sun)
 氷河期とポールシフト
あるサイトを見ていたら、氷河期が起こる理由に関して、「諸説あって、いまだ氷河期が何故起こったか謎。」という記事がありました。
セミナー[1005]では、
http://www.ailab7.com/log/eqlog1001-1010.html
「地球が全球凍結したことはない」とコメントしました。
同じことですが、氷河期に関しても、ポールシフトによって温暖な地域が極地などの寒冷地に移動したという現象であって、全地球が凍結したこともないし、地球上の広範囲にわたって氷河が発達したということでもないと思います。
氷河が出来る場所が地球上で移動しただけのことではないかと思っていますが、地球の姿勢が大きく変化することなど有り得ないという窮屈な考え方が、氷河期とか、全球凍結という架空の現象を引っ張り出したのではないでしょうか。

ポールシフトが起こる原因は大地震による地殻の沈降・隆起によって起こる重心の移動であると思いますが、2900kmまでのマントルが固体であるということが本当に事実なら、地殻の沈降・隆起は不可能ですので、マントル固体論はポールシフトを否定する考え方に繋がります。
ハプグッド教授の地殻移動論(ポールシフトと同じこと)は地殻とマントルの間に粘性が低い地震波の低速度帯があり、それが潤滑油のような働きをして、地殻がズルッと滑るという解釈なのですが、トモグラフィー解析の結果では低速度帯が存在しないという研究結果がでているようです。とすると、地殻移動論も否定されてしまいます。
つまり、マントル固体論からは、地殻移動論もポールシフトも説明できそうにありません。それで、窮屈な地球観になっているように思えます。

しかし、私には地震波の走時が理論値と一致するから、マントルが固体であることは証明されている・・・という主張はどこかに矛盾・勘違いがあるのではないかと思えてなりません。でも、それが何なのか現時点では分かりません。

因みに、以下のサイトを見ると、マントルが固体であるとはとても思えない。しかし、地震波の走時曲線はマントル固体論を証明しているというのだから、なんとも不思議な気がする。

http://www.eqchem.s.u-tokyo.ac.jp/research/kagaku/fi/fi.html http://www.es.jamstec.go.jp/esc/research/Solid/members/kameyama/c3m/index.ja.html

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2006-05-10 (Wed)
緊急警告に科学的な合理性があるか?
7月4日、M7級の大地震が関東を襲う!地震雲から伊豆地震を予知した男が緊急警告!! 

上記のような日本地震予知協会代表・佐々木洋治氏の緊急警告の記事が週刊誌の誌上を賑わしております。
また船井幸雄氏がそのHP(http://www.funaiyukio.com/funa_ima/index.asp?dno=200604009)で、

「今年の2月中旬ごろから、何回も「6月10日ごろに日本に大地震がおこる」といううわさが私の耳にとびこんで来ます。あまりにも何回もこの話しをききますので、3月に日本地震予知協会の佐々木洋治会長に相談しました。」

と紹介されていますので、社会的には注目されているのかもしれません。そうした記事があってなのか、ある方から、ANSとしてはどのような見解なのかと質問を受けました。
氏の主張は日本地震予知協会のサイトhttp://www.menokami.jp/

佐々木理論として以下のようにあります。
佐々木理論

「 地震のエネルギーは、太陽が地球に供給する磁気量である。太陽からの電磁波は地球の両極から取り込まれる。その磁気量が地震のエネルギーとなる。
地球に取り込まれた電磁波は、マグネティックスポットと呼ばれる場所から空中に吹き出してくる。
  その典型的な場として蓼科(タテシナ)山付近がある。(このような場は日本各地、そして世界各地に存在する。)このマグネティックスポットから吹き出す磁気(モノポール)は、絹雲を発生させる。その磁気量の多い少ないで雲の形は変化する。磁気を多く含むものを、地震雲と呼ぶ。そしてその吹き出した磁気量(モノポール量)は台風を生み、ハリケーン、サイクロン、トロネードを発生させる。すなわち、地球ダイナミズムの本体は磁気量(モノポール量)である。
  このモノポール量の流れこそ地球の息吹であり、生命の源であると同時に、大地震をもたらす事にもなるのです。」

以上が佐々木理論ですが、磁気量が蓄積されると何故地震が起こるのか理由がよくわかりません。
「地震のエネルギーは、太陽が地球に供給する磁気量である。」という説には説得力が無いように思います。石田仮説では地震エネルギーとは解離した水の化学反応エネルギーであると考えていますから、太陽が地球に供給する磁気量とは何の関係もないことになります。

