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2008-07-31(Thu)
教科書を読めと薦める研究者へ
地震学者として大成を目指している人の中には、初学者に対して「とにかく教科書を読め」と主張する方がおられます。そのような方に石本博士の「科学を志す人々へ」の中から参考とすべき考え方を紹介しておきます。

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  十八 自然研究と知識  

石本巳四雄著「科学を志す人々へ」第二章自然と研究より

 往古の学者は万巻の書を読破してことごとく脳中に納め、博覧強記を以て誇りとしたものである。今日においてもある種の学者はかかる才能のあることも欠くべからざる要素であろうが、自然研究者はむしろ別処にその才能を閃めかす頭の働きを必要とするのである。それは自然現象より事実を摘発して系統づけ得る才能である。

 確かに、我々は読書することによって、古人の業績を知り、我々の進まんとする方向も自得するのであるが、いたずらに多読して物事を知的に吸収する場合に於ては、かえって自然に対する感受性を没却してしまうのである。人々の研究論文を読むことはさして弊害ではないが、教科書類は、すべて自然は現在の知識にても完璧のごとく教えるものであるため、水も漏さざる完全さを眼前に開陳する故を以て、人々は自然を心に画いて、疑義を生じない弊を生ずる。これはおそらく書籍の罪というよりは読む人の心構えの罪ではあろうが、書籍の得て人を誤るのは見逃し得ない状態である。(中略)

 即ち自然研究者の読むべき書は自然現象を解析的に取り扱う手法の書いてあるもの、正しき思想を涵養するに適するもの、研究に当って不退転の心の生ずるもの以外には読むべき書は極めてわずかである。我々の知識は多く書から得ると思い読書を励める人士が多いのであるが、じつは科学者の知識は自然現象の観察から直接受けるのである。書籍に書き上げる時には遺漏なきを期するため、自然現象がすべて判ったような書き方をするから迷わされるのである。

 我々はまた一面に知識の多いことを以て誇りとなす傾向があるが、じつはこの知識の多いということがかえって研究の妨げをなすのである。このために自然研究者は知識の少ないことの方が適当であるともいえるのである。知識の中には誤ったものもあるであろうし、半可通のものもあるこれらを正しき知識として覚えるに及んではかえって不結果を来たす。

 また正しき知識であろうとも、かえって物事を知っているために勇気が挫けて前進することの出来ないことがある。人のいうことに信を置くよりも自ら進んでことに当ることを心掛けなければならない。(後略)

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2008-08-02(Sat)
ある建築家の失望と憤慨
建築家である鵜野日出男氏の「今週の本音」・・・というサイトの2005年6月の記事に、中越地震でホールダン金具が破壊した件を科学的に解明して欲しいという切なる望みが述べてありました。

http://homepage3.nifty.com/net-forum/honnne/honnelink/20050602.htm

ホールダン金具とはコンクリートの基礎に埋め込んで、木造家屋の柱と基礎とを連結する頑丈な金具だそうです。

それが地震で破断するとは想像もできなかったことのようです。「本来ですと、国とか住木センターとか、あるいは学会が中心になってその実態を調査すべき問題です。」と述べておられますが、地震は爆発現象であることを認識しないかぎり、ホールダン金物の破壊は説明できないでしょう。地震の真相を見ようとしない学者への失望感と憤慨を鵜野氏の記述から学んでみます。

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■2500ガル以上の脅威。科学的な解明を切望!!

 皆さん。この写真、一体何だかわかりますか?


 これは、昨年の新潟中越の直下型地震、その激震地で痛めつけられたホールダン金物の哀れな姿です。これは歴史に残る貴重な写真だと思います。中央にナットがあります。ナットに小さなものが挟まっています。これが、千切れたボルトの残骸。
 直下型の地震でホールダン金物が千切れたと言っても、ほとんどの人は信用してくれませんでした。
 「そんな馬鹿な……」
 しかし、この写真を見ていただくと、私が大法螺吹きでないことだけは信用していただけるでしょう。
 何度も同じことを書きます。川口町役場の震度計は震度が7で、ガルが2500を突破していました。ガルは阪神淡路地震の3倍という信じられないものでした。そして、町役場周辺の住宅の倒壊率は30%程度でした。
 多雪地域なので最低でも4寸の柱、大きいものだと4.5寸から5寸の柱を使っています。このため、倒壊率そのものは阪神淡路大地震に比べて大きくはありません。
 この川口町役場から半径300メートル以内に、渡部建築が建てたスーパーウォールが2棟あります。
 その2棟ともコンクリート床スラブを持った高基礎で、構造体は無傷でした。亀裂も入っていなければ、水平・垂直ともレーザー測定で問題はありません。
 ただ、直下型の強い突き上げにより引き違いサッシの建具が枠から飛び出して落下したり、面外座屈を起こしたスジカイにより内壁ボードが破損したり、クーラーの室内機が落下するという被害はありました。
 しかし、一般常識から考えて軽微な被害に過ぎず、施主もその丈夫さに満足しています。
 ここだけの範囲を見ると、震度7で2500ガルはたいしたことはない。今までの耐震テクニックで十分に対処出来るという気がします。

 ところが、町役場周辺ではなく、激震地と言われた田麦山、和南津、武道窪へゆくと様相が一変します。局地的ですが倒壊率が90%にも及ぶのです。
 日本の地震履歴の中で、90%近い倒壊率というのは例をみません。多雪地域で極太の柱や梁を使ってこの被害ですから、建築関係者はもっと本格的に調査すべきでした。(略)

  木造に関しては、信州大学の五十田研究室と筑波大学の境研究室がかなり調査をしています。しかし、いずれも倒壊率ということにとらわれすぎて、かつてない大きなガルの被害を見落としています。7学会共同の「中越地震被害報告会」の発表会に参加して、本当にがっかりしました。つまり「木を見て森を見ていない」というか、2500ガル以上という脅威の実態に誰も迫っていないからです。
 このままでは、信じられない激震がもたらした貴重な記録と資料は死蔵されたままになります。人類の貴重な財産として後世に何一つ伝わりません。
 こんな馬鹿げたことがあっていいのでしょうか。 川口町の激震地のことが建築界の大きな話題にならなかったのは、田麦山、和南津、武道窪に大手住宅メーカーの住宅が建てられていなかったからだと言えるでしょう。ツーバィフォー住宅でさえ見かけません。

 この地域は、いまだに「セイガイ造り」と呼ばれる民家建築系統の家が主流を占めており、プレハブなどが入り込む余地がほとんどないのです。(略)
 ホールダン金物が千切れたというショック。それは一ヵ所だけの例外的な現象だと考えていました。ところが、冬の間に渡部建築ではホールダン金物が千切れた田麦山の家の土台回りのサイデングを外して見たそうです。そしたら、千切れたボルトのほかに2ヵ所でナットが外れたり、写真のように金物が捻れて使いものにならなくなっていたというのです。 
 このほか和南津の、ほとんど被害がないと思われた住宅のサイデングを外して見たら、これまたホールダン金物の損傷が見つかりました。
 「全部の家のサイデングを外して見たわけではないので確言はできないが、全部の家を徹底的に調べたら、ホールダン金物の被害はもっと発見されるのではなかろうか」と渡部社長は言います。

 私は、これは一ビルダーの責任に帰す問題ではないと思います。本来ですと、国とか住木センターとか、あるいは学会が中心になってその実態を調査すべき問題です。
なぜなら、ホールダン金物を推奨したのは外ならぬ国です。そのホールダン金物が、写真のような姿になったのです。
 なぜこうなったのか。

 激震地のガルは2500どころか3000から4000ガルに及んでいたのではないか。

 あるいは、今のホールダン金物自体に問題があるのではないか。その形状や強度に……。
 そして、大手ハウスメーカーもビルダーも、もっともっとこの事実に目を覚ましてもらう必要があります。
 「阪神淡路大震災だと倒壊を免れるが、新潟中越地震の直下型激震地だと倒壊のおそれがあるのかもしれない」と。

