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1151
2006-02-26 (Sun)
地球内部には大量の水がある

少し前(2002年)の情報で「マントルには海水の5倍の水が存在する」という東工大グループの研究がありましたが、「[1110]の東北大学の研究結果と考え合わせるとマントル内部の含水量はとんでもない量になりますね。」というメールをhiromi氏からいただきました。メールと東工大グループの研究報道を紹介しておきます。
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【hiromi氏からのメール】

「以下の論文(東工大)は、地下400kmより浅い部分の「上部マントル」は水を含まない石で出来ているという前提なので、[1110]マントル熔融論の裏付け実験か?で紹介された東北大学の研究結果:「地下約400キロ・メートルに相当する高温高圧の環境下におき、状態を調べた。その結果、水を最大で6・7%含む条件にすると、この深部付近でも液体の状態を保っていることを確認」

と考え合わせると、マントル内部の含水量はとんでもない量になりますね。
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下部マントル:地球は水タンク、海水の5倍 東工大グループ[毎日新聞3月8日]
( 2002-03-08-04:21 )
http://www.asyura.com/sora/hazard3/msg/78.html
地球の体積の約半分を占める「下部マントル」(地下660〜2900キロ)に、海水の5倍に上る大量の水が含まれている可能性があることを、東京工業大の大学院生、村上元彦さん(24)=地球惑星科学専攻=と広瀬敬・助教授らのグループが世界で初めて実験で証明した。8日付の米科学誌「サイエンス」に発表した。謎の多い地球内部の構造を解き明かし、地球の進化を探る上で興味深いヒントになりそうだ。

地球は約46億年前、隕石(いんせき)の集まりが冷えてできたとされる。隕石は質量の2%の水分を含んでいるのに、現在地表にある水を合わせても地球の質量の0・02%にしかならない。99%以上の水がすべて蒸発したとは考えにくく、水のありかが関心の的だった。

村上さんらは、セ氏1600度、25万気圧の高温・高圧環境をつくり出せる装置を使って、下部マントルと同じ結晶構造を持つ3種類の鉱物を人工的に合成することに成功。その鉱物の水分量を特殊な分析計で測った。

その結果、下部マントルの8割を占めるマグネシウムペロブスカイトには0・2%の水が含まれ、他の2種類の含水率も0・2〜0・4%だった。同じ割合の水が含まれるとすると、下部マントル中の水分は地球上の海水の5倍に上った。

地下400キロより浅い部分の「上部マントル」は、水を含まない石でできていることが分かっており、下部マントルが「消えた水」の主な貯蔵場所になっていると推測された。

また、地上の海水は約7億5000万年前から減り続け、約10億年後にはなくなるという説もある。研究グループは、地下に沈み込んでいくプレート(岩板)が海水を地球の内部に持ち込み、下部マントルに貯蔵されていると推定した。

広瀬助教授は「地球の進化にかかわる興味深い結果が出た。火山活動やプレート運動をつかさどるマントル対流に、この水分が影響している可能性が高い」と話している。【元村有希子】

参考資料
地球は巨大な水タンク?
http://www.fk.urban.ne.jp/home/odds/topic/topic_expl.html

下部マントル構成鉱物の含水量
http://www-jm.eps.s.u-tokyo.ac.jp/2001cd-rom/pdf/af/af-015.pdf

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以上がhiromi氏からの情報ですが、私はニューオフィス26で述べているように、熔融しているマントル内では深くなるほど結合した水(H2O)ではなく解離した水(酸素と水素)の状態で含まれていると思っています。したがって地球内部には膨大な酸素と水素が貯蔵されているという表現もできます。

1152
2006-02-27 (Mon)
マントルトモグラフィーが信用できない理由
ニューオフィス11に書きましたように地球内部のマントルトモグラフィー(以下MTと略す)には重大な欠陥が隠れていると考えています。理由はマントルが固体ではなく液体であると考えているからです。

ところが、ある方から、MTは液体中でも伝播するP波の到達時間を採用しているから、MTは問題なく描けるはずだという指摘を受けました。

この問題に関してもう少し詳しく説明します。

P波だけを使ったMTの作成にも問題は存在すると思います。理由はP波の走時曲線として知られているデータ(100度付近までの数値)がマントル中を伝播したP波のデータではないだろうと思うからです。


「地震の科学」竹内均著より


「地球の科学」
より

ではどこを通ったのかということですが、次の図のように二重構造になっている地殻(定説の定義とは違い、モホ面の下の橄欖岩をも含んだ層です。)の内部を屈折と反射を繰り返して遠方まで伝播しているのだと思います。これは光ファイバーが減衰しないで遠くまで情報を伝達するのと似ています。


「地震の謎を解く」より

P波の走時と考えられているデータ(100度付近まで)は速度の速い地殻第二層を伝播した波の資料だと思います。マントル中を伝播したP波はこれよりも、もっと時間が掛かっているはずです。これが100度〜180度に到達している熔融マントル内を伝播した波と時間差がある理由だと思います。マントル内のP波の伝播速度は次図にあるような速いものではないと思います。


「新しい地球観を探る」より

ちなみにP波の伝播速度は、鉄では5km/sですが水中では1.5km/sという小さな値です。


液体中のP波(縦波)の伝播速度は固体中よりも遅い

マントルが熔融しているとすれば、P波の伝播速度は地球内部で8km/sを超える(マントル下部では約14km/sにもなる)ような速いものにはならないと思います。また地殻とマントルの境界では屈折して地球内部に向かうような伝播経路になるはずです。

以上の理由により、マントル内のP波の速度設定に誤りがあり、計算結果を信用できないということです。

「新しい地球観を探る」には次のような記述があります。

「インバージョンにおいては、初期モデルが現実の構造に近いことが前提になっている。もし、これが成り立たないと、形式的な解が得られたとしても、現実の構造とかけ離れた結果になる可能性があるため、どういうモデルが初期モデルとして適しているか、が問題になる。」

果たして、JBモデルとかPREMおよびiasp91というモデルが現実の構造に近いと言えるのかどうか、大変に疑問があると思っております。

1153
2006-02-27 (Mon)
マントルトモグラフィーが信用できない理由(続き)

JBモデルでもPREMやiasp91モデルでもマントル内のP波の速度はそれほど大きな違いはありません。マントル下部では14km/sに近いとても速い速度になっています。そのような物質が本当にあるのか不思議ですが、密度から推定すれば隕石に近い物質ということになっています。

さて、地震波に関するこの分析は本当に正しいのでしょうか、この考え方は[1152]にも述べましたが地震波の走時が先へ行くほど折れ曲がってカーブを描くことに関係があります。

何故走時が先へ行くほど折れ曲がるのかというと、地震波が高速度の地殻第二層を通る時間を長く取るようになるからです。


「地震の謎を解く」より

ところが成層化したマントル内を通過すると解釈すれば、地球内部へ行くほど速度が早くならないと折れ曲がらないわけです。したがって14km/sというような高速度になってしまいますが、本当はそうではないと思います。

実際にマントル内を伝播するP波は速度が遅く、もっと後から地震計を揺らしているはずです。

1154
2006-03-02 (Thu)
プレートテクトニクスは「クーン革命」ではない
「新しい地球観を探る」(愛智出版)を読み終えました。地学などの地球物理学を専門として勉強・研究したことのない人間にとっては知らない情報が多く、大変面白い内容でした。

最後の締めの言葉は大変共感を覚えましたので、紹介させていただきます。
――――――――――――――――――――――――――――――
(前略)・・学界における各仮説は、人類の叡智の結晶として、互いに敬意が表され、尊重されてしかるべきである。