また、氏が擁護しておられる島村教授が、地震体積説を裏付ける貴重な研究成果を発表しているという次のような主張にも疑問を感じます。
「坪井忠二博士の地震体積説は地震のエネルギーは地球内部からの輻射熱である、としている。彼のこの理論を証明するのは地震雲の研究と、電磁気の研究である。しかし、それにもまして海底地震のデーターが決定的な証明となるのである。
 それは、太平洋側の地殻には地震は発生しない。大陸プレート側の受けのところにのみ地震が発生しているというのである。すなわち輻射熱は、大陸プレート側の受けのところにのみ生ずるからだ。
 すでに、島村教授はこのことを発表している。そして、間違いなく、地震体積説の証明となるデーターである。」
以上がこの研究をいまいましく思う連中(定説論者達)が島村教授を貶めるために画策している理由に上げておられるようですが、私には疑問に感じます。
地震のエネルギーは地球内部からの輻射熱であるとする仮説も、太陽が地球に供給する磁気量であるという仮説もどちらも石田仮説とは違っております。

結論から言って、「日本地震予知協会」の警告は科学的合理性の無いもので、信頼性が薄いのではないかと思っております。

1180
2006-05-14 (Sun)
「素人は黙れ」とは言語道断
重要なことですので、少し激しい口調で書いてみます。

ある地震関連サイトの掲示板を読んでいましたら面白い記事がありましたので、抜粋して紹介します。

「先日、新潟県の○○さんとの話の中で、中越地震後N大学の地震学者を招いた講演会があり、一主婦の質問で「地震の来る直前地鳴りがして・・・」質問が終わらないうちに、その教授が「素人はだまりなさい」と言ったとのこと。

現在、世界には地震予知学者は存在しないはず。その学者も予知に関したら素人のはず。情けない話です。これが、現在の地震予知の現状を端的に現す出来事でしょう。」

以上が抜粋です。本当に情けないことですが、地震予知を専門にしている地震学者はいないのです。その前に基礎研究が大切だということなのでしょうが、皆さん地震予知を真剣に考えてはおられないようなのです。

しかし地震学者なら、地震の専門家のはずです。地震時に伴う「地鳴り」「発光」「気温上昇」「電磁波異常」などを素人諸氏に分かりやすく説明して欲しいと思います。

分からないのなら、「私にも良く分かりません」というべきであって、「素人は黙りなさい」というのは言語道断だと思います。

ゴールド博士はその危険性を以下のように警告([189])しています。

「欧米の科学者たちは、そうしたしくみ(プレート論)が地震の原因だと考えている。そして、こう仮定してしまうと、・・・以前にはとりあげていたような目撃証言におよそ関心をもたなくなったり、地震学者の多くがその存在(地震前兆)を知ることさえなくなった。」

プレート論が横行してから、地震学者は「素人」よりも地震現象に無知になってしまったようです。地震学者は机上の計算ばかりに夢中になっていて、地震現象に関して目撃証言がたくさんあっても、それから学ぼうとする姿勢を持っておられません。そのような「地震研究」にたくさんの税金が使われている現状を何とかしなくてはならないと思います。・・・厳しい口調になりましたが・・・。

1181
2006-05-20 (Sat)
『賛成する人が多い』と言うだけのプレート論
日高町立日高山脈館の関係者(多分学芸員の小野さん)が出演されたNHKラジオ迷走記という番組
http://www.town.hidaka.hokkaido.jp/hmc/
http://www.town.hidaka.hokkaido.jp/site/hmc/etc-nhk-radio-mar.html

のなかで、定説地震論では冷遇されている(3月に故人となられた)池谷先生の地震予知の話(3.24)が紹介されていました。また最終回のまとめ(3.31)では、プレートテクトニクスが唯一の理論ではないことが次のように紹介されていました。

「これらの理論(プレートテクトニクスとか、プリュームテクトニクスのこと)は『現時点では一番ありうる』『賛成する人が多い』というだけに過ぎません。主流ではありませんが、プレートテクトニクスではない考え方をしている研究者もいます。」

として、地球膨張論、サージテクトニクスが紹介され、

「これらを含め、決定的に間違いとは言い切れないし、絶対に正しいと言い切れる理論もありません。なぜなら、マントルの石ひとつにしても直接取ってきた人はいないのですから証明しきれないのです。つまりどの理論も発展途中といえるのではないでしょうか。」

と非常に冷静な見方をされていて好感が持てました。地震が発生する本当の理由を含めて地球の真の姿はまだ誰にも分かっていないということです。

プレートテクトニクス論は『賛成する人が多い』というだけであり、真理であるかのように扱われるのは間違いであると言うことです。

1182
2006-05-24 (Wed)
プレートテクトニクス否定論への反論を吟味する
プレートテクトニクス理論の推進者・擁護者である上田誠也氏が、「プレートテクトニクスに対する反論を検討する」という論文を『地学教育と科学運動』という地団研の研究誌に書いておられるそうです。少し古いもの(1983年8月)ですが、その後も主張は変わっておられないと思いますので、紹介します。