 この写真から、新しい動きが出てくることを切望します。

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以上が鵜野氏の失望と憤慨であります。中越地震の後に、中越沖地震が起こり、岩手・宮城内陸地震では4000ガルを越える衝撃を実際に記録もしました。しかし、依然として、未発見の活断層が存在したに違い無いというような見当違いの議論しか行われません。
地震学者はこのホールダン金物の破壊をいったいどのように説明するのでしょうか。

追記
2004年12月には次のような記事もあります。4000ガルの衝撃の原因を真剣に検討しないといけないと思います。

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■千切れたホールダン、折れた柱脚金物  新潟中越地震(5)

(略)この渡部建築が建てた田麦山という烈震地帯の集落の桜井邸の現場で、想像出来ないことが起こっていました。
 二階の床スラブを持った一階の高床は、何一つ問題がありません。あまりの綺麗さに、ここでもど肝を抜かされました。「私は、ここまでやってきただろうか?」
 それなのに、二階で事件が起こっていました。
 コンクリートの床スラブを3尺だけオーバーハングさせ、バルコニーとしています。そして、バルコニーに雪が積もらないようにと下屋をかけ、二本の柱で支えました。柱の脚もとには木材技術センターの定める太い柱脚金物を使用しています。
 その二本の柱脚金物が、最初の直下型の震度7の時か、あるいはその後の震度6の時かはわからないけど、折れてしまいました。その下屋の不自然な動きにつられて、外階段室の外側の壁を留めていたホールダン金物が千切れてしまったのです。
 いや、最初にホールダン金物が千切れて、その影響で柱脚金物が損傷したのかもしれません。
 阪神大震災の時は、シートベルトをしていなかった細い柱の木造が揺れで片側の土台から柱が浮き上がり、落ちた瞬間に通し柱が折れて5000人という人が瞬時にして潰されるという悲劇が起きました。
 このため、土台と柱が浮き上がらないようにと、ホールダン金物の使用が一般化してきました。ホールダンというシートベルトさえやっておけば、倒壊することはありえない。
 そんな神話を、私だけでなくほとんどの人が信じて疑わないはずです。
 その木材技術センター認定のホールダン金物が、ネジが外れたのでも引き寄せ金物が剥がれたのではなく、太いアンカーが千切れてしまったのです。
 そして、下屋を支えるだけの荷重の少ない柱脚金物が折れてしまったのです。これは、認定金物そのものに問題があったのか、あるいは直下型の震度7という烈震は、想像以上の力を建築物に与えるということなのか。その真偽は私には分かりませんが、ひどいショックを受けたことは間違いありません。
 それだけではありません。この住宅の一階のコンクリートの中では、給湯用の大型タンクがひっくりかえっていました。タンクを支える4本の金物は、コンクリートの中にしっかり固定しています。しかし、その金物と給湯器をつなぐ座金が捻れて抜け、大きな給湯器はだらしなく倒れ、多くの配管を押し潰していました。
 これも金具の破損です。給湯器メーカーは、震度7という直下型を想定していなかったのでしょうか。まさか、そんなことはないと思います。
 とすれば、直下型の震度7という烈震は、想像以上の力を持っているということなのでしょうか。あるいは、この烈震地は震度7以上のものだったということなのでしょうか。

 ともかく、建築屋の手に負えない事実が次々に出てきます。

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地震は爆発現象であることに気づかないと、金具の破壊という瞬発的な現象は説明できません。工学の世界にいる人には重要な知見ですが、地震学者には一種のオーパーツなのでしょう。これでは進歩がありません。(石田の後記入)

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2008-08-03(Sun)
「地震とその研究」:石本理論
以下に紹介する文章は石本巳四雄博士の「地震とその研究」に載っているものです。

断層がなぜできるのか、石本博士の考察はプレートテクトニクス理論や断層地震説が説くところに比べて、物理現象としてのイメージが容易に得られるもので、誠に明解であります。

このすばらしい理論が廃れてしまったのは、震源における岩漿圧力の増加が如何なるメカニズムで起こるのかが明確でなかったこと、またその原因が爆発現象によるものならば、全方位が押し領域になるはずであるという短絡的な発想ではなかったのでしょうか。今一度岩漿貫入理論の見直しを行い、マグマ貫入のメカニズムが単なる爆発ではなくて、爆発と爆縮という二つの化学反応であるとする石田仮説を公平に評価していただきたいと思います。

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九九 断層の出現について

(略)

確かに吾等が地表に見る大地は岩石より成り、岩石は一種の弾性体に相違ない。然し乍ら、極めて堅いと信ぜられる岩石も摺曲せる事実を見る時に、果して歪力の集注に長時間堪え得る物質なりやと云ふ疑問の油然として湧き来るのも亦当然と云わなければならない。且て日下部博士は岩石の弾性を具に研究した結果、その弾性は一般に見る弾性体とは著しく其の性質を異にし、周期的力に対して履歴現象の著大なる事を実験的に示したのであるが、其の性質こそ吾々が粘弾性と呼ぶ性質を以て掩ひ得る性質なのである。即ち粘弾性物質は極めて緩慢に作用する力に対しては、恰も粘性ある液体の如く、急激に変化する力に対しては所謂弾性体の性質を現すのである。

吾々は地表に見る岩石が斯様の性質ある事から、此れを地殻深所に於ける物質に当てはめんとする場合、連想するものは地下に於ける温度、圧力の上昇する事実と、地殻内の各所に貫入する深成岩の存在とである。深成岩は且ては液状を呈した物質の地殻空間を充填したものであり、其の根元には液状をなす多量の岩漿の存在する事を思へば地殻深所に赴くに従ひ地下物質は益々粘性を発揮すると考へて差支へないであらう。

 吾々は地震波の横波が地殻内を通過するの故を以て地殻を弾性体となすが、それは周期の小である為である。百年、二百年間一方向に働く力に對しても同様の考をそのまま固持する事は恐らく不可であらう。吾々が地殻の一般変動として認める中には、断層運動の如く地震と同時に発するもののみに非ずして、極めて慢性的に蠕動する多くの例を知って居るからである。然も地殻が弾性体であるならば、変形は即ち歪力の集注或いは解放を意味する事となり、過度の圧迫ある場合物質は破壊に導かれるのである。吾々は古く褶曲せる地層或ひは新しく各地に行はれる慢性的変動事実を以て歪力の集注に引き比べる事は敢えて為し難き事であり、斯かる主張は岩石の本性を認めず、自然を曲視する行為の如く思はれる。

 斯く説き来れば然らば地震時に発生する断層の事実を如何に見るかと云ふ反問に接する事となろう。地殻物質は粘弾性と考へる以上、相当急激に変化する力に對してのみ弾性を発揮し、其の歪力が限度を越える場合破壊が招致され、従って地震時における断層の出現の如きは急激なる力の作用を必要とする。(略)

著者は地殻の水平方向の運動に対して水平力の仮定を省みぬものでは決して無い。然し乍ら其の水平力(プレートの作用というような:管理者補足)が可成遠方から作用して居ると云ふ架空的見解を排する迄である。断層出現によって歪力が開放されるならば、歪力の働いた何所の土地も同様に動きが出現しなくてはならない。吾々は濃尾地震の際生じた断層は日本を眞半分になしたと云ふ事を聞く、果して日本の両部分か相互に移勤したと云ふ実証はあるのであらうか。又近来大地震後に行はれた震災地方の三角測量にも斯様の事実が存したのであらうか。

 三角測量の再施行によって明かにされた地震に伴ふ水平移動は全く震央地域に著しく、百粁多くとも二百粁程度を距ると、も早や認める事の出来ないものとなる。従って仮令歪力が生じたるにしても其の範囲は極めて狭隘の所であり、決して日本が半分になって移勤した結果でもなければ、アジア大陸が働きかけた力でもないのである。地変は震央を中心として百粁内外の内で終結して居るのである。然らば斯様な断層運動を起こすべき力の本源は何處に求むべきであらうか。