 しかしながら、現状はそのように様々の仮説が並立する状況とはほど遠い。このようになった一つの原因は、学界(会)と大学において、学問の優劣を支持者の数で定めようと願う権威主義にあるのであろう。考えられるもう一つの原因としては、アメリカのプレートテクトニクスにおける指導原理としての“クーン革命”と称するウィルソン(1968)の主張の影響を挙げることができよう。

 このウィルソンの見方をそのまま受け入れている都城(1979)の主張を見てみよう。それによれば、プレートテクトニクスは、世界の地球科学のこれまでの地球の変動論に見られる古い研究・教育の骨組みを破砕し、そこに全く新しい骨組みを提供したものであって、それは、いわば科学革命を起こした学説として評価されるべきであり、そこにはまた、古い考え方を新しいそれへと改宗(改心)させるという持微かあるという点も強調されている。こうした見方に立てば、プレートテクトニクス以外の学説は、すべて誤りであって必ず衰滅するという考えにつながるのである。

こうした見方が成立しないことは,次のことからみても明らかである。

本書の随所に紹介したように、プレートテクトニクスを支えている諸現象・事実には、他の原理で解釈できるものが多いのであって、このことからしても、プレートテクトニクスが、仮説の域を越えて法則化されたと考えることはできない。

仮説段階の主張に、革命的という形容詞が許されるとしても、それを、革命を引き起こした法則的原理と規定することはできないはずである。

クーン革命の意気は壮としながらも、その現実離れした断定主義は、一部の人たちをして、他の仮説へのいわれない挑発を促す役割を果たしているのであって、風聞するところによると、アメリカの地球科学界に現われているというプレートテクトニクスにのみ依拠する異常なセクト主義の風潮も、このようなところから生じたのではなかろうか。他山の石としたいものである。

――――――――――――――――――――――――――――――

以上がその内容です。1993年出版の書ですが、その後も「他の仮説へのいわれない挑発を促す役割」は強力なものになっております。

何度か紹介しましたが、プレートテクトニクスに反するような論文は受理されず、書籍の出版も困難な状況にあります。

科学における革命的理論というものの、造構運動の原動力さえ明確になっていない理論をクーン革命と称するのはおかしいと思います。

私の地震爆発論を話題にした寄稿文を「その部分を削ってくれないか」という申し出が今来ております。これではまるで言論統制ではないでしょうか。今はどこをみても、何を聞いても、プレート説しか耳目に入らないような社会状況になっています。

そうした社会は危険な社会であると認識するべきです。

なお、ライブラリー52のなかで、ウイルソン教授を豹変の名手と呼んでおりますが、「互いに敬意が表され、尊重されてしかるべきである」という態度を捨てているわけではありません。公平な意見発表が不可能である現状への不満が底にあると斟酌し、ご容赦ください。

1155
2006-03-04 (Sat)
考える材料の提供
ある方から以下のような内容の苦言を頂戴しました。

―――――――――――――――――――――――――――
「HPを覗いたが定量的な検討がなされていなのではないか。」
「定量的な検討がなされていないのに、 新しいモデルを提案し、今ある定説を全て否定する資格など ないのではないかということです。」

「マントルトモグラフィーが信用できない理由として、マントルが 液体でできているということを挙げておられるようですが、そう考える根拠はなんですか?岩石実験等の結果をご存知ですか?」

「地震の原因は弾性反発によるものではないと言っておられるようですが、ならば弾性反発説に基づく理論で、実際の地震動が 説明されているという事実はどう解釈すればよいのですか?」

――――――――――――――――――――――――――――
後半の質問はこのセミナーを根気よくお読みいただければ回答が見つかるように思いますが、定量的検討に関しては同じような苦言を抱いておられる方があるかもしれませんので、私が差し上げた返答を紹介しておきます。
――――――――――――――――――――――――――――

地震学を学んだ方や、まったくの素人のかたなど何人かの方が、そういう考えかたもあるのか、と感想を述べておられますが、そういう考える材料を提供しているという点に意味があるとご理解ください。

皆さんがたが自分で考えて、どちらが正しいか判断されると思います。

私が展開している話が不当であればますますご自分が学ばれて正しいと考えていた理論をさらに深く理解して、ヤッパリ定説が正しいと認識されると思います。
――――――――――――――――――――――――――――
以上が差し上げた返答です。

どうぞ私の展開する話を鵜呑みにすることなく、自分で考えて判断を下してくださるようお願いします。
また、研究機関等に居られる方ならば、定量的検討を行って地震学の発展に寄与していただきたいと思います。

私の願いは地震学を前進させて、地震予知に繋げたいということですが、地震爆発説を提起する上で想定される反論にあらかじめ対処する過程で地球科学の全般に言及せざるを得なくなってきたわけです。

必ずしも、全てが分かったということではなく、願いは正しい地震発生の理屈を見出して大地震の予知を成功させたいという点にあることをご理解ください。

1156
2006-03-04 (Sat)
「苦言」へのコメント
Hiromi氏から「苦言」に関するコメントをいただきました。武田先生の論説は紹介するには長いので、重要点だけを抜粋しました。大変面白いので詳細はURLから読んでみてください。

――――――――――――――――――――――――――――
「石田先生への苦言の中に「定量的検討」という言葉がありました。

プレートテクトニクス理論の「定量的検討」というのが、地質学上の測定値をすべて網羅し、理論と測定値の間に破綻の少ない理論であるというなら苦言に説得力があると思われます。
しかしながら、プレートテクトニクス理論は、素人目に、地磁気データの異方性と海溝・海嶺を結びつけ、自分の都合のよいようにパラメータを与えてコンピュータ・シミュレーションを行ったにすぎないものと私は解釈しています。
コンピュータ・シミュレーションは結果がありきの手法で、何の検証にもなりません。
地質学者がコンピュータ・シミュレーションで自分の予想と違った結果をみた場合、パラメータの方がおかしいと修正してしまうのではないでしょうか。

先日、NHKで隕石衝突の番組中、物理学者がコンピュータ・シミュレーションをする際、パラメータを手で修正していたのを奇異に感じました。
名古屋大学大学院の武田邦彦さんは自分のホームページで、コンピュータ・シミュレーションに対する見解を述べています。

http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/F1/profhome.htm

人間の想像力とコンピュータ・シミュレーション

http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/F1/proftakeda/iihanashi/jinsei_kagaku46/index.htm

「それから数年経って、マリー・キュリーは新しい元素「ラジウム」を発見する。そしてそのラジウムという元素が強いエネルギーを出しながら、「ラドン」「ポロニウム」と変化していくことを突き止めたのだった。「一つの元素が別の元素に変わる」という科学的事実が実験によって発見された瞬間だった。錬金術は正しかったのだ。その後、原子核の構造が判り、原子核反応が解明され、今では「ある元素から別の元素を作る」というのは当たり前になり、現在の宇宙は水素から順次、別の元素を作りながらできあがってきたことが判っている。「錬金術はいかがわしい」といった人は自分の浅はかな発言を恥じなければならないだろう。人間の頭にはある特徴がある。それは「現在、正しいと考えることは、現在の知識の範囲内である」ということである。」

コンピュータ・シミュレーションと真実性

http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/F1/proftakeda/genshi-simu/comsimutosinzitu.htm

「コンピュータ・シミュレーションの学術論文を,その持つ特徴を十分に吟味せずに伝統的な学術論文の形式の中に含ませているという便宜的な手法・・・・」

「現在のコンピュータ・シミュレーションは次の2つの点から学問領域として成立するか疑わしい.その第一はコンピュータ・シミュレーションの実施手順の中に自らの錯誤を発見することが出来ないと言うことである.このことによって結果の真実性が失われ,また現在の認識を覆す新しい発見が困難であり,進歩を持って学の本質とする学問それ自体の定義に反するからである.