「プレート批判の立場の方々の見解には、しばしば、現今、プレートテクトニクスがあたかも真理そのもののように中学や高校の教料書にもとりあげられ、地学者は軽薄にも盲目的に自らの研究テーマがプレートテクトニクス原理で説明できるものとしている傾向すらあり、憂慮すべきであるという指摘がある。主観の差といってしまえばそれまでだが私にはそうは思えない。

わが国は、地団研の先生方のニラミが利いたせいか、ソ連と共に、プレートテクトニクス受入れが最もおくれている地学先進国の代表である。地球物理の方はそうではないが、地質の方は全体としては明らかにそのようだ。だから、現在のパラダイムの中では、日本の地質学は先進国のそれとはいえない面が多い。プレート批判の先生方の憂慮は、紀憂どころか、私としては逆の方が憂慮すべきことのように思われる。

 中学・高校でもプレートテクトニクスをうんと教えるとよい。世界の学問はどんどん進んでいて、プレートテクトニクスの限界は日に日に明らかになりつつあり、次への改革・脱皮がおこる日は遠くないだろう。しかし、それはプレートテクトニクスからの発展なのであって、いつまでもプレートテクトニクスは仮説か、理論か。仮説なら教えない方がいいかもなどといっていては遂にどうにもならないことになる。そもそも、教科書に書いてあることがすべて真理だという発想はおかしいのではないだろうか? プレートテクトニクスというものの見方を教えることと、それですべて解決したとすることは全く別のことではなかろうか。

若い人々には、その時代の学問の生きた姿を伝えたいものである。」

以上がその論文の一部です。私は地震学も、地学も専門に研究したことがありませんので、地団研というグループが、思想的にソ連寄りで左翼的であるとかいう話には関心がありません。どちらが地震現象をより良く説明できるのかと言うことだけに関心があります。

本来、地震学の世界では共産主義思想も資本主義思想も関係ありませんから、ソ連が解体しても、地震の真相に関係しないのは明白です・・。

したがって日本の地学関係の研究が「プレートテクトニクス受入れが最もおくれている地学先進国の代表」と決め付けるのはどうかと思います。それに反し地球物理関係の研究は早くからプレートテクトニクスを受け入れて時代の先端を行っているという見解にも疑問に感じます。

しかも「プレートテクトニクスの限界は日に日に明らかになりつつあり、次への改革・脱皮がおこる日は遠くないだろう。しかし、それはプレートテクトニクスからの発展なのであって・・・」と断言しておられるが、プレートテクトニクスは根本的に間違っていた・・・という結末を見る日が来る可能性もあるのではないでしょうか。

「中学・高校でもプレートテクトニクスをうんと教えるとよい。」・・・と述べられているが、果たして根本的に間違った理論だとしたら、間違いを積極的に教えた責任は取れるのでしょうか・・・。

[1181]に紹介した「プレート論は『賛成する人が多い』というだけに過ぎません」・・・と教える日高山脈館の学芸員さんの方が理性的な対応をしておられるように思えてなりません。

1183
2006-06-08 (Thu)
フランスの地震予知衛星の話題
中日新聞(2006/5/30夕刊)に「宇宙から地震見えた」という記事が載り、フランス国立宇宙センターが一昨年、地震と電離層の関係を調べるために人工衛星「DEMETER」を打ち上げた話題を取り上げていた。観測責任者ミシェル・パロ博士は「今回は地震と電離層の科学的な関係を調べるのが目的。将来、複数の観測衛星を上げれば地震予知も可能かもしれない」と話している・・・とありました。

この件に関しては、日本にも協力の要請があったのだが、予算の関係(・・・ということになっているが、私には測地学的予知に拘っているためとしか思われない。)で断ったという経緯があります。

「DEMETER」の話題に関してはセミナー[800]でも紹介しましたが、「科学トピックス」という下記のサイトにも報道記事があります。

http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt041j/0408_02_topics/200408_topics.html#0408fron

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フロンティア分野

[1]フランスが電磁場観測衛星を打上げ

地震の前兆現象に関する研究の中で、ギリシャが電磁現象に着目して地震予知に成功した例はよく知られている。また中国でも動物の活動や井戸の異常などから大地震を予知し、早期避難で被災規模を小さくすることに成功した例がある。我が国では、1995年の兵庫県南部地震が発生する数時間前に、上空の電離層に異常が起きていた可能性が高いという研究報告もある。しかし、そのメカニズムはまだ解明されておらず、また雷や人工的な電磁波の影響もあり、仮に変化が検出できてもそれが直ちに地震発生の前兆とは判断できないという意見もある。