 物体は力無くしては動くことは出来ない。其の力を遠方に求める事が出来ないとすれば、震源附近に求める外はなく、此所に少くとも水平力、垂直力を生ずべき機巧を想像しなくてはならない。然も吾々は大正十二年関東地震の如く断層の出現しない地震を如何に取り扱うかという事態に逢着する。相模湾沿岸において最大二米にも達せんとする土地隆起の認められたるに反し、相互変移として所謂断層の地表に見出す事の出来なかったのは、果して断層が小であって地表にまで達しなかった故であらうか。水平力は此の揚合何所に働いたのであらうか。(略)

 吾々の今日力むべき事は震源における地震波の発生を正しく理解する事であり、その結果初めて震源における機巧を想像し得るものである。此の問題は次節に於て再論せんとするものであるが、著者は少くとも震源における力の源は或る空間を満たす流体中に発生する力を考へるのである。此の流体は岩漿の名を以て呼ばれるものに相当するであらう。斯様な性質を有する物体を推定するは突飛であるとの誹を受けるかも知れない。然し乍ら、地変はも早や水平方向のみでもなければ、地殻両部分の移動は遠方から圧する力でもなく、全く震央地方に限られて居るとすれば、震源空間に於て垂直、水平両方向に成分を有する力を仮定しなければならず、此れに最適するものは岩漿内に発生する圧力の外は無いのである。(略)

斯くする事によって遠方から作用する水平力の必要なく、地震動も地形変動も同時に楽々と説明し得る事となる。(略)

 

 要するに地震に伴ふ地変を相当遠方から働く水水平力を以て説明する事は極めて困難であり、震源における岩漿圧力の増加に従って、或る時に土地の隆起を、或る時は断層を出現せしむるとすれば、現象を一元的に総括し得ると同時に、初動方向分布より得たる結論とも全く協調を保ち得る特長あるを以て、著者は此れを採択して地震現象を説明するものである。

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以上が抜粋の紹介であります。要するに、通説では歪が蓄積されて限界に達する時に地震が起こるという解釈になっていますが、地殻は粘弾性であるから、ゆっくりとした変動には流体的な挙動をするので、歪が蓄積される事は有り得ないという考えです。また、断層の形状を見れば分かるように、震源および断層付近での力学関係だけで変位しているのだから、プレートが押す水平力によって変位が起こっているのでは無いという至極当たり前の知見を述べておられるだけだと思います。

通説はこのような単純な理解を無視して、難解な解釈を導入していると言うことであります。

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2008-08-04(Mon)
地震初動方向の分布に関する石本考察
次に、石本博士が地震初動方向の分布に関して考察されている記述から抜粋して紹介します。

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一〇〇、地震初動方向分布に就て

 地震の初動分布が地震波発生の機巧を考察せしめる恐らく唯一の手掛りである事は、誰れしも異論のない事であらう。従って各研究者も慎重の態度を以て其の現象に直面する覚悟を持って居なくてはならない。

 初動分布の状況が大正六年志田博士によって指摘されて以来、其の機巧に関する数多の提案は存在する。然し乍ら今日より見て甚だ遺憾に堪えぬ事は、永年此の問題に関係して発表された多くの論文に対して、充分の検討の行はれなかった事であり、少くとも以下述べる二つの事柄に対しては充分の反省を必要とし、互に地震初動方向分布の研究に直進し度いものである。

 第一は恐らく先入主的に存在した考察から出発したもので、地震波の放射は断層の成生によって行はれると主張するものである。即ち先づ震源に断層の成生を仮定し、初動分布が其の仮定に馳背しないと云ふ理由から、地震の原因が其れであると決定する。此れは結論たるべき主張が已に前提の中に含まれて居る事から、論理上からすれば正常な証明とはならない。即ち若し地震波の放射が断層成生に非ずと仮定しても、初動分布が説明される場合に到着するならば、以上の主張は直ちに頓挫する事となるからである。

第二は物質の移動と波動の俺播との区別を充分明瞭にする事なく議論を進めた事である。恐らく何人も此の二つの間に区別の存在する事は承知して居る筈であるが、其の主張に急なる除り二者の区別を忽にした如くである。人々は地震初動を論ずるに当って、その波動が地殻内の一点から発生したと考へて何等齟齬を来さぬに反し、稍々もすれば極めて拡がりのある(例へば関東平野を中断する如き)震源を考へた。勿論初動は其の断層線の初発点から発生されたと解釈されるが、時に初動分布の節線と此の断層とが混同されれば反省の余地は充分存するのである。(略)

吾々のまず知りうることはその平面状における圧し波、引き波の分布を観測することであり、次に球面上における分布を推定する事であって、震源における発震機功を云々してから決定されるものではない。

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以上が抜粋記事です。要約すれば、確実に分かることは地表面での初動方向の分布だけであり、これを説明できる発震機功を探さなければいけないけれども、断層説を支持する立場の人は先ず震源に断層を仮定して議論を進めているということです。断層地震説以外の爆発と収縮という発震機構を想定しても、初動方向の分布が説明できるのならば、断層説は頓挫すると述べておられます。第二の問題は震源が一点と考えられるのに、なぜ広がりのある断層から地震波が放出されると解釈するのかという点です。震源は断層が破壊し始める最初の点で、何十キロも離れた断層の終端からも地震波が放出されているという解釈ですが、これはセミナー[114]に紹介した井尻先生の質問にあるように、地質学者にとっても、一般の読者(たとえば[806]のhitsujiさん)にとっても理解できない概念ではないでしょうか。井尻先生はなぜ大地震でも震源が点で表されるのか、断層説ならば震源は線か面で表示してももらはないと理解できない・・・という意味のことを述べておられます。

なお、この問題に関連しますが、断層破壊の進行する断面、たとえば断層の終端部から発射された地震波はどこに到達しているのだろうか、また途中で発射される地震波が重畳すれば地震波形は複雑になって震源からの発射波と区別がつかなくなるのではないかという素朴な疑問も出てきます。

たとえば山本寛著「巨大地震は水素核融合で起きる」の中には、「いまさら他人に聞けない、震源と地震波への疑問」というコラムがありますので、抜粋して紹介します。

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「いまさら他人に聞けない、震源と地震波への疑問」

地震に関して門外漢である筆者が、地震学について奇異に感じるのは、「震源」と「地震波」の関係である。

 現在の地震に関する書籍では、「震源」と、観測される「地震波」との関係は、図6のように説明されている。

 つまり、地震のエネルギーは、「震源」と呼ばれるある狭い空間から発せられことになっている。 しかし、「地震のエネルギー」は、「地殻の破断」による「断層の滑り」であり、防災科学研究所のホームページ、では、「地震の規模」と「断層のすべり」の関係を、次のように記述している。

【地震の規模を示すマグニチュード(M、正確にはモーメント・マグニチュードMw)は、この破壊の広がり具合に直接関係しており、M8の地震では代表的な断層面の長さが100〜150キロメートル、断層の食い違い量は4〜5メートルとなります。また、M7の地震では断層長が30〜40キロメートルで食い違い量が1・5〜2メートル、M6の地震では断層長が10〜15キロメートルで食い違い量が40〜50センチメートルというのが、一般的なイメージです。これを延長していくと、M2の地震は断層面の長さが100〜150メートル、食い違いの量は4〜5ミリメートル程度ということになります。】


 地震が発生し、断層に沿って破断が伝わる速さは2・5〜3キロメートル/秒とされており、たとえばM7の地震で断層長が30キロメートルの場合、断層の中央から地震が始まったとしても、少なくとも5秒間にわたり破断進行端から地震波が発振されることになる。

 このような場合、地震計には破断進行端から次々と「P波」「S波」が押し寄せるはずであり、観測される地震波が図4のようにきれいに「P波」と「S波」に識別できるとは到底思えない。しかし、現実に計測される地震波は、図4のようなものである。