第二にコンピュータ・シミュレーションの結果を第三者が容易に検証できないという理由からである.また,このコンピュータ・シミュレーションの社会的意義としては,学問的な衣を着ていながら実際には学問的な厳密性を保っていないにも関わらず,社会が学問的厳密性をもって結果を提供していると考えていることから,その意義は低いと結論される.」

学問の内在的矛盾

http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/F1/proftakeda/iihanashi/jinsei_kagaku45/index.htm

 「ミネルバの梟(ふくろう)は夕暮れに飛翔する」
この言葉は、

「皆さん、知恵というと何かありがたくて、将来を見通すような、時に役立ちそうなものに見えますが、実は「知恵」というのは物事がすべて終わった後、それを整理する時に役立つものなのです。だから学問の力で将来を予測しようとしてもダメです」

と言うことである。
「知」というのはややずるい面を持っていて、「物知り顔」ではあるのだが、それは「過去のことをよく知っている」ということで、将来はさっぱり判らないのである。」

「でも学問が新しいことを望むのなら、これまでの学問を捨てなければならない。つまり学者の仕事はこれまでの学問を必死になって勉強するのだが、同時に、その学問体系を崩すことが目的となる。つまり一見して自己矛盾しているのである。

 工学という学問領域は、自然の原理を応用して人類の福利に貢献するものであるが、これまでの工学の成果を十分に踏まえなければならないと同時にそれを否定し、新しい技術を作り上げていく。」<br>「学生が勉強をしながら、実験をする。勉強の目的は「現在の知識を系統的に学ぶこと」であり、実験の目的は「現在の知識が間違っているところを捜す」ことである。だから相矛盾する。」

知っていることだけで「正しい」

http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/F1/proftakeda/iihanashi/jinsei_kagaku47/index.htm

「学問は矛盾を内在する。それは現在の知識で正しいと判断するのが学問だが、同時に学問は現在の知識を覆すために存在する。(万有引力に関して)ニュートンは「悪魔が引っ張る」ということが間違っていることを示した。人類が1万年近く「正しい」と思っていたことを覆したのだから、彼が発見した原理もいずれは覆される。

 人間は「今、正しいことは永遠に続く」と考えがちであるが、それは論理にも反するし、歴史的事実でも無い。平安時代の人にはセルシオは思いつかないが、1000年後の人から見るとセルシオは牛車に見えるかも知れない。

 学問や進歩というものは空しいものだ。」

学会はなぜお金を払わないと出席できないのか?

http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/F1/proftakeda/kyouiku/gakkai.htm

「学問はそれ自体が価値であり、数ではない。数が多いことは嬉しいことではあるが、それは結果であって勧誘すべき事ではない。特に、「会員増強月間なので、会員1人あたり3人は確保しましょう。」などという呼びかけがくると気持ち悪い。

 大学は常にオープンである。何時なんどきに研究室にどなたが来られても、教授会に見知らぬ方が来られてもOKである。国立大学は税金で運営しているので、国民にはオープンであり、私立大学も補助金や税法上の優遇措置からオープンが原則である。

 ところが得てして大学も閉鎖的になる。教授会はもちろん、卒業研究発表会も「関係者以外立ち入り禁止」を主張される先生が出現する。人間は公的なお金をもらっていても、それをもらい続けると自分のもののようになり、自分にお金を払っていただいている人まで排斥したくなるようだ。」

1157
2006-03-07 (Tue)
サージテクトニクスについて

「サージテクトニクス」:地球ダイナミクスの新仮説(A.A.メイヤーホフほか著)の第K編序言には次のような記述がありました。
―――――――――――――――――――――――――――――
「サージテクトニクスはその構成部分の多くを古くからの諸見解に依拠しているが、これまでに提唱されたどの仮説ともはるかにちがう、まったくの新仮説である。著者たちは、この仮説がすべての造構現象について、裏づけのない仮定やその場かぎりの説明を必要とせずに、包括的で内的に整合性のある説明をするものと確信している。」(中略)

「サージテクトニクスには相互依存・相互作用するが独立した3つの過程が関与している。第1の過程は、地球の冷却すなわち収縮である。第2の過程は、リソスフェア内のつながったマグマチャネルのネットワークを流動する、流体〜半流体状のマグマの水平流動である。これがやがてあきらかになるサージチャネルである。第3の過程は、地球の自転に起因するものである。」(中略)

「地球の冷却に起因するリソスフェアの圧縮は、サージチャネルを流動する流体〜半流体状のマグマの水平流動をうながす作動機構となっているので、著者たちはまず、収縮(地球の冷却)仮説について議論しよう。」
―――――――――――――――――――――――――――――
つまり、プレートテクトニクス理論とはまったく違った理論を展開しているわけですが、専門として研究したことがなかったので、これまでまったく聞いたことがありませんでした。

[1143]に紹介した佐藤先生のように地学的な面から研究されている方にはプレート説よりは納得できるものがあるのだと思います。

しかし、第1の過程による地球の冷却・収縮によって地殻が破壊されている姿が深発地震面の真相だ、というのには疑問を感じます。深発地震面(W−B面)は地表面に垂直になっている場所もあるからです。深発地震とは熔融したマントル(マグマと同じこと)内部での解離ガス(水素ガスと酸素ガスの混合)の爆発現象であると考えるほうが合理的だと思います。

第3の過程である地球の自転によって流動体が影響を受け、何らかの造構作用に繋がるという視点も納得しかねるものがあります。

地殻の変形に影響を与える原因としての力はやはり解離ガスの爆発であろうと思います。

しかし第2のマグマチャネルのネットワーク(サージチャネル)がリソスフェア(石田理論では地殻に含まれる部分)内部に形成されているというのはマグマ溜りの巨大なものと考えればそうした構造はありえるだろうと思います。

著者らは地表面で観測される高熱流量帯の資料をまとめ、図のように斜線で示される部分にサージチャネルが存在するとしています。


ただ、この内部を流動するマグマが流動するだけで、地殻を変形させるような大きな力を発揮することはないと思います。

図は平面的なサージチャネルの位置を示していますが、深さ的には下図のような概念図になるのだろうと思います。


マグマチャネルが巨大になれば、そしてその内部からマグマが抜けることがあれば、チャーチワードが想定したムー大陸の沈没原因である、ガスチャンバーのようなものに成長するのかもしれません。

http://www.ailab7.com/mu-tairiku.html

1158
2006-03-07 (Tue)
マントル対流の二つの解釈
定説による日本周辺の三つのプレートと新しい解釈によるマントル対流という地殻の下の熔融マグマの流れを図にしてみました。

図―1は定説です。


図―1

地球表面を構成するプレートといわれているものが地球内部に潜り込んでいます。海嶺部で誕生したときには高温ですが、大洋を移動する間に冷却され、低温になるために比重が大きくなり重い自重によって軽いマントル内部に沈んでいく(能動的マントル対流)とされています。

図―2は石田理論による解釈です。


図―2

地殻は卵の殻のように連結し固定されていて、潜り込むようなことはありません。薄いけれども固定されているから、起潮力が作用しても変形することがなく、海水だけが移動して潮汐現象が起こっていると考えています。対流しているのは、地殻の下にある熔融したマントルです。太平洋マントル対流とは東太平洋中央海嶺(正しくは海膨)から湧き上がって日本海溝で沈んでいく(流体としての)流れであり、フィリピン海マントル対流というのは、小笠原海溝ふきんで湧きあがって南海トラフや琉球トラフで沈んでいく流れであると解釈しています。
定説のプレートといわれている存在を地殻の下部に存在する熔融マントルの対流と置き換えたものと考えればいいかと思います。

1159
2006-03-08 (Wed)
再度の苦言
[1155]に紹介しましたが、(3月4日)に苦言を頂戴した方から再度次のような苦言をいただきました。
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「意味のあるモデルの提案は必要なことだと思います。