(中略)

我が国の地震電磁気研究は、平成7年より旧科学技術庁の主導で、理化学研究所の「地震国際フロンティア研究」と旧宇宙開発事業団の「地震リモートセンシングフロンティア研究」が行われた。前者は2001年度で終了し、観測点等が各地の大学に引き継がれた。後者は2000年度で終了し、研究は中止となった。1999年の第2回日仏宇宙協力シンポジウムではフランスからDEMETER受信の協力要請があったが、予算上の問題で協力実現には至らなかった。

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以上ですが、「(電離層に異常が現れる)そのメカニズムはまだ解明されておらず、また雷や人工的な電磁波の影響もあり、仮に変化が検出できてもそれが直ちに地震発生の前兆とは判断できないという意見」・・・・というのは、日本の地震学者の大半がプレート論を信じ、地上に現れる高低の変化を観測しようと言う測地学的地震予知に拘っているからこそ発せられる「意見」だと思います。

大半の研究費がそのために配分されてしまうわけですから、「DEMETER」打ち上げに協力する予算などなくなってしまう・・・ということではないのでしょうか。

誠に残念でなりません。

1184
2006-06-14 (Wed)
大分県中部地震での異常震域現象
気象庁は「2006年6月12日05時01分この大分県中部の地震について」を発表し、地震はフィリピン海プレートの内部で発生したとしています。石田仮説ではそのようには見ておりません。(ニューオフィス23参照。)

http://www.jma.go.jp/jma/press/0606/12a/20060612.html

発表された資料(PDF形式)にある次の図を見ると、深さ146kmで深発地震面(これがプレートを意味するとは思えません)が垂直に地球内部に向かっている付近に起きていることが分かります。

深さ60km〜300kmで起きる地震を「やや深発地震」と読んでいるようですから、この地震は厳密には深発地震とは言えませんが、次の震度分布を見ると、

震央近くの別府市、九重町(震度2)付近よりも、遠く離れた瀬戸内近辺の尾道、多度津(震度4)などで震度が大きくなるという異常震域現象(深発地震の特徴)を示しています。

「深発地震」に関してもですが「やや深発」地震で、このような異常震域現象が起こることを、定説地震学では合理的に説明できないと思います。

石田仮説では「深発」でも「やや深発」でも異常震現象が起きる理由を合理的に説明できます。(ライブラリー45〜48参照)

つまり、地殻は一般的に上図に示すように二層構造(大陸地殻では3層構造)になっていますが、深い地震はこの地殻よりも下で起こっているために異常と見える現象が起こるのであろうと思います。定説では説明できないから異常と呼んでいるだけだと思っています。

地震爆発説(石田仮説)での解釈

地殻より下に位置する熔融マントル(図中赤色)内での深い地震(爆発)によって発生する衝撃的地震波は直ぐ上にある橄欖岩(地震波が高速で伝播します 図中青色)を通って伝播しますが、この第二層、橄欖岩層は、瀬戸内近辺(しかも海域周辺)のほうが地表に接近していると思います。

海洋部の地殻は一般的に薄く、大陸部の地殻は厚いのですが、瀬戸内地域は別府付近よりも地殻が薄いために、硬い橄欖岩が地表に接近していて、地震に関して感度が良くなるわけです。

したがって、瀬戸内では到達時間は計算値より速くなりますし、地表で感じる震度も別府より大きくなるわけです。第一層の玄武岩(図中黄色)が厚いほうが、感度が鈍くなるのは当然であるわけです。

この地震が、第一層内部で起こった浅発地震であるのなら、震央に近いほうが震度が大きくなるのは当然です。

また、300kよりも深い場所で起こったのなら、別府は無感で、関東圏でのみ有感となるいわゆる深発地震の異常震域現象となったことでしょう。

 このように深発地震の異常震域は地殻の構造に秘密があるというのが石田仮説による解釈です。ニューオフィス32の「日本海北部M7.1地震の不思議」の解説も参考にしてください。

1185
2006-06-20 (Tue)
「 歪の力では地震は発生しない」という高木論文
大変面白い論文を見つけました。昭和46年に発表されたものですが、次の一覧にある気象庁の高木氏の「地震は歪力で発生するのか」です。
http://www.mri-jma.go.jp/Publish/Papers/DATA/21to25_jp.html 

地震は歪エネルギーによって起こるというのが現在の定説になっておりますが、坂柳教授が否定されているように、高木氏も歪説を否定しています。また、地震の原因は石本博士の提起された「岩しょう爆発説」(岩しょう貫入説)が正しいとしています。