 この疑問を地震学者に質問したいが、あまりに初歩的でちゆうちよしている。ひょっとすると、地震学者もこの矛盾に気がついているが、現実の地震波形が局部的な震源からの波を示している以上、いまさら変更できないというジレンマに陥っているのかもしれない。
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以上が山本氏のコラムですが、図―4に関しては、「地下核実験」と「自然地震」のP波が同じような波形になることから、「硬くて脆い岩石に、本当に核爆発に相当するような歪エネルギーが蓄積されるのであろうか。」という疑問が出されています。

石本博士ならば、粘弾性体である地殻に二百年、三百年に亘る歪が蓄積されるはずが無い、と一蹴されるのではないでしょうか。気象庁が発表しているCMT解析というものも、「断層説ありき」という先入観から出発している一つの解析手法であり、物理現象とは無関係の解析;・・・とコメントされるような気がします。

註:CMT解について

気象庁の解説には次のようにあります。

【CMTとは、セントロイド・モーメント・テンソル(Centroid Moment Tensor)の略で、観測された地震波形を最もよく説明する地震の位置(セントロイド)、規模(モーメント・マグニチュード)、及び発震機構(メカニズム)を同時に求める解析法です。セントロイドとは、最もすべり量が大きかった場所を指していると考えることができます。 】


http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/mech/kaisetu/cmt_kaisetu.htmlより

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2008-08-06(Wed)
四象限型と象限型の誤解?
 地震爆発説に批判的な方々(一人かも知れないが)の次のようなコメントを見ていると、四象限型と象限型について何か誤解があるのではないかという印象を受けますので、説明しておきます。私の理解が間違っていたら、管理者(ansin@ailab7.com) までお知らせください。

★爆発と断層では、おなじ四象限型の押し引き分布にはなりません。

★CLVDをいくら足し合わせても、4象限型はできない。

★押し引きを見ているだけでも、4象限型であることはまごうことのない事実だから。

 四象限型分布というのは、地表面に現れる初動の押し引き分布のことであり、以下のようなものであります。


 これを押し円錐から説明したのが次の図です。震源が浅く、押し円錐の軸が水平の場合には、震源模型を震源付近で水平切断すると、地表で四象限型に近い分布が現れることが理解できると思います。


 一方象限形分布というのは、震源に仮定した小球面上での分布形式のことで、次の図のBのようなもののことです。


CLVDというのは一つの押し円錐のようなものですから、C図に示すように複数の円錐がB図のE〜D間に並んだと考えれば象限型になることはうなずけると思います。

 「押し引きを見ているだけでも4象限型になることはまごうこともない事実」というのはどのような意味か分かりませんが、地表に現れる初動の押し引き分布は4象限型ばかりではありません。関東大震災で地上に現れた地盤の昇降即ち押し引き分布は変形した双曲線型であり、押し円錐の軸が南東上がりに傾斜していたことを推定させるものです。こうした確実な観測事実である地上の押し引き分布を説明できるモデルが重要であることを石本博士は強調しています。博士のように地震現象を解明しようと真剣に努力され、記述を残された地震学者は少ないですから、このセミナーでは頻繁に紹介しています。


 そのほかにも楕円型分布になる場合などがありますから、地上の押し引き分布は4象限型になるとは限りません。震源球の上で解釈するとすべてB図の象限型で表すことができるという解釈のようですが、石本博士はそう表示できるとしても、それは最初から「断層地震説ありき」で考えたもので、物理的な意味が無いと考えておられたようです。

 ニューオフィス48に紹介したように笠原慶一先生は「深発地震などの場合、むしろB図のような分布の方が適当しているものが少くありません。どうして、ある地震の場合はAになり別の地震ではBになるのか判りませんが、近い将来にぜひはっきりさせたいものです。」とコメントしておられます。

 私はC図に示すような連鎖震源という考え方を導入すればB図のような象限型の説明ができるので、地震現象というものは、点震源か複数震源かは別として、原則として爆発(押し)と爆縮(引き)によってできる押し円錐によって現象の説明が可能であると考えているわけです。4000ガルを超えるような衝撃が爆発以外の、歪開放とか、弾性反撥などのメカニズムで生じるとはとても考えることができません。

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2008-08-06(Wed)
2chの議論には誤解がある
 2chで地震爆発説を批判する方の論理が正しいと思われ、同調する方があると困りますので、紹介して反論を述べておきます。地震爆発説への批判には、誤解があり先人の研究を正しく理解していない論理展開であることがお分かりになると思います。1の説とは地震爆発論の事を指しています。

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15 :2008/07/11(金) 09:53:01

 地震の大まかな原因として、昔は諸説があったように記憶している。

・地下に空洞があって、そこで落盤が起こるため。

・地下でガス爆発が起こるのが原因。

・火山活動に伴ってマグマが移動し、地震が起こる。(噴火するかどうかは別問題)

・応力によって岩石が壊れ、割れて相互に滑る、断層面に沿って滑る、など。

1 の説は2番目のヤツだね。どうして否定されたのか Web を調べてもわからなかった。 お教え願います。

16 2008/07/11(金) 19:17:50
>>15

ダブルカップル を理解すればOK。

以下、防災科研の強振動の基礎。

http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/gk/publication/1/I-4.3.1.html

Webの情報には 怪しいページに行くことが多々あるので、

先ずは 宇津先生の地震学 第3版 を手にされることを強く勧めます。

17 :2008/07/11(金) 20:37:43
これに関しては以前の「新地震学」で議論があった。
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164:M7.74(神奈川県):2008/03/02(日) 16:12:45.97

以前(といっても数年前)も書いたのですが、久々にこのスレを見かけたので再び。
>>162
「地震爆発説」は初動発震機構解に表される、地震波の押し引き分布の観測事実に反すると思われますが、これについてはどう説明されますか?
165 :別の愛知県:2008/03/02(日) 19:34:13.04
セミナー[1115]
http://www.ailab7.com/log/eqlog1111-1130.html
の説明で納得していますが、詳しいことはセミナー管理者にお問い合わせてください。
166:M7.74(catv?):2008/03/02(日) 22:57:40.93

>>164
新地震学とは関係ないが、高木聖氏が初動発震機構を注意深く解析して
プレート歪みが地震の原因ではないと書いている古い論文があるが、
これをどう否定するのか聞きたい。
http://www.mri-jma.go.jp/Publish/Papers/DATA/VOL_23/23_001.pdf
167 :M7.74(catv?):2008/03/02(日) 23:07:03.39
こっちの方がより詳しいな。
http://www.mri-jma.go.jp/Publish/Papers/DATA/VOL_24/24_331.pdf

169:166(catv?):2008/03/08(土) 18:13:20.16

166,167についての回答をいただけないようですね。結構真剣に聞いているのですが残念。
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回答が出ていないようだが、16氏は優秀な頭脳の持ち主なんだろうから、教科書を読め・・・じゃなくて是非自分の言葉で説明してほしい。

18 :同定不能さん:2008/07/11(金) 20:59:40
ダブルカップルは爆発型の震源とは根本的に異なる
これで十分だろーが

19 :同定不能さん:2008/07/11(金) 22:35:31
>>17
この人の説は誰も信じていない。なぜなら、観測事実を説明できないから。爆発震源では四象限型の押し引き分布はできないです。これは物理的な帰結です。

20:15の質問者:2008/07/12(土) 12:29:56
>>16
ありがとうございました。
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 観測事実を説明できないとか、爆発震源では四象限型の押し引き分布は説明できない・・・という論理は[1475]をごらんいただければ破綻していることがわかります。20で書き込んだ人が本当に理解して感謝の辞を述べているのであれば、大きな誤解をしたままで納得したことになります。

 それにしても、防災科学研究所強振動の基礎にある次の解説は先人の研究を無視または誤解したもので、地震の初学者を誤導するものです。

【地震波のP波は、押し波で始まる場合と引き波で始まる場合の両方がある。しかも、地震ごとにどちらかに決まっているのではなく、同じ地震に対して、押し波の観測点と引き波の観測点があらわれる。ここで、押し波は震源から観測点に向かう方向の振動で、地表では上向きの変位となる。引き波はその逆である。