地震学は学問としてはまだ新しい方ですが、その成果は偉大なる先輩たちの努力による、人類の得た知識だと思います。
その知識を獲得するために、多くの議論がなされてきたはずです(それはもちろん現在も継続されています)。
過去にプレートテクトニクスを否定した学者がいる、などというのはその一例だと思います。

定説を覆すということを甘く見ておられませんか?
つまり僕が言いたいことは、パトロスさんのおっしゃっている「そういう考え方」は、科学の水準ではないと思います。そのようなものに意味など無いと思います。
パトロスさんが、ご自分のおっしゃることを広く認めてもらおうと考えないなら関係無いことでしょうが、どうしても意見を言いたくなりました。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上がその内容です。同感だと思っておられる方もあるかと思いますので、差し上げた返信を紹介しておきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「コメントありがとうございます。
セミナー[1144] に紹介してありますが、Blot.Choi.Grover の三人が書いている論文に次のような言葉があります。サージテクトニクスこそが正しいという内容には頷けないものがありますが、「プレートテクトニクス仮説以外の別の視点から研究されなくてはならない。」・・・と主張する研究者もあることを知っておいてください。

「プレートテクトニクスモデルは地震メカニズムを説明できず、それゆえに、予知には使えない。現在、地震予知科学とプレートテクトニクスの全般がおちいっている窮地は、この事実を巧みにうらづけている。プレートテクトニクスに反する確実なデータがすでに厖大に集積されていて、それらを無視することは誰にもできない。地震は、プレートテクトニクス仮説以外の別の視点から研究されなくてはならない。]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上が返信です。

「過去にプレートテクトニクスを否定した学者がいる、などというのはその一例だと思います。 」・・・とありますが、過去ではなく現在の現役研究者が紹介したような発言をなされて、より合理的に地球上の現象を説明できるアイディアを見つけようと研究されていることを知って欲しいと思います。

なお、小生のHPを読んでいただければ過去の偉大なる先輩たちとくに石本巳四雄先生のすぐれたアイディアを高く評価していることはお分かりいただけると思います。

「地震学は学問としてはまだ新しい方ですが・・・」とありますが、それだけにもっと自由な発想で地震現象を合理的に説明できるアイディを探求するべきであると思うのですが・・・

皆様はいかがお感じでしょうか、自由書き込みの形式ではありませんが、事務局(ansin@ailab7.com )宛メールを送っていただければ、紹介させていただきます。

1160
2006-03-10 (Fri)
賛同意見
T氏の紹介でソーシャル・ネットワーキング・サービス「ミクシィ」http://mixi.jp/home.pl
というのに参加し、「地震爆発説」をもっと多くの方に知っていただこうと考えています。
届いた苦言メッセージを紹介しましたが賛同メッセージも届きますので、その一つを紹介します。
――――――――――――――――――――――――――――――――
誰もが疑問に思います事は、これだけ科学技術が進んでいるのに何故重大な課題である地震予知の研究成果が全くというほど上がらないのか、ということだと思います。

継続的に莫大な研究費が投資され、高学歴の多くの方が取り組まれている事を考えると更に疑問は深まります。
 大きな地震の後にマスコミに現れる地震学者がいつもトンチンカンな事を言っているように思えて・・・、疑問は深まるばかりです。

 学問的な疑問点は先生がご指摘されますように多々有りますが 、地震後になされる関係者の言葉が言い訳の塊のようなものになっていますので、不毛の議論を聞くような思いがします。

 板論(プレート論)発祥のアメリカでも板論では地震予知は出来ないと言いだしていますので、 その辺りから社会通念を変えていく試みが必要ではないかと思っています。
 私としまして疑問が深まりましたのは以前ANSのHPで、ある方が紹介されましたサイトの記述に「地球の内部構造は隕石の成分比率と同じと見なしている」という部分があったことでした。

これはたくさんの仮定を積み重ねるインバージョン法という手法による結果なのであって、それを信じてしまえば、仮定の集合体のような学問となってしまうのではないかということです。

 とは言っても、地球内部は見えないので、それ以外の方法でどうやって解析すればよいのかと言われましても困りますが・・・。
 要するに、地震学とはそのようなアヤフヤな基盤の上に構築されているという事を知ってもらう必要がありますね。

――――――――――――――――――――――――――――――――

Mixiは荒らしを防ぐために紹介者がないと参加できないということですが、読むことは出来ると思います。まだ仕組みを完全には理解できていませんが、面白いソーシャル・ネットワーキングだと思います。

1161
2006-03-10 (Fri)
地震発生原因の珍妙な説
「微生物が地震を起こすという「仮説」」が【99・9%は仮説】 と言う本〔光文社新書〕に書いてある・・・という友人からの情報に驚いて、早速買ってき読みました・・・。
なぁ〜んだ、やっぱりそうか、という内容でした。

でも、面白い本、考えさせられる本でした。話題になるだけのことはある本です・・・ね。いくら現在定説として扱われ、常識と思っていても「常識というやつは意外にもろいのです。常識はくつがえるものなのです。・・・常識は仮説にすぎないのです。」・・・といっています。プレート論もいつの日か覆されるときが来るのではないでしょうか。

地震は微生物が起こしている・・・という仮説の文脈は以下のようなものでした。

「「飛行機が飛ぶ」という一見あたりまえの事実でさえ、その本当の原因はさまざまな経験則による推測にすぎず、いってみれば、ただの「仮説」に過ぎないわけです。」

という文脈の続きで、

「さらにいえば、地震が起こる理由もよくわかっていません。プレートのずれこみが原因とされていますが、もしかしたら微生物(!)が地震を引き起こしているかもしれないのです(さらに詳しい説明は後述)。」

とあって後述部分には、

「微生物が地震を起こすという「仮説」については、やはり「つかみ」として挿入しましたが、(中略)
もちろん、地震の原因はプレートテクトニクスというのが「白い仮説」です。
しかし、何故プレートが動くのかについては。完全にメカニズムが解明されているわけではありません。そういう意味で、「たとえば、こんな極論だって仮説としては可能だ」という文脈なのです。」

とあります。こんな極論・・・ということであって誰かが真剣に提起しているという話ではありません。
このように注意を引くための「つかみ」として使用されたフレーズが独り歩きすると、怖いものがあります。

1162
2006-03-12 (Sun)
断層地震説の解説が意味不明
セミナー[1089]でも紹介しましたが、東京大学地震研究所のアウトリーチ推進室というのは「地震や火山噴火の仕組み、予知技術など最先端の研究成果について一般(の人)にも分かりやすく説明することを最重要任務として作られた」ということです。

そこの先生が監修された「地震のすべてがわかる本」というのがありますが、とても理解に苦しむ内容が書いてあります。
[1089]の深発地震の解説もそうですが、地震の震源と震源域、断層などの関係についての次の解説(p.102)も理解が困難ではないでしょうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「地震のすべてが分かる本」より

震源断層は余震からわかる(p.102)

「震源は地震が始まった地中の一点を指す。

大きなエネルギーを持つ地震が小さな―点て発生するわけはない。大きな地震は広範囲で発生していると考えるべきで、これはその後に発生する余震の震源から推定する。すなわち、余震のあったエリア一帯を震源域と呼ぶ。

 震源はたんに地震が始まった点に過ぎず、震源域の端にあることも少なくない。
余震の震源を高い精度で調べると、余震は地下に広がった断層の一面を囲んで起きていることがわかる。この余震で囲まれた面が震源断層で、地震の直接の原因はここに当たるわけだ。
 今では地震波の形から地下で動いた断層のずれの方向等を解析できる。

 その震源断層が地表に現れて地表面にずれをつくれば、これを地震断層と呼ぶ。」
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以上がその内容です。