この「岩しょう爆発説」が無視されてしまったのは、爆発(Explosion)であれば、全領域が押しになり、引きが現れるはずが無いという認識(爆発では押し引き分布が起こらない)があることが大きな原因ではないかと思います。しかし、水素ガスの爆縮(Implosion)であるとすれば、押し引き分布も綺麗に説明が出来るのです。

石本博士や高木氏の主張される、地震爆発(石田仮説では厳密に言って爆縮)説をもう一度見直すべきであると確信しております。

高木氏の論文の要旨だけを紹介します。

なお、論文の中の「マントル説」というのは「プレート説」と読み替えた方が分かりやすいかと思います。

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地震は歪力で発生するか

                    高 木  聖

 マントル説は、大陸の形、地磁気、氷河、地質などに接点を持っていて、確定的になったものと狂信している人もあるようであるが、この説は科学的には何一つ立証されていない。その一例として、地震との接点について述べる。

 マントル説は、地震の原因について、マントル流が大陸の下にもぐり込んで、大陸との間に摩擦を生じ、大陸に歪を与えて破壊し、地震となる、というのであるが、もし地震現象が、このような歪力で起っていないということになれば、マントル説と地震とは関係がないことになる。震が歪力で起っていないことは、次の3つの地震現象が証明している。

(1)初動分布が円錐型であること

(2)地形変動と初動分布とが一致しないこと

(3)震源での最初の運動が、運動量不変則に合っていないことが多いこと

 以上の3つの現象は、歪力の立場からは絶対に説明できない。ということは、地震現象が歪力説(断層説、海洋底拡大説、プレート説等)を否定しているということである。

(1)については、今まで四象限型の初動分布と思われていたものは、全部、円錐型初動分布になるし、四象限型に区分できなかったものは、全部、円錐型に区分できる。ということは、初動分布は、元来、円錐型であるが、観測網の不備のため、四象限型にも区分できたに過ぎなかったことを物語っている。

(2)については、断層の走向と初動分布の節線とは、歪力説では一致しなければならないのに、実際の現象では一致していないことから明らかである。特に、昭和19年の東南海地震と、昭和21年の南海道地震の場合とを比較すると、初動分布は同じであるのに、地形変動のほうは逆になっていることから歴然としている。

(3)については、昭和23年の福井地震が端的に物語っている。同じ押波であるのに、震央の西側は初動が大きく、東側は非常に小さい。これは運動量が0(ゼロ)でないことを示している。

 以上の3つの地震現象は歪力説を根底から否定している。したがって、マントル流で地震が起ると考えることはできない。万一、マントル流が存在するとしても、それは地震とは無縁のものである。

 歪力説に対するこれらの矛盾を統一したものが、岩しょうの爆発を仮定した「岩しょう爆発説」である。

追記: [3142]に爆発理論の修正(シンプル化)が載っています。

1186
2006-06-20 (Tue)
「断層が動いて地震になるのではない」という高木論文
断層は大地震の結果、地殻の傷として発生するものであり、断層が動いて地震が起きるという定説は原因と結果を取り違えている、小さな地震では断層など発生しない・・・というのが断層の理解に関する石田仮説の主張ですが、高木氏の論文(昭和49年発表)にも同じ見解が述べてありました。

高木氏はこの論文の提出中に病気により57歳と言う若さで急逝されたそうで、誠に残念な思いがします。もっと多くの研究を発表してくださっていたなら、地震学が現在のような混沌の中に置かれることはなかったのではないかと思います。

詳細は略しますが、論旨のみを紹介します。

http://www.mri-jma.go.jp/Publish/Papers/DATA/21to25_jp.html   Vol25

「地震は断層の生成によって起こっていない」参照)

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                    高  木   聖*

 地震は断層の生成によって起こると仮定して、多くの学説が組み立てられているが、はたして、地震は断層の生成によって起こっているであろうか。地震が断層の生成によって起こっているとするならば、地震現象としては、初動分布が4象限型になっていなければならない。初動分布は、震源の最初の動きを表示しているものであるから、すべての地震学説に対して生殺与奪権を握っている。ところが、筆者が、たびたび報告しているように、初動分布は4象限型でないと考える方が、現象に忠実である。本文に、その、はっきりした例を示している。(中略)

 このように、4象限型に区分しようとする努力が払われたが、期待した結果は得られなかった。ということは、元来、この地震の初動分布は4象限型ではなかった、ということになる。すなわち、断層の生成によって起こった地震ではない、ということである。それにもかかわらず、この地震を断層生成によって起こった地震であると想定して、地震予知Projectに役立てようとしている。こんなことで、地震予知が可能になるであろうか。(中略)