 図4.3.1-1に、P波初動の押し引き分布の一例を示す。●が押し、○が引きの観測点である。震央の位置は+印で示されている。この図から、押し引きの分布はでたらめではなく、きれいに4象限に分かれていることがわかる。押しと引きの領域を分ける直線を「節線」という。2本の節線の交点が震央の位置である。

 かつては、地下でマグマが爆発して地震となるという考えがあった。もしこれが正しければ、震源からはあらゆる方向にまず押し波が出て行くことになる。従って、全観測点で初動は押し波となるはずである。逆に、地下の空洞がつぶれて地震になるのならば、全観測点で引きにならなければならない。実際の押し引き分布からは、このような単純な震源像は排除される。】

図4.3.1-1・・・とは押し引き分布の図のことであります。

1477
2008-08-07(Thu)
山本先生の当然の疑問
 2chの「新地震学」サイトの中で山本寛先生の著作に対して次のような批判がなされています。

「水素核融合の本(山本先生の本)の中に出てくるあの図は、あの本で一番、著者の無知さを露呈していた部分ですね。断層と地震計までの距離は、一体どれだけだと考えているのかが抜けているお粗末な図を持ち出したあの議論。」

 とありますが、震源付近で4000ガルを越える加速度を記録した地震計をはじめとして付近にはたくさんの地震計があったはずであります。名大の山中先生の解析では断層が40km×15kmになるということですから、地図中に概略を示してみると次の図のようになります。


 断層地震説ならば、震源付近の地震計には当然のことながら破壊開始点から放出される地震波と、破壊の終点および破壊進行中の断面から放出される地震波が重畳されて記録されるはずです。したがって山本先生が、【図4のようにきれいに「P波」と「S波」に識別できるとは到底思えない。】と述べられるのは至極当然の疑問であります。

 なぜ著者の無知さを露呈したといえるのか、全く理解に苦しみます。

 なぜ地震記録が点震源から発射される地震波形のように見えるのか、なぜ断層の他の部分から発射される地震波が記録されないのか、重畳されて記録されているのならば、なぜ山本先生が述べられるようにきれいに識別できるのか・・・などなど教えて欲しいものです。

 また、「押し引くぐらいしか議論をしていなかった、点震源でよかった時代と、観測される波と、理論的に計算した波との比較から、すべり分布を推定するようになった面震源を考える現在の時代を錯誤している。」

 ともありますが、面震源を考えているはずなのに、なぜ気象庁からは依然として一つの震源が発表されるのでしょうか。地震波形を見ても、単震源かダブルショックという複数震源からの発射波の様相は示してはいるものの、面震源を推定させる波形にはなっていないのは何故でしょうか。

 石本博士が喝破したように、「先ず最初に断層地震説ありき」という姿勢が現在の地震学のベースに存在している・・・のではないでしょうか。

 この際、いったん断層地震説に拘泥することをやめて、誰しもが明白に理解できる事実、即ち地表面に現れる初動の押し引き分布をもう一度良く分析し、それをうまく説明できるモデルを見つけることから再出発すべきであると思います。震源球という目に見えない仮想球面上の分布即ち象限型分布を盲信することは地震現象の真相を見抜くことにはならないと思います。

 一旦否定された爆発論ではなく、爆発と爆縮という二段階の現象からでも地上に現れる押し引き分布は説明できるという新しい「地震爆発説」を石田仮説は提起しているのです。

 さらに、「新地震学」への批判に熱心な方から、次のようなピントのずれた批判が出されています。
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56:震源の右側、左側で観測していると、押し引きは方向によってちがうでしょう。

では、手前側にいるひとは、どういう押し引きを観測します?

2次元で考えている限りダメですよ。

57:言い換えると、押し引きの説明をするときに使うA図では中心軸は常に左右の方向に向いています。

これが上下、手前奥になるときは、どういう押し引き分布になりますか。
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 これは全く理解に苦しむピントのずれた議論ですが、石本博士の押し円錐理論を理解していない人の記述です。A図が上下(円錐軸が垂直)になったときが直下型地震を意味し、爆発の規模が小さくても大きな振動被害を受けることになるのです。地震学会のFAQにある直下型地震の説明がナンセンスであることはすでにセミナー[531]で解説しています。

 地震学で一番重要なことである地震現象の真相把握ができていないから、直下型地震の議論が曖昧なものになってしまうことを[274]で紹介しました。

 「地震断層説」を盲信する方々は、押し円錐の軸が40度程度傾斜した場合に、関東大震災のような地盤の昇降になるという[1475]の解説も理解しようとされないのかもしれません。

山本先生や私に対して失礼な書き込みをするのが、院生なのか教官なのか知りませんが、こうした人間をたしなめる指導者もいないような無法地帯なのでしょうか、地震学会は・・・。

1478
2008-08-07(Thu)
ダブルカップル原理主義を捨てよう
 ダブルカップルが分かれば地震のことは全て分かる・・・というダブルカップル原理主義のような方がいるので困ります。小難しい地震教科書で学ぶと自然を見る洞察力が無くなって、ただ書いてあることを信じるだけになってしまうのでしょうか。

 何度も繰り返すのは嫌ですが、もう一度だけ石本博士の主張にしたがって説明します。

 震源においてシングルカップルにしろダブルカップルにしろ、象限型を仮定して解析を進めるということは、断層が地震の原因であると考えているのと同じことです。つまり、結論たるべき主張が已に前提の中に含まれて居る事から、論理上からすれば正常な証明とはならないということです。

 地上に現れる初動の押し引き分布だけが地震現象の唯一の証拠ですから、【爆発・爆縮】によって発生する押し円錐理論がこの証拠と矛盾するものでなければ、断層地震説は破綻することになるというのが石本博士の主張から導かれるものです。

 また、石本博士がなくなられてから、爆発ならばダイナマイトの爆発のようなものだという短絡的な発想から、全方位が押し領域になるはずだという論理の元に、押し円錐理論が廃れてしまったと推測することができます。

 震源球の上で象限型のように分布するのは、震源が連鎖的に並んだ場合を考えれば説明ができるわけですから、つまり【爆発・爆縮】でも説明できるわけですから、もう一度断層地震説から離れて、震源で何が起こっているのかを考え直すべきであると思います。

 ダブルカップル原理主義を捨てて、4000ガルもの衝撃が発生する理由を素直に考えてみましょうと訴えているわけです。

1479
2008-08-08(Fri)
反論の検討
山本氏のコラムを酷評した方が次のような反論を載せています。考える材料を提出していただいたので、取り上げてみたいと思います。
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山本氏のコラムに関しまして、断層のすべり分布を決定するために、観測波形と理論計算との比較をしています。

例えば、NGY地震学ノート No.9 において、先の岩手・宮城内陸地震の観測波形と理論波形が 以下のページで掲載されています。
http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/sanchu/Seismo_Note/2008/080614a.jpg

では、P波やS波が、比較的明瞭に見える理由を説明するとなると、

他の賢い方の、より正確で的を得た説明があろうかと思いますが、かじった経験のある私は、このように説明させて頂きます。

・P波やS波の伝播速度が、震源(音源)の移動速度に相当する断層の破壊速度より遅い。

→したがって、破壊が最初に発生した、直達する波が最初に到達できる。

・ノイズよりもP波が、P波よりもS波が振幅が大きい。

→結果として伝わった波形の立ち上がりが比較的明瞭に把握できる。

・近地(震源から近いところでの観測)では、どうしても

反射した波や回折した波など、様々な構造による波が入り込んでグチャグチャになる。

→お互い打ち消しあう効果が出てくるために、後ろが振幅の大きいノイズとなる。

こういう理解でよろしいのではないでしょうか?

地震破断先端の地震波が観測されていなければ、こんなすべりのコンター図なんて描けません。

なお、4000ガルという話が 一人歩きしているようですが、観測さえる地震波形について考えてみますと、単純には

(観測される地震波)= (発生する震源)×(伝播経路・地質構造)×(地震計の特性)

という最低3つの相乗効果があることを考える必要があるでしょう。

タライ、洗面器、茶碗にそれぞれ水を張り、ある同じ大きさのボールをある同じ高さで落とすと、水の振動はどうなるでしょうか?また、水の層の厚さを変えてみるとどうでしょう?