中越地震の解説などでも見られましたが、震源断層は余震の分布形状から判定される・・・ということは、最初にドカーンと起きる大地震(本震)では断層がまだ切れ終わっていないということなのでしょうか、それでは「断層が動いて地震が起きる」という説明は矛盾するように思います。

断層は最初の本震で出来ているのだが、余震を見ないとどこにあるのか分からない、ということですと、余震が一つの面上に並ばないのがおかしくなります。
断層説では、「震源はたんに地震が始まった点に過ぎず・・・」(p.102)「断層が切れ終わるまで地震が続く」その切れ方も何時間というのではなく「1秒間に2〜3kmほどの速さで断層が切れる」(p.51)ということだと思います。

そうならば最初の本震で断層は出来ているはずで、何故余震域が空間的広がりを持つのか(平面上に並ばないのか)説明が出来ません。

余震の震源が空間的に分布しているのは、余震のたびに別の断層が切れている・・・のではないのでしょうか。それとも、何ヶ月も経って余震が終わってから完全に断層が切れ終わるということなのでしょうか。余震と本震は発生の機構が違うのでしょうか。

左の図では断層が切れ終わるまで地震が続く・・とありますが、一回の地震のことでしょうか、余震も含めた地震活動のことでしょうか、常識的には一回の地震でしょうが、それならば、二回目以降の地震は別の断層と考えるのが妥当で、断層は震源域に余震の数だけ存在することになりますが・・・。

もう一つあげれば震源断層と地震断層という言葉が出てきますが、二つの関係もよくわかりません。

たとえば、余震では殆ど断層が地表面に現れることはありませんが、余震があったということは震源断層は出来ていることになります。しかし地表面までは達しない断層ですから、震源域では地震による新たな歪が蓄積してしまいます。

これでは、歪が開放されて地震になる・・・という地震メカニズムに矛盾してしまいます。
度重なる余震によって歪がどんどん蓄積されて、さらに大きな地震が・・・となっておかしな話になってしまいます。

私には何がなんだかよく分からないのですが、これで「一般(の人)にも分かりやすく説明」出来ているということなのでしょうか。

解説文を読む限り「意味不明」という感じがしてなりません。

1163
2006-03-13 (Mon)
地震がますます分からなくなる本

【地震のすべてが分かる本】の52-53ページには「震源よりも遠くの方で地震波が強い場合もある」という解説が以下のように展開されています。私にはどうしても意味不明としか捉えられません。理解できる方があったら教えて欲しいものです。
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「地震のすべてが分かる本」より

地震よりも速い地震波

 断層が切れて地震が起こる。この断層が切れる速度は秒速約2.5km。延長60kmの断層の場合、一方の端が震源だとすれば、全部切れるまでざっと24秒かかる計算になる。
 この24秒の間、切れている地点では次々と地震波が発生している。

ところが、地震の波の速度は秒速約6km(P波)。断層が切れるより早く、10秒かかって断層をたどる。

 断層沿いをみれば、発生し続ける地震波の後を断層の破壊が追いかけていくことになる。

震源の反対側には地震波が蓄積される

長さ60kmの断層の場合、断層の切れ始まった点(震源)から反対の端まで切れるのに24秒かかる。そして、その最後の波が10秒後に伝わってくるまでの34秒間は揺れるわけだ。
 一方、断層が切れ始まった時に発生した地震波は、10秒後に断層の60km先に達する。 24秒かかって断層が切れ終わった時、そこでは断層から発生した地震波が14秒間の強震時間に圧縮されることになる。圧縮された地震波はそれだけ強い。強い地震波が断層から発射されるように突き進んでいく。まさに、ドップラー効果が生む衝撃波。震央から60kmも離れた場所が、震央よりもずっと強い地震波を受ける。

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以上ですが、
なぜ地震波が蓄積とか圧縮とかされるのでしょうか、ドップラー効果とは以下のようなものですが、地震波では誰も移動して観測しているわけではありません。
ドップラー効果
ドップラー効果(ドップラーこうか)とは、波(音波や光波や電波など)の発生源(音源・光源など)と観測者との相対的な速度によって、波の周波数が異なって観測される現象のこと。発生源が近付く場合には波の振動が詰められて周波数が高くなり、逆に遠ざかる場合は振動が伸ばされて低くなる。

例えば、救急車などが通り過ぎる際、近付くときにはサイレンの音が高く聞こえ、遠ざかる時には低く聞こえるのはこの現象によるものである。・・・・以上。
ドップラー効果による衝撃波・・・とかの説明は理解不可能です。
また断層が切れている間だけ揺れているというのもおかしいと思います。それよりもはるかに長く揺れていると思います。この理屈でいけば、いつも震源より遠くに位置する断層端部のほうが深度が大きくなってしまいます。

【地震のすべてが分かる本】ということですが、ますます分からなくなる本・・のような気がします。

1164
2006-03-16 (Thu)
再度の質問
地震爆発説に批判のコメントをいただいている方から、次のような質問1を受けました。
質問1
「地震の原因を解離水の爆発という現象で説明していますが、そのような現象は、実際に実験等で確認されているのでしょうか? 」
次のように、回答1を差し上げました。

回答1
解離水と名付けて(造語ですが・・)いますが、水(結合水と造語しています)が熱によって解離した状態のことで、酸素と水素の混合ガスのことです。したがって小学校か中学の理科実験でやる爆鳴気の爆発のことです。反応式は
http://www.ailab7.com/meka.html

このページの中に書いてある、単純なものです。体積が減少しますので、爆発的科学反応ですが、Explosionではなくて結果的に収縮するImplosionですね。これが地震時の引き現象を起こしていると考えています。
その後、質問2をいただきましたので、「納得するまで考える」ための参考資料・考える材料になるかと思い、返信と共に紹介いたします。
質問2
「なるほど。では、地震は最も浅くて数kmの深さで発生していますが、その深さで水が水素と酸素に分解できる程の熱があるのでしょうか?どれくらいの温度で分解するのですか?
それと、地震動の初動の押し引き分布を爆発と爆縮で説明していますが、それだと押しの領域と引きの領域では、地震波の到達に時間差が生じることになってしまいませんか? 」
という質問です。以下のような回答2を差し上げました。

回答2
「水の解離度に関して百科事典には次のようにあります。


(世界大百科事典より)

地下5kmでも、マグマの流れている付近では岩石を熔融させる程度の温度にはなっているはずです。解離度は温度と圧力で決まりますが、僅かの解離度であっても長い期間には蓄積・貯留されて、かなりの量になるはずです。解離直後には吸熱反応のために着火温度には達しておらず爆発しませんが、周囲からの温度の移動と共に、着火温度に達して爆発・地震という現象になるのだと思います。
http://www.ailab7.com/rinkai.html
http://www.ailab7.com/meka.html
なども参考にしてください。
爆鳴気の反応は爆縮とか偽爆とか呼ばれていますが、大音響とともに収縮して震動を発します。爆発が押し領域を形成し、収縮が引き領域を形成するだろう事は推測ですが、時間差がそれほどある反応ではないだろうと思っています。爆発(押し領域)は解離ガスの圧力によってマグマ溜りが破壊されることによる平衡破綻方型蒸気爆発(蒸気爆発の科学:裳華房)
ではないかと思いますが、爆発の専門家に問い合わせましたが、参考になる資料等得られませんでした。今後の研究成果に期待します。
いずれにしても、爆発と爆縮は大きな時間差は無いだろうと考えています。もちろん、現象的に全てが解明されているわけではなく、弾性反撥と同じく仮説の段階であります。
しかし、ダブルカップリングという震源における偶力の発生仮説よりは、納得しやすい仮説ではないかと思っております。
また、阪神大震災後の断層から3%濃度の水素ガスの噴出が観測されているそうです。通常大気中の濃度は2ppm程度ですから1万倍以上になります。結合して水に戻らなかった水素が地表に漏れ出てきているものと考えられます。

1165
2006-03-16 (Thu)
再々度の質問
再々度の質問が届きました。ANSのサイトを読んでいただければ分かるのですが、内容が膨大になりましたので全部読み切るのは大変かと思います。読んでおられない読者の参考になるかと思いますので引き続き質問と回答を紹介します。
質問3
なるほど。面白いですね。でもよく考えると、爆発と爆縮に時間差がほとんど無いとしても、どの観測点でも初動の押し引きは同じになるような気がするのですが・・・。

ダブルカップルの話が出てきましたが、モーメントテンソルを ご存知でしょうか?
この解析によると、ほとんどの地震はダブルカップルで説明できることが分かっています。
ということはつまり、地震を爆発や爆縮で説明しようとすると、爆発や爆縮によって、断層が滑ったときと同じような力(つまりダブルカップル)が働かなければなりませんが、それは難しくないでしょうか?