これらのことから、元来、初動分布は、4象限型ではなく、円錐型と考えるべきであることが分る。そうなると、地震は、断層の生成によって起こっているものではなく、岩しょうの爆発によって起こっているものであることが分る。

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*)筆者はこの論文提出中の1974年8月3日病気のため急逝したので、これが遺稿となった。

1187
2006-06-21 (Wed)
高木論文についての感想
[1185]と[1186]で高木聖博士の論文を二つ紹介しました。地震は歪力が原因で起こるのではないこと、また断層が動くことが原因で起こるのでもなく、岩しょうが爆発することが原因で起こるのである・・・という結論です。

そう判断される根拠は地震時の初動(押し引き分布)が4象限型よりも「押し円錐」を仮定して推論する分布のほうに近いから・・・とされています。

現在この高木博士の研究を意味あるものと考える地震学者はいないようで、古い研究を引用しても仕方が無いではないかと言うのが大方のご意見でしょう。

古い研究と断定されてしまう原因は、岩しょうが何故爆発するのか、また爆発現象ならば震源の全領域で初動が「押し」になるはずであり、「引き」が現れる理屈が爆発現象では説明できない・・・ということなどが原因ではないかと思います。さらに言えば、震源ではダブルカップルという二つの偶力が働いていることが明らかにされているが、爆発現象ではこのダブルカップルが説明できない・・と言うことも大きな原因だろうと思います。

しかしながら、押し円錐の内部に震源から遠ざかるような爆発(Explosion)的力が働き、押し円錐の外部には震源に引き込まれるような爆縮(Implosion)的力が働いていることが確かめられれば、震源でダブルカップルが働くことは説明が可能です。またそのほうが、物理的イメージとしては把握が容易になると思います。

数学的にダブルカップルが証明されているのだ・・・と地震学者は言われますが、何故そのような力が働くのかという説明はありません
地震を物理現象として把握するのには、「押し円錐」の内と外とで作用する物理力の「向き」が逆になっているのだ(注-1)・・・という解釈のほうが、分かりやすいと思いますし、ダブルカップル論とも矛盾しないと思います。

さて、押し円錐の内部で震源から遠ざかるような「押し」の力が何故働くのか・・・・


笠原慶一著「地震の科学」(恒星社)より

石田仮説ではセミナー[1019]などで以下のように説明しております。

「ボイラーの爆発に相当する平衡破綻型爆発が押し領域発生の原因であり、その後に続く原子水素の爆発、あるいは解離ガスの爆発という爆縮現象が、引き領域発生の原因になるのかもしれません。マグマ溜りの平衡破綻型爆発であるExplosionと、原子水素または混合ガスの化学反応による爆縮Implosionが短かい時間差で発生することが、押し引き分布が形成される原因と見ていいのではないでしょうか。」

すなわち、マグマ溜りの内部で熱解離する解離ガス(水素と酸素の混合ガス)の圧力が増大し、(マグマ溜りを破壊して)ちょうどボイラーが破壊するときのような爆発(Explosion)が起こること、その直後に酸素と水素が再び結合して体積を収縮させる爆縮現象(Implosion)が起こっている・・・と推定しています。(深発地震ではマグマ溜りは関係しない。)

もちろん、水蒸気爆発のような、液体と気体の間の変化なのかもしれませんし、技術ジャーナリストの山本寛氏が提起しておられるような原子水素の化学反応[1015]なのかもしれません。厳密な証明は今後に期待しなければならないと思います。

したがって、私が展開している地震爆発説はプレート仮説と同様一つの仮説として考えていただいて結構です。
ただ、石本博士や高木博士が考えておられたような「原因は良く分からないが岩しょう(マグマ)が爆発している」・・・という爆発説よりは進化させた爆発説だと思います。

地震時に現れる、轟音、爆風、などなど弾性反撥説では説明が不可能であると思いますので、何らかの化学反応が地下で起こっているのだと思っております。

昔聞いた話ですが、溶鉱炉に誤って水を落としたり、人間が転落したりすると、猛烈な爆発が起こるそうです。高温度のマグマが存在する地球内部で、水が地下水⇒温水⇒熱水⇒超臨界水⇒解離水(酸素と水素の混合ガス)と変化していく時に、圧力と熱の変化によって、まだまだ人間が想像もしていない未知なる現象があって、それが地震の原因になっている・・・というような気がしております。

立派な研究施設を所有しておられる地震学者の方々には、地震爆発説を批判するだけでなく新しい観点から研究していただきたいと思っております。

注-1 この逆向きの力が巨大地震(巨大爆発)になると地殻を引き裂くような大きなものになって、結果として断層が生じるのだと思います。小さな地震でも断層が動いていると言うのはオカシナ話ではないでしょうか。