震源が同じでも、構造の違いでも 振幅なんて変わるものなんですよ。

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以上が反論の内容ですが、正しいのかどうか検討してみます。

考える材料1:

前半の内容は、断層の破壊速度のほうが地震波の伝播速度よりも速いから、地震破断先端の地震波が観測されている・・・だから、すべり面が確定できる、という論旨かと思います。とすると図の地震計2に最初に到達する地震波はB点からの可能性もありますし、断層面のどこから射出された波かは判定できないことになります。これでは地震波から震源位置を決定する作業はできないのではないでしょうか。



考える材料2:

「地震破断先端の地震波が観測されていなければ、こんなすべりのコンター図なんて描けません。」というのは、まさに論理のすり替えがあります。【断層説ありき】から出発しているための思考だと思います。

 最初に断層説を仮定しておいて、その仮定に不都合な事象は「ありえない」として無視・排除するのは、公平で正当な判断ではありません。納得できない場合には最初の仮定にまで戻って検討するのが科学的な姿勢だと思います。

すべりコンターについてですが、アスペリティーのすべりコンター([1448]の質問4参照)に関しても言えることですが、なぜ中心部ですべりが最大になるのか、イメージができなくて理解に苦しむところです。ダブルカップル論でもそうですが、それらしい言葉は並んでいますが、その内容をイメージすることができません。


NGY地震学ノート No.9より加工させていただきました


「理解するという行為」には、言語系とイメージ系の二つの形式があって、腑に落ちて納得するのは圧倒的にイメージ系での分かり方だそうです。右脳系(イメージ系)左脳系(言語系)といっても良いでしょう。イメージ系とは頭の中に具体的なイメージを描いて理解する方式なので、深く納得できるのだそうです。通説地震学の説明は言語系の説明が多く、イメージを描いて理解することができないものが多いように思います。これが腑に落ちて納得できない理由でしょう。

すべり量のコンターという図は、爆発と爆縮という化学反応現象の強度分布であると解釈するのが一番無理のない解釈のように思いますが、いかがでしょうか。

考える材料3:

後半部に書いてあることはよく理解できませんが、「4000ガルの衝撃」というのは厳然たる事実ですから、今後の地震研究や震災対策に活かしていかなければなりません。一人歩きしているとして軽視することはできないと思います。

「震源が同じでも、構造の違いでも 振幅なんて変わるものなんですよ。」というのは、4000ガルに拘る必要はない・・・という意見ならば賛同はできません。

1480
相当深刻な問題ではないのか
2008-08-10(Sun)
「未知なる地底高熱生物圏」という書籍の中(51ページ)でトーマス・ゴールド博士は次のように述べています。

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 科学上の新説は新しいからといって正しいとはかぎらない。まして、旧来からの説が古いというだけでまちがっているわけでもない。真理を追求しようとすれば、つねに批評する姿勢を忘れずにことにあたらなければならないのは明らかである。しかし、旧来からの説がふたつあれば、新説と同じく、「同等に」批判的に検討しなければならない。定説はあたりまえのように受け入れられ、それと相反する新しい証拠が無視されたり、定説にうまく合わないといって報告さえされないとすると、当のその科学には深刻な問題である。これはいくつかの分野ではまったくよくある話である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 以上が博士の主張です。ところで、地震学ではどうでしょうか。深刻な問題に直面しているのではないでしょうか。

 旧来からあるのは断層地震説ともう一つは爆発によってマグマが貫入することが地震の原因であるとするフンボルト・石本博士らの説であります。現在では断層地震説が定説となっていて、マグマ貫入説を補完した石田仮説が新説の立場にあります。

 定説では、中越沖地震を起こしたとされる断層の傾斜が東南上がりだったのか西北上がりだったのか、見解がまとまらないままになっているそうです。昨年8月の報道に次のような記事があります。

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 中越沖地震の断層、傾斜方向で見解まとまらず…政府調査委

 政府の地震調査委員会は8日、新潟県中越沖地震を起こした海底断層について、研究者によって海から陸に向けて上がっているとする見解と、逆に下がっているという見解の両方があり、同委員会としては統一見解をまとめきれなかったと、発表した。

 ただし、海底断層が陸に向けて上がっているとすると、同委員会がマグニチュード8の地震を起こす可能性があると評価した長岡平野西縁断層帯とつながっている恐れもあるとする東京大学の研究成果も、併せて公表。政府が今後、断層周辺の地下構造などを詳細に調べることも明らかにした。

 海底断層をめぐっては、地震発生直後、同委員会は「陸に向かって下がる傾斜である」と評価した。だが、地震に関する観測記録が増えるにつれて、一部の研究機関から「陸に向かって上がる傾斜である」という見解も発表されたため、同委員会はこの日、2度目の議論を行った。しかし、「決め手となるデータがなかった」(阿部勝征委員長)という。

(2007年8月8日21時29分 読売新聞)

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 この内容は、定説と相反する新しい証拠ではないのでしょうか。無視されてはいないのかもしれませんが、報告されても定説にうまく合わない原因を検討しなければ、深刻さは同じことでしょう。 2000ガルとか4000ガルという衝撃が作用したことを真剣に受け止めて、地震の原因としてどちらの説が妥当なものであるのかを検討する動きが無いということならば、地震科学としては深刻な状況にあると云うことになるでしょう。

 石油や石炭の化石燃料説を否定しているゴールド博士は「石油地質学では、地底でその流体が生まれたというたくさんの妥当な証拠はいまだに軽視され、その筋の科学雑誌には掲載されもしない。」と延べ、牢固とした石油地質学の深刻さを訴えておられます。

 40年以上も断層地震説に基づいて研究してきたのに、断層の向きさえも決定できないという現実を見て、定説が何かおかしいと地震学者は考えないのでしょうか。

1481
定説は交替する宿命を持つ
2008-08-10(Sun)
石炭は大量に繁茂した植物からできた化石燃料であるというのが定説ですが、これを否定する証拠があるそうです。地層を縦に貫いて存在する石炭層の話など興味深い話をゴールド博士は述べています。

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もうひとつの堆積したものではない注目すべき鉱床がカナダのニューブランズウィック州にある。そこではアルバータイト(アルバート炭)とよばれる石炭が、水平に幾重にも重なった堆積層を縦につらぬく裂け目につまっているのである。この鉱山は十九世紀に開かれたが、垂直に近い炭層から採炭するのはむずかしいために操業は小規膜にとどまっている。生物起源説ではこうした特異な環境でどうして石炭が産出するのかを説明するのは、ほとんど不可能である。

 さらに、石炭層のなかに炭酸塩岩石の塊がみつかり、それらをこわすと、なかに木のふくまれている化石があるのは珍しいことではない。その色は黒というよりもっとうすく、石炭に変化する兆しをまったく示していない。同じように、ウクライナのドネツ盆地の石炭層では、その下の炭酸塩岩石から石炭層をはさんで上の炭酸塩岩石までのびている化石化した木の幹が発見されることがある。これらの化石が炭化しているのは石炭層内にある部分だけで、炭酸塩岩石内ではそうではない。

 現在石炭の見つかっている場所では、湿地堆積物がつもったために石炭が生成されたと解釈しようとしても、矛盾だらけであることを多くの研究者が認めている。たとえば、H・R・ワンラスは一部の石炭を産出する地域で、石炭層の中を水平にほんの数センチの幅で、数百キロにもわたってとぎれることなく粘上層がはさまっていることを、その解釈ではどうしても解けなかった。そのため、「そこではこうした粘土がどこから来たのかについて、どの説もまったくばかばかしくなってしまうほど根拠がない」と見解を述べている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上の内容を図にしてみました。


地層を貫いて存在する木の化石があることは、すでにセミナー[1099]でも紹介しましたが、石炭層を貫いて存在し、しかも石炭層の内部でだけ石炭化しているという事実からは多くの情報が得られると思います。