回答3
石本巳四雄先生の「押し円錐理論」(ただしマグマが貫入する原因が爆鳴気の爆発であるという点は石田理論)によれば、震源の深さの違い、また円錐の軸が地表面と交差する角度の大小よって、円錐の節面が地表と交差する形状が変わってきます。
それによって地上での初動押し引き分布と、その境界に発生する断層の形状に変化が現れます。押し円錐の軸の方向とは爆発の方向を表しているのですが、典型的なケースを説明します。
円錐の軸が地表面と直角に近い角度で交差する場合:これがいわゆる直下型地震です。押し引き分布は円形または楕円形になり、断層は逆断層となります。角度が浅ければ震央付近は正断層になります。ただし規模の小さな地震では震源でも地上でも断層はできません。断層は規模の大きな地震にのみ現れる地表の傷痕であると思います。断層が動くことが地震現象であるというのは原因と結果を取り違えていると思います。
http://www.ailab7.com/meka.html
http://www.ailab7.com/lib_008.html#lcn008

円錐の軸が緩い角度で地表と交差する場合:押し引き分布は楕円型から双曲線型へと変化します。円錐軸が水平の場合には、震央を中心にした点対象の双曲線型となります。この場合、爆発は水平の方向ですので、震動による被害は直下型のように大きなものにはなりません。しかし、沈下現象が起こりますので、大規模爆発ですと、瓜生島が沈没してしまったような悲劇が起こる可能性があります。高知湾でも白鳳年間に大陥没が起こったということです。
http://www.ailab7.com/lib_011.html#lcn011

震源が浅くて、円錐の軸が水平の場合:地上での押し引き分布は四象限型となり、断層は右ずれと左ずれの水平断層が直交して出現します。
http://www.ailab7.com/lib_013.html#lcn013

モーメントテンソルによる解析・・・によってほとんどの地震はダブルカップリングで説明が出来る、ということですが、ダブルカップリングとなる偶力が震源で何故発生するのかについては合理的解釈が存在しません。しかし、爆発と爆縮というシンプルな機構(押し円錐機構)によって震源でダブルカップリングに相当する関係が起こっていることが説明可能です。
テンソル解析でも可能なことが、それよりもっとシンプルな押し円錐理論で説明が出来るということです。
石本先生は、「科学への道」の中で「科学と単純性」について次のように述べておられます。
セミナー[35]参照:http://www.ailab7.com/log/eqlog31-40.html

「科学と単純性  石本巳四雄「科学への道」より

「科學者の中には事更に複雑なる自然現象を解析して、より深く進み得たと得々たるものも居るが、科學の進展に対しては果して如何なる寄輿をなしたかは疑問である。白然研究は簡箪なるものを以て行ふべきものが、自己の手腕を人々に見せんが爲めに、事更に難解なる考察方法を採るものもある。科學の進歩は決して事の難易にて定まるものでは無い。同じく説明出来るならば、単純化せるものを採用するのが科學の根本原理である。以上は要するに人々の思想間題であつて、如何に自然を見、如何に白然を研究すべきか、心の中に書かれたるものの当否に帰着されるものである。自然研究に携わる人々の才能を越えてもその背後にある思想が適当でなければ、如何に研究に没頭しても無駄の結果を齎すのである。」

1166
2006-03-26 (Sun)
ますます難解になる定説地震学
ミクシーでもダブルカップルの議論が継続中ですが、セミナーではT氏でもあるルフラン氏から概略次のようなコメントを戴きました。
「プレートテクトニクス論とか弾性反撥説による地震発生論は矛盾点が多すぎる為に、その矛盾を補完しようとする定説の理論は極めて複雑で、簡単には解説が出来ないような解り難いものとなってしまっています。
 また前提条件が満たされることを吟味もしないままにインバージョン法というコンピューター解析の手法を採用していますが、コンピューターの計算結果は正しく疑えないという信仰にも近い観念があって、何とか計算結果と地震現象を合致させようという努力がなされています。
そのために、ダブルカップル論というような複雑化した、物理的解釈が簡単には出来ないような奇妙なものになってしまっているように思われます。
 一連の質問をされている学生さんは素直な学生さんのようにお見受けしますが、プレート論を一般の方より深く学んだ為に、益々混迷から抜け出せなくなっているように思われます。
 この状態から抜け出すには地震学者が自らの矛盾点を謙虚に振り返って、別の角度から自然現象を捉えなおす試みをし、物理現象として合理的に解釈できるような仮説を見出して戴くことしかないでしょう。そして、地震学の再教育を施していただくしかないように思います。
 余りにも複雑化した地震理論の矛盾点を一番ご存知なのは最先端の地震学者なのでしょうから・・・・。
尤も現状では、まず最初にプレート論ありき、から出発して弾性反撥説が真理であるかのように扱われておりま
す。そして、自然現象と合致しない部分はさらに複雑な数学的理論を持ち出して定説内で矛盾しないように理論構築しようとすることが研究テーマとされているのですから、自らその呪縛を解くのは真の天才的な方でないと不可能でしょうが・・・。 」
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2006-03-27 (Mon)
超常現象スペシャルのまとめ
昨年末のテレビタックル「超常現象スペシャル」の内容が次のサイトにまとめてあるそうです。
http://blog.livedoor.jp/gran_cody/archives/50286682.html
私が下記のように解説したとありますが、[1103]、[1104]に述べたように、放映されたのは解説した一部分です。本当は彗星が衝突するよりももっと高い確率で大地震によるポールシフトが起こっていると解説しています。
「過去7600万年の間に171回ポールシフトがあった。30〜40度ずれたポールシフトはもっと激しく起こっている。1万2000年とか1万5000年前に巨大な隕石が飛んできて30度〜40度地軸がずれた。その時に大津波が地球を襲うはず。地球規模で大津波が起こったというのが洪水伝説として残っている」
送ってくださったT氏のコメントには次のようにありました。
「テレビにでるタレント的な学者は品が無くて学術的な単語を多用するものの、科学的でない人ばかりですね。
テレビは視聴率さえ取れれば良いのですから、商売的にはこれで十分なのだと思いますが。」
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2006-03-29 (Wed)
東海地震説に「間違い」
東海地震説に「間違い」・・・なんということでしょうか、この30年の間に蒙ってきた静岡県民を中心とする住民の恐怖感はどのように償うというのでしょうか、そして法律まで作って膨大なるエネルギーを浪費してしまった、ということなのでしょうか。
記事を読む限り、要するに現在の地震学では何も確かなことは分かっていない、だから大学の一助手が発する警告に権威ある教授陣が誰も正否を論ずることが出来なかった・・、これからも・・ということを物語っているように思います。
歴史的(?)な記事ではないかと思いますので、全文を紹介させて戴きます。
http://www.shizushin.com/feature/jisin/jisin_kiji/20060327000000000016.htm