.ライブラリー6には濃尾地震の水鳥断層に関して、大森博士が以下のように農夫から聞いたと紹介してあります。

「(大森博士は)この断層が殆ど瞬間的に発生したものではなくて、地震後極めて緩やかにズルズルと段違ひになつたといふ話を目撃者たる一農夫から聞いて來られた・・・」

断層が動くことが原因で地震が起こるのならば、このようなことは起こらないはずです。

1188
2006-06-22 (Thu)
高木博士の早世を惜しむ声
2chの【統合】地震学スレに「高木聖氏の論文は、今の地震学ではどのように 否定されているのでしょうか・・・」と書き込まれたという方からメールを頂きました。
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高木聖氏の論文を見させて頂きましたが、全く同感で、長生きされたら地震学が今とは違った正しい方向に向かった可能性もあるなー、と思います。惜しいですね。

ネットで検索していたら、高木氏の第39回国会での質疑応答議事録がありますが、非常に面白いと思いました。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/039/0068/03910260068008c.html

ネットでは図がありませんが、『地震予知器械高木式無定位磁力計』と言うのを発明されていたようです。少し調べてみたいと思います。

2CHで「高木論文は今の地震学ではどう否定されているのでしょうか」、と書き込んだのは私ですが、あまりにもくだらない反応にがっかりしてしまいました。2CHを見るのは時間の浪費だと痛感しました。

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以上がメールの内容ですが、昭和49年という近年まで、地震爆発説を主張されていた研究者が存在したとは知りませんでしたので、私も驚きましたが、早世されたことが誠に残念であります。

博士の業績に詳しい方がありましたら、研究業績など教えていただきたいと思います。宜しくお願いいたします。

1189
2006-06-23 (Fri)
異説がある社会のほうが健全である
2chで石田仮説に批判的な言動を繰り返している方々があります。小生を小馬鹿にされるところを見ると、相当に地震学に詳しい方々のように推定されます。

その方々によればここで紹介した高木論文も「トンデモで有名だった人の論文」と決め付けられてしまいます。国会も「トンデモ学者」を参考人に選んだ・・と言うことになってしまいます。

「プレートテクトニクス」理論以外はすべてトンデモ扱いにされてしまいそうですが、何故そのような偏屈な考え方が地震学(全てではないかもしれませんが)に蔓延してしまったのでしょうか。

[1154]にも紹介しましたが、「新しい地球観を探る」の最後にある次の「締めの言葉」が思い出されます。

「プレートテクトニクスは、世界の地球科学のこれまでの地球の変動論に見られる古い研究・教育の骨組みを破砕し、そこに全く新しい骨組みを提供したものであって、それは、いわば科学革命を起こした学説として評価されるべきであり、そこにはまた、古い考え方を新しいそれへと改宗(改心)させるという持微かあるという点も強調されている。こうした見方に立てば、プレートテクトニクス以外の学説は、すべて誤りであって必ず衰滅するという考えにつながるのである。」

古い考え方に縛られている可愛そうな人々を改心させて、救ってあげるのだ・・・というのでしょうか。

「プレートテクトニクス以外は全て誤り」・・・というのは「異教徒」の間違った信仰を正してやるのだ・・・と言う十字軍のような雰囲気を感じます。

[1182]に紹介した上田誠也教授ですら

「プレートテクトニクスの限界は日に日に明らかになりつつあり、次への改革・脱皮がおこる日は遠くないだろう(・・と言いつつも・・)。しかし、それはプレートテクトニクスからの発展なのであって、いつまでもプレートテクトニクスは仮説か、理論か。仮説なら教えない方がいいかも・・・などといっていては遂にどうにもならないことになる。」

という考えであって、将来現れる「新しい理論」はプレート説からの発展であって、爆発説からの発展はありえないと考えておられるようです。

こうした地震学・地球科学の空気のなかで、「真に新しい理論」を構築していくことは至難の業だと思いますが、信念を曲げるわけには行きません。

プレート論の擁護者は石本論文や高木論文などのトンデモ理論をほじくり返してもらっては

「これから地震学を学ぼうとしている人たちに大きな弊害になるのだ。」

というお考えのようです。

しかし、それは若い方が自分の頭脳で吟味していけばいい事であり、むしろ、異説があったほうが吟味はし易いと私は思います。考える材料として異説があったほうが遥かに深く考察・吟味ができるはずですし、そのほうが健全な社会だと思います。