石炭が植物の堆積したものばかりではないことは左の図から明らかでしよう。はじめは流体的性質を持つ石炭の源物質がマグマ貫入と同じメカニズムで亀裂間に貫入して、やがて固化したものが石炭になったのだと考えられます。また、地層は地軸変動による大洪水によって湖沼や海が短期間で埋め尽くされて形成されるのではないでしょうか。大洪水で運ばれてきた木の幹は垂直のまま地層に閉じ込められることもありえます。その後、化石化する過程で、石炭の源物質である流体が貫入して、流体に浸潤された部分だけが炭化したと考えることは十分に納得できるものです。

定説は新しい事実の発見があるたびに、常に再考され一番納得できる説と交替していくというのが宿命でしょう。交替に抵抗することは学問の進歩を妨げることになります。
   

 考古学の上では通説で説明できないものをオーパーツ(Out Of Place ARTifactS、場違いな加工品)と呼んで、無視されてしまいますが、これは考古学だけのことではないでしょう。

 多くの分野で通説では説明できない証拠がたくさんあって、それを説明し得る学説が出て来るたびに通説はどんどん交替していきます。しかし、ゴールド博士の無機説に従って石油や天然ガスが発見されているのに、学説としての交替には時間がかかるもののようです。

1482
大陸奥地でも起きる深発地震
2008-08-12(Tue)
断層地震説は現在の定説です。しかし、深発地震に関してはウィキペディアにある以下のような説明では無理があるように思います。

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深発地震はプレート沈み込み帯の地下深くで発生し、それ以外の場所では海嶺下やホットスポット周辺も含めてまったく発生しない。そのため、世界で深発地震が発生する場所は限られている。

プレートの収束境界で一方のプレートが沈み込むと、周囲のマントルに比べて低い温度を保ち剛体としての性質をもったまま深さ670kmまで沈み込む。しかしそこは遷移層と下部マントルの境界であり、これ以深では周囲のマントル密度が急激に増加するため、プレートがそれ以深に沈むことが難しくなり、スタグナントスラブが形成され、プレートが反ることになる。このためプレートに応力が加わり、プレートがそれに耐えられなくなったときに地震が発生する。

プレートの重みでプレートが引きちぎられるような力が加わると正断層地震に、スタグナントスラブにプレートが押し付けられるような力が加わると逆断層地震になる。深さ670km付近では後者が、それより浅い場所(200〜500km程度)では前者が多い。

丸山茂徳らは、オリビンがスピネルに相転移する際に、岩石の弱い部分に変形が集中し発生すると主張している。ただし深発地震の震源は深さ500〜670kmに広く分布する一方で、オリビンからスピネルへの相転移は深さ650〜670kmでしか起こらず、この説は疑問視されている。

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以上が深発地震のメカニズムに関する解説です。地震の分布図については山賀先生のサイトを参照してください。

「プレートが沈み込むときに、剛体としての性質をもったまま深さ670kmまで沈み込む。」という現象が本当に起こっているとは思えません。高温下で剛体であることは難しいのではないでしょうか。相転移するという説は地殻内部と同じメカニズム、即ち剛体内での断層地震がこのような深部で起こることは無いということから考え出された説のような気がします。

正断層とか逆断層が発生する理屈を、粘弾性体に適用するのは無理があります。マントル物質に関しては石本博士の「粘弾性物質は極めて緩慢に作用する力に対しては、恰も粘性ある液体の如く、急激に変化する力に対しては所謂弾性体の性質を現すのである」というのが正しい理解だと思います。

またプレートの沈み込み帯以外では深発地震は全く発生しないと解説してありますが、これは間違いです。海溝付近に発生するのが大部分ですが、大陸内部のタジク共和国およびビルマ北部域でも発生しています。少なくともパミール高原付近の地下での深発地震については、明らかにプレートの潜り込みが原因であるという解釈で説明することは不可能です。


パミール高原一帯で何故深発地震が発生するのか、謎を秘めたままですが、定説の断層地震説では説明が不可能です。

地震爆発論では、この一帯の地殻(固体部分)の下で熔融マグマ或いは粘弾性体としてのマントル物質が地球深部へ降下している場所であるという解釈になります。大陸地殻の下部においてもマントルの対流は起きているはずですから、この部分が唯一下降の流れが生じている場所であろうと推定されます。そのマントル滞留の内部で解離ガスが発生し、地震を起こしているのであると解釈します。詳細は「深発地震はなぜ海溝にしか起こらないのか」を参照してください。タイトルでは海溝でしか起こらないとなっていて、タジク共和国などでの例外的事例には言及していませんが、もちろん、タジクの深発地震も同じメカニズムで起こっています。



内陸部ではタジクの一部にだけ見られる深発地震の現象ですが、かつてヒマラヤが海底にあったころの残骸的なマントル対流構造が残っているのかもしれません。

1483
地震発生原因に関する論理矛盾
2008-08-13(Wed)
セミナー[1393]では地震の発生原因について弾性反発説と歪限界・破壊説では論理に矛盾があることを以下のように述べました。

反撥説と破壊説はまったく論理が違うのですが、どちらも流通(?)しているような曖昧なのが定説なのです。[1256]に示した図に纏めてある様に、反撥現象なら破壊の前の弾性が働いている段階の現象ですし、破壊ならば物質の降伏点での現象ですから、弾性反撥とは無関係のはずです。」

このあたりの矛盾を解決しないまま、公教育で地震の発生原因を教えているようです。


http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/jishin3.htmlより

紹介した図は、中学理科教育のサイトから要約したものですが、内陸でのプレート内部の地震は岩盤が破壊することが原因であると説明しているのに対して、プレート境界での地震は破壊ではなく、弾性反撥であるとしています。

弾性反撥ならば岩盤が破壊する前のフックの法則が有効な段階であり、破壊現象とは無関係です。

地震が本当に内陸と海域で異なるでしょうか、論理が違う内容を中学生に教えるのは思考力を妨げるのではないでしょうか。

もちろん、内陸で起きる地震と海域で起きる地震とでメカニズムに違いがある筈がありません。地震爆発説ではどちらも水が関係する化学反応が原因であるとしています。

1484
地震発生原因に関する論理矛盾(2)
2008-08-16(Sat)
 「地震はなぜ起こるのか」という質問に明確に答えている研究機関はなかなか見当りません。検索してみると福岡管区気象台のサイトにこの質問に対する回答がありましたので、紹介します。
http://www.fukuoka-jma.go.jp/fukuoka/jikazan/hanashi/naze.html

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地震はなぜ起こるのか

 一言で言うならば地震は「圧力によって岩盤が破壊されること」ということになります。 これでは分かりにくいですね。もう少し丁寧に説明しましょう。


福岡管区気象台のサイトより

 地震の発生原因を知るには、まず地球の構造から知る必要があります。左図に簡単なイメージをのせました。 地球の半径は約6400km。その内部の構造は中心部分から順番に「核」・「マントル」・「地殻」という構成になっています。

 この一番外側(つまり地球表面)にある「地殻」は、パズルのピースのように地球全体を隙間なく覆っています。

 この一つ一つのパズルのピースのことを「プレート」と呼び、その厚さは10数kmから数10km程度です。

 地球の表面を見ると、地下からプレートが湧き上がってくる領域や、逆に地下へ向かってプレートが沈み込む領域があるのがわかります。

 プレートは、この湧き上がってくる所から沈み込む所に向かって動いています。

 その向きはプレートごとに別々で、スピードは1年間に数cmと非常にゆっくりしたものです。

 プレートごとに違う方向に動いているため、隣り合うプレートとの間にはゆっくりではありますが確実に摩擦や衝突が生まれます。

 摩擦や衝突は圧力を生じさせ、プレート内に歪(ひずみ)が蓄積されます。

 歪(ひずみ)は時間と共に徐々に蓄積されているため、いつかその岩盤の限界を越え、破壊が生じます。これが地震です。

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 以上が福岡管区気象台の地震原因論です。地方気象台が上部機関と違うものを載せているとは思えませんので、中央官庁である気象庁の地震観もこれと同じものだろうと思います。上記の見解を要約すると、以下のようになります。