東海地震説に「間違い」 提唱から30年 石橋教授見解 2006/03/27
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 1976年(昭和51年)に駿河湾地震説(後の東海地震説)を唱えた神戸大理学部地球惑星科学科の石橋克彦教授(62)=当時東大理学部助手=が今年に入って、静岡新聞社の数回の取材に応じ、地震発生のメカニズムと切迫性についての当時の解釈が結果的に間違っていた―とする考えを明らかにした。「駿河湾地震(東海地震)は1944年(昭和19年)の東南海地震の割れ残りで、すぐにも起こるかもしれないと考えた。30年たって、現実にまだ起こっていないのだから、『割れ残り』という解釈は間違っていたと言われても仕方ない」という。東海地震説が世に出てから丸30年。東海地震予知研究や地震防災対策、法整備などの起点になった学説の提唱者が自ら「間違い」を口にしたことで、東海地震対策が大きな転機を迎える可能性も出てきた。

「割れ残り」の解釈 発生、別メカニズムか
 伊豆半島の異常隆起や地震活動の活発化は駿河湾にマグニチュード(M)8クラスの巨大地震が起きる前兆と考えられる―とする学説は、1976年8月23日の地震予知連絡会定例会で報告された。東大理学部の若手研究者による報告は、重大ニュースとしてその日のうちに日本中を駆け巡り、特に予想震源域の真上に住む静岡県民を震撼(しんかん)させた。
 石橋教授は「明日起こっても不思議ではない」と言われながら沈黙を続けてきた東海地震について、現時点での見解を示した。ただ「駿河湾単独では起こらないと今はっきり言うことはできない。割れ残りではないとしても、ひずみの蓄積などからみて東海地震の発生を否定できない―という中ぶらりんの状況が地震学全体のつらいところだと思う」とも付け加えた。
 日本列島が乗っている陸側のプレートの下に海側のフィリピン海プレートが潜り込む東海地域から南海道にかけてはこれまで、100―150年を周期にほぼ同じ場所で、ほぼ同じ規模の地震が繰り返し起こってきたことが分かっている。
 1854年の安政東海地震の後、東海地方より西側では、1944年の東南海地震と1946年の南海地震が発生した。この時にいったん、地震のエネルギーは放出されたが、駿河湾から御前崎沖では安政東海地震以来、大きな地震が起きていない。
 石橋教授はこの地震活動の空白域を東南海地震の「割れ残り」と仮定した。そこに蓄積されたままになっているエネルギーが放出される「駿河湾地震」が、「明日起こっても不思議ではない」との見方を示した。駿河湾を震源域に含んだ安政東海地震が「本来の東海地震の姿」であり、「割れ残り」の駿河湾領域で起きる地震が切迫している―と指摘したのが「東海地震説」の原型だった。
 ところが、その安政東海地震の発生から既に150年余りが経過した。地震学者の間では「次の東南海地震、南海地震の周期に入ろうとしている」との声も聞かれるようになった。こうした状況をにらんで石橋教授は、「結果論」と位置付けながらも、「割れ残り」の考え方が「間違っていた」との判断を初めて示した。
 ただ、「東海地震の可能性」を否定する見解ではなく、社会にとって安心材料にはなり得ない。「東南海地震はどうして安政東海地震からわずか90年後に起きたのか」「なぜ、東南海地震では駿河湾の領域が破壊されなかったのか」など、多くの謎もまだ解明されていない。

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2006-03-29 (Wed)
ビクビクしながら暮らした暗黒の30年だった
静岡新聞には石橋助手(当時)が東海地震の警告を発した時のいきさつが語られています。
「「騒ぎを恐れていては画期的な進展は望めない」との思いが強かった」・・とありますが、画期的な進展があったのでしょうか、疑問に感ずる住民は多いと思います。定説となっている地震学の実態を正確に把握するために、紹介させていただきます。記事が消えてしまうと勉強が出来なくなりますので・・・。
http://www.shizushin.com/feature/jisin/jisin_kikaku_2/kikaku16/20060327000000000051.htm

沈黙の30年
第1章・東海地震説(1) 「社会動かそうと…」 騒ぎ恐れず学説世に

予知研究に一石 石橋教授 2006/03/27
 

この30年間を「一石を投じた結果が一定程度出ている。大失敗だったとも思わない」と総括する石橋教授(写真あり)
 六甲山を間近に見上げる神戸大理学部(神戸市灘区六甲台町)研究棟の一室。駿河湾地震説(後の東海地震説)が世に出てからちょうど30年目の今年2月、研究用の書籍や資料に囲まれた石橋克彦教授(62)は、自らが唱えたこの学説について静かに語り始めた。「間違っていたと言われても仕方ない」。駿河湾地震説のどこがどのように間違っていたのか。1976年の地震予知連絡会定例会で、当時の東京大理学部の若手研究者はどのような意図で、何を訴えようとしたのか―。
 安政東海地震の際に破壊された駿河湾領域が、90年後の東南海地震では割れ残った。この「割れ残り」の領域で、すぐにも駿河湾地震が起こるかもしれないと考えた。30年の歳月が流れる中で「現実にまだ起こっていないのだから、『割れ残り』という解釈は間違っていたと言われても仕方ない」との思いに至った。
 駿河湾地震説が社会全体を揺るがした当時、確信的な気持ちがあった。「はっきりと、社会を動かそうと思っていた」。地震予知連定例会では「直下型巨大地震という最悪のタイプであり、発生の兆候が明らかになってからでは手遅れ。ただちに直前監視警戒態勢に入るべきだ」と訴えた。「騒ぎを恐れていては画期的な進展は望めない」との思いが強かった。

 「割れ残り」という見方は多くの地震学者が納得し、「標準的な考え」になった。社会もそれを受け入れた。石橋教授は「安政東海地震と東南海地震は相補的で、両方を併せて1人前」という可能性にも言及していた。「割れ残りだからすぐに起こると言い切っていいのか」。そんな疑問を反すうした。
 自問自答を繰り返している間に、社会はある意味で「思い」通りに動き出した。地震予知研究は大きく進展し、静岡県など地震防災対策強化地域の地震観測網は世界に類を見ないほど整備が進んだ。大震法や地震財特法なども整備され、ハード、ソフト両面の東海地震対策が進んだ。

 この30年間を「一石を投じた結果が一定程度出ている。まったくネガティブ(否定的)ではないし、大失敗だったとも思わない」と総括する一方で、「静岡県民から『ビクビクしながら暮らした暗黒の30年だった。どうしてくれる』と言われても仕方がない」とも感じている。
 今回の見解が社会にとって決して「安心材料」にはならないことを強調した上で、「社会が対応を先延ばしにすれば地震環境は悪化する。その時に、(四国沖から駿河湾内までが震源になった)宝永地震(1707年)のような巨大地震が起きたら大変なことになる」と警鐘を鳴らす。
 駿河湾と西岸一帯の明治以来の地殻変動は大地震の準備過程―という考えに変わりはない。観測された地殻変動の量や繰り返しの周期などから、「今世紀の半ばには駿河トラフを含む南海トラフで巨大地震が発生する」との見解は、多くの研究者の間で一致している。

1170
2006-04-06 (Thu)
サンデー毎日の「原発震災」記事
東海地震を最初に警告し、警告内容には間違いもあったと述べる石橋教授は7年前(1999年)にも原発震災の危険というコメントを朝日新聞に投稿し、拒絶されたことがサンデー毎日に載ったそうです。毎日のルポライター氏が朝日を非難しています。hiromi氏からの過去情報です。