因みに、爆発説を応援してくださる方が、サイトを見ていますと、少しづつ増えているのではないかと感じられます。

http://ia977.blogzine.jp/logia/2006/06/post_e2bb.html
http://note3.nifty.com/cgi-bin/note.cgi?u=YFA19373&n=1&p=3

1190
2006-07-01 (Sat)
地球物理学で「発見」は難しい
hiromi氏から天文学上の「発見」ということに関して、以下のようなコメントを頂きました。地震学と直接の関連はありませんが、間接的には「定説」から抜け出せない地震学のもどかしさを憂えておられるように感じます。地球に関することで「発見」を認めさせることは困難なことです。

「地球内部を観察できる望遠鏡」がないために、灯台の下(地球のこと)が何時までたっても暗闇で、プレートの反撥という定説が幅を利かせてしまっています。

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名古屋大学の武田先生も指摘されておられましたが、「コンピュータ・シミュレーションは、学問ではない。なんら、新しいものを生み出さない。それは、既知の理論に頼っているからで、結果ありきの手法である。」旨の文面であったと思います。

さて、国立天文台の最新の話題は、

「すばる、新しい形の円盤を発見

〜多波長赤外線でみる惑星誕生現場の姿〜」

名古屋大学、東京大学、国立天文台/総研大、宇宙航空研究開発機構、神戸大学、茨城大学の研究者たちからなる2つのチームが、すばる望遠鏡を用いて HD 142527 と呼ばれる若い星を撮影し、奇妙な形の原始惑星系円盤を発見しました。近赤外線から中間赤外線にかけて4つの波長で観測を行い、この円盤の構造や温度が詳しく解明されたのです。新たに発見された円盤はバナナ状の弧が向かい合った形をしており、以前に報告したドーナツ型やうずまき状の円盤などと併せると、惑星誕生の場である原始惑星系円盤がさまざまな形をとりうることが明らかになってきました。全体の形ばかりでなく、HD 142527 で 星のすぐ近くにも内側の円盤が存在し、外側の円盤との間に「すきま」があるという特徴も分かりました。このすきまで既に惑星が誕生した可能性もあります。円盤の一部から外側に円弧状にうすく伸びる「角」のようなものは、他の恒星との接近遭遇のような歴史を反映していると思われます。

http://www.nao.ac.jp/index.html

このような現象は、決して計算機理論では導きだされなかったでしょう。

原始惑星の定説の大家も、文句のつけようのない現象ですね。

もしかすると、アマチュア天文ファンが多いのは、理論よりも、見つけたもの勝ち(百聞は一見にしかず)のチャンスがあるためではないかと推測されます。

私が期待しているのは、スーパーカミオカンデです。

http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/

現在、地球の内部構造の解析は、地震波の計測以外されたことがありません。

現在、ニュートリノの計測は、地球以外の天体観測に用いられています。

地球を素通りするニュートリノの、まれに他の物質と衝突する現象を観測するスーパーカミオカンデは、地球の表裏にあり、その差異情報によって、地球のX線(ニュートリノ)写真の可能性を期待させます。(SF作家J.P.ホーガンの読みすぎかも)

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以上がhiromi氏からのコメントです。

定説論者はきっと地震波の解析が望遠鏡の代わりになるんだよ・・・とおっしゃるでしょう。

しかし、地震波の解析で地球内部が分かる・・・というのは、大いに疑問です。

なぜなら、深発地震の到達時間が計算どおりにならないのはなぜなのか、説明がつきません。
また、遠くで発生した地震の到達時間を理論通りなのかどうか、素人が点検しようにも、納得できる方法がありません。

下図から、どうやって実測値と、理論値がぴったり合っていると判断できるのでしょうか、hiromi氏が書いておられるように「既知の理論に頼っているからで、結果ありきの手法」・・・という気がします。


http://www.gps.caltech.edu/~polet/recofd.htmlより

[1175]に紹介した読み取りのプロとも言える中川技官は次のように述べています。

「・・・震源距離の遠い波で地球内部を反射、屈折してきた波でどこに到着した波の波形があるのかまったくわからない。

その(判定の)手助けになるのが走時表、これは震源までの距離がわかると、その波の到着時刻が記され。その時間を発震時刻に加えた時刻を記録上で見ると、記録のコントラストが悪く今まで見逃していた記録のゆれの中から地震波の到着波形が見つかります。このような厄介な手順による作業でかなりの時間をかけ・・・」

て読み取るのであるらしい。

上に紹介した地震波形から、PPとかSSという波をどのように判定するのか・・・技官が言われるように「走時表」の助けを借りても困難な感じがします。

理論走時の助けを借りて決定する・・・というのは「先ず理論ありき」の姿勢に見えるのですが、詳しいかたのご教授をお願いします。

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