 東海村シンドローム“朝日新聞がボツにした地震学者の「警鐘論文」”
サンデー毎日1999/11/21

東海大地震説を初めて説いた地震学者が東海村・臨界事故に関連して書いた「警鐘論文」がボツになった。各紙の事情はあるだろう。だが、不採用を告げるはがきには学者を憤慨させる意味深な添え害きがあった──。この論文の趣旨を重要だと考え、本誌であえて掲載したい。ルポライター 石黒二郎

 「原発震災」なる言葉をご存じだろうか。筆者は不勉強にも、つい最近まで知らなかった。いや、「知らされていなかった」と言ったほうがいいのかもしれない。
 これは、関東大震災や阪神大震災のような大規模地震による災害に原発事故までが加わるという、空前絶後の破滅的的災害を意味する言葉である。
 まずは下にある論文の、特に後半部分を読んでいただきたい。ただただ驚愕するしかないこの論文の筆者は、23年前にあの「東海大地震説」を打ち立てた石橋克彦・神戸大学教授である。ところでこの論文、そもそもは『朝日新間』の名物コーナー『論壇』欄に掲載してもらおうと、石橋教授が投稿したものだった。

「臨界事故が起きた今こそ、できるだけ多くの人に『原発震災』の破滅的な恐ろしさを知ってもらい、国民的議論のきっかけにしてほしいと考えたわけです」 (石橋教授)

 ところがあえなくボツにされた。そればかりか、〃ボツのお知らせ〃のわきに手書きで次のように添え書きされた一枚のはがきが教授の自宅に届く。
「警鐘を鳴らし続ける意味はわかります。しかし、『どうすべきか考える責任』はすべての人にあるにしても専門家にはその先の『どうしたらよいのか』を具体的に提言してほしいと思います」
 つまり、専門家として「どうしたらよいのか」を提言していなくて無責任であり、掲載に値しない──というわけだ。石橋教授はこう反論する。

「この問題は、専門家の提言に頼っていればよいなどというチャチな問題ではない。事態を知らされた上で『どうしたらよいのか』を考える主人公は、あくまでも一般国民。現時点での専門家の責任とは、『まず、正しく知らせる』ことなのだ。その責任を圧倒的大多数の専門家は全く果たしていない。高度の科学技術が一般国民の日常生活を支配し、普通の人から政策決定権が奪われている今日、専門家とマスメディアは国民の側に立って判断材料を豊富に、わかりやすく伝えていかなければならないのに、この『論壇』担当者はそのことに対する理解も自覚も覚悟も、全く欠落している」

具体的な提言として「危ないから、直ちに原発を止めよ」と論文内に書かれていたら、掲載したのだろうか?そこで朝日に聞いてみたところ、「『論壇』には毎週平均して数十通にのぼる投稿が寄せられ、掲載できるのは週5本程度と限られているため、投稿者全員のご要望にこたえることはできない」(広報室)とのこと。

では、なぜあのような添え書きをしたのか。「添え書きの部分は、担当者の感想。掲載できなかった理由は、あくまでも先に回答したとおり」(同広報室)。朝日としては、とにかく担当者一個人の問題として処理したいようである。ならば、詫びを入れるなりしていち早く、石橋教授の憤慨を解くべきだろう。

 最後に、氏名不詳の「担当者」氏へ。あなたがエラそうに書いた「感想」の見解に、貴社の広報室は頑としてくみしなかったぜ。悔しかったら、石橋先生と直接対決するがよい(別に、筆者とでも構わないが……)。
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 今こそ「原発震災」直視を
石橋克彦

 九月末に茨城県東海村の民間核燃料加工施設で起きた臨界事故の真の散訓は、原子力の本質的な恐さを見据えて、あらゆる面での安全性を総点検し、それを踏まえて原子力政策を根底から考え直すことだろう。しかし現実は、ずさんな施設の安全性確保や小規模事故の防災体制といった議論にとどまっている。小論では、見過こされている「原発震災」の現実的可能性を直視すべきことを訴えたい。それは、原子力発電所(原発)が地震で大事故を起こし、通常の震災と放射能災害とが複合・増幅しあう破局的災害である。
 政府・電力会社は、原発は「耐震設計審査指針」で耐震性が保証されているから大地震でも絶対に大丈夫だという。しかし、その根底にある地震(地下の岩石破壊現象)と地震動(地震による揺れ)の想定が地震学的に間違っており、従ってそれに基づいた耐震性は不十分である。

 そもそも、日本列島の地震の起こり方の理解が進んだ今となっては、列島を縁取る一六の商業用原発(原子炉五一基)のほとんどが、大地震に直撃されやすい場所に立地している。日本海東縁〜山陰の地震帯の柏崎刈羽・若狭湾岸・島根、 「スラブ内地震」という型の大地震が足下で起こる女川・福島・東海・伊万、東海巨大地震の予想震源域の真っただ中の浜岡などである。原子炉設置許可の際、過去の大地震や既知の活断層しか考慮していないが、日本海側などでは大地震の繰り返し年数が非常に長いから、過去の地震が知られていない場所のほうが危険である。
 また、活断層が無くてもマグニチュード(M)7級の直下地震が起こりうることは現代地震科学の常議であるのに、原発は活断層の無いところに建設するという理由でM6・5までしか考慮していない。しかも実ほ、多くの原発の近くに活断層がある。最近、島根原発の直近に長さ8キロの活断層が確認されたが、中国電力と通産省は、それに対応する地震はM6・3にすぎないとして安全宣言を出した。しかし、長さ八キロの活断層の地下でM7・2の1943年鳥取地震が起こって大災害を生じたような実例も多く、この安全宣言は完全に間違っている。
 要するに、日本中のどの原発も想定外の大地震に襲われる可能性がある。その場合には、多くの機器・配管系が同時に損傷する恐れが強く、多重の安全装置がすべて故障する状況も考えられる。しかしそのような事態は想定されていないから、最悪のケースでは、核暴走や炉心熔融という「過酷事故」、さらには水蒸気爆発や水素爆発が起こって、炉心の莫大な放射性物質が原発の外に放出されるだろう。一般論として原発で過酷事故が起こりうることは電力会社も原子力安全委員会も認めている。一方、米国原子力貴制委員会の報告では、地震による過酷事故の発生確率が、原発内の故障等に起因する場合よりずっと大きいという。
 例えばM8級の東海地震が起これば、阪神大量災を一ケタ上回る広域大震災が生じ、新幹線の脱線転覆などもありうる。そこに浜岡原発の大事故が重なれば、震災地の救援・復旧が強い放射能のために不可能になるとともに、原発の事故処理や近隣住民の放射能からの避難も地震被害のために困難をきわめ、彼災地は放棄されて真大な命が見殺しにされるだろう。また、周辺の膨大な人々が避難しなければならない。浜岡の過酷事故では、条件によっては、十数キロ圏内の九〇%以上の人が急性死し、茨城県や兵庫県までの風下側が長期居住不能になるという予測もある。
 このように原発震災は、おびただしい数の急性および晩発性の死者と障害者と遺伝的影響を生じ、国土の何割かを喪失させ、社会を崩壊させて、地震の揺れを感じなかった遠方の地や未来世代までを容赦なく覆い尽くす。そして、放射能汚染が地球全体に及ぷ。この事態に対して、臨時国会に提案されるという原子力防災法案は、本紙(注−朝日新聞)の報道で概略を知る限り何の役にも立たない。地震活動期に入りつつある日本列島で51基もの大型原子炉を日々動かしている私たちは、ロシアンルーレットをしているに等しい。この地震列島・原発列島に暮らすすべての人々が、この現実を正しく知って、どうすべきか考える責任がある。
(神戸大学教授・地震学=投稿)

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以上がサンデー毎日の記事のようですが、東海地震説に一部とはいえ間違いがあったと述べられる石橋教授、そして石橋説を援護される石黒ルポライターは今どのようなコメントを出されるのでしょうか、知りたいものです。

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