 「1年間に数cmと非常にゆっくりした動きから生じる摩擦や衝突が、プレート内に圧力を生じさせ、歪(ひずみ)が蓄積され、いつかその岩盤の限界を越え、破壊が生じます。これが地震です。」

 この説明ではプレートは剛体であるから、歪の蓄積が限界を超えて破壊する、つまり[1483]の破壊現象としてのプレート内部の地震を説明していることになります。弾性反撥の説明はないですから、レイドの地震反撥説とは異なる地震原因説であります。

 石本博士は高温である岩盤はゆっくりとした動きに対しては流体的な挙動をするはずだから、歪が蓄積されることは無いと考えておられました。私もそうだろうと思います。たとえ剛体であるとしても、破壊するときの歪は微小なもの(10のマイナス4乗)であり、跳ね上げるような現象は期待できません。

 定説(通説)の地震原因論はどうも曖昧で、破壊現象なのか、弾性反撥現象なのかよく分かりません。高温の岩盤には歪の蓄積とか弾性反発力とかは期待できないのではないでしょうか。

 又、プレートテクトニクス理論はセミナー[1386]で紹介したように、完全に破綻していることがNCGTグループの研究からはっきりとしています。

 海洋底の地殻は冷却され難いですから陸上部よりも薄くなっていますが、海底にはヒマラヤの山塊に見られるような古い地層も存在しますし、花崗岩のような大陸性の岩石も存在していて、海洋拡大説は破綻しています。グランドキャニオンは20億年ほどの間に3回の沈没・浮上を繰り返しています。

 以下の文章は地質学の体制[establishments]に関するChoi氏のコメントですが、地震学も同じようなものです。([1384]の抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 現在の地質学の体制[establishments]は、事実として据えられている単純で、自明の、増大しているデータを受け入れることを欲しません。彼らは、彼らのモデルの趣旨に適合する場合にのみ、そのデータを使い、そうでなければ無視してしまいます。

 もちろん、この体制は、データの詳細にまで立ち入って探求する事を必要としていません。彼らは、そのデータが他のありうる解釈やモデルに合うかどうか調べるために吟味してみようとは決してしません。ただ一つの、一般に認められた雄大な地球物理学的モデルは、彼らにとっては、それで十分なのです。というのは、彼らは、それが、疑念をはさむ余地のない証明されたものであると信じているからです。(略)

 科学ではなく、傲慢さの中に深く食い込んだほとんど宗教のレベルといった信念の世界に生きているやに思えます。

 彼らは、私たちとの科学的討論につきあうことよりも、むしろ沈黙を守っていたいのです。おそらく、もし彼らが本気で非プレートモデルを採用するとなれば、彼らの研究の蓄積が枯渇(壊死と翻訳すべきか)してしまうであろうことを恐れるか、あるいは彼らの仕事や彼らの将来が心配になってしまうため、彼らは(プレート説に)代わるべき案を考えたり、知りたがろうとは決してしません。私はたまに返事をもらいますが、その返事はいつも「プレート説は、種々問題はあるけれども、私はまだ信じているのです」というものです。

私たちは、偏見にとらわれず、考えを修正したり、あるいは、将来われわれ自身の考えの全てを放棄さえする心構えを持たねばなりません。私たちが現在もっている地球についての理解はまだたいへん狭く、初歩的です。たとえ人類の科学技術が宇宙船を他の惑星へ送り込むことを可能にしている現在でさえ、私たちは、マントルや核の真の実体はいうまでもなく、海洋の玄武岩質層の下、海底下たった数kmに何か横たわっているかも知りません。

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 以上はNCGTのChoi氏の言葉です。プレートテクトニクスはChoi氏が属する地質学だけでなく、地震学でも採用されているものですが、明らかに破綻しているのですから、新しい学説を探さなければいけません。

 新しい学説の必要性に関して、上田誠也先生は、「プレートテクトニクスに対する反論を検討する」という論文のなかで以下のように述べておられます。([1182]から抜粋)

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 「プレート批判の立場の方々の見解には、しばしば、現今、プレートテクトニクスがあたかも真理そのもののように中学や高校の教料書にもとりあげられ、地学者は軽薄にも盲目的に自らの研究テーマがプレートテクトニクス原理で説明できるものとしている傾向すらあり、憂慮すべきであるという指摘がある。主観の差といってしまえばそれまでだが私にはそうは思えない。

 わが国は、地団研の先生方のニラミが利いたせいか、ソ連と共に、プレートテクトニクス受入れが最もおくれている地学先進国の代表である。地球物理の方はそうではないが、地質の方は全体としては明らかにそのようだ。だから、現在のパラダイムの中では、日本の地質学は先進国のそれとはいえない面が多い。プレート批判の先生方の憂慮は、紀憂どころか、私としては逆の方が憂慮すべきことのように思われる。

 中学・高校でもプレートテクトニクスをうんと教えるとよい。世界の学問はどんどん進んでいて、プレートテクトニクスの限界は日に日に明らかになりつつあり、次への改革・脱皮がおこる日は遠くないだろう。しかし、それはプレートテクトニクスからの発展なのであって、いつまでもプレートテクトニクスは仮説か、理論か。仮説なら教えない方がいいかもなどといっていては遂にどうにもならないことになる。若い人々には、その時代の学問の生きた姿を伝えたいものである。」

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以上が上田先生のコメントの抜粋です。私は新しいパラダイムは決してプレートテクトニクスからの発展ではないと思っています。プレートテクトニクスは根本的に間違っていた・・・という反省から生まれるものだと思っています。
 

1485
地震発生原因に関する論理矛盾(3)
2008-08-16(Sat)
研究者の方(北大教授)が書いておられる「地震発生論」がありました。

http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~geodesy/why_eq.htm

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地震はなぜおこるか?

北海道大学・理学研究科・地球惑星科学専攻・宇宙測地学研究室 日置(へき) 幸介

(略) 地震(地震動)の直接の原因が断層での岩盤のずれであることは多くの方の知る事実ですが、そもそも断層で岩盤はなぜずれるのでしょうか。爪が伸びるくらいのゆっくりとしたプレートどうしの動きが、何十年何百年の歳月をかけてプレート境界の近くにひずみエネルギーを溜めてゆきます。それが断層ずれによって一気に解放されるのが地震です。プレートを動かす力は地球内部に熱対流を起こす力、つまり場所による温度の違いからくる浮力です。さらに突き詰めると、熱対流は地球が熱い自分自身の深部を冷やそうとする過程の一つです。プレート運動や地殻ひずみを地震の「犯罪グループ」とすると、黒幕は地球自身の「熱」といえそうです。(略)

体積で地球の九割ちかくを占めるマントルは、硬くて柔らかい「粘弾性体」です。一見固体ですが熱くなると粘性流体としての性質が強くなり、押し続けるとじわじわ変形します。中が熱く外が冷たい地球のマントル中ではゆっくりした熱対流が生じます。対流するマントルと冷たい外の空間のはざまにできる熱境界層がプレート(リソスフェア)で、冷えて流動性を失った厚さ百キロ程の硬い岩盤がその実体です。対流している熱いマントルは柔らかいのでそこにはひずみが溜まりません。地震が地球の比較的浅いところでしか起こらないのはそのためです。

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以上が抜粋記事です。

 「何十年何百年の歳月をかけてプレート境界の近くにひずみエネルギーを溜めてゆき、それが断層ずれによって一気に解放されるのが地震です。」とありますが、ひずみエネルギーの開放というのが、破壊によって開放されるのなら、弾性反撥説ではなく破壊による歪開放説ということになります。

 「プレートを動かす力は地球内部に熱対流を起こす力、つまり場所による温度の違いからくる浮力です。」とありますが、これはプレートが自重によって沈んでいくという能動的移動論とは違った解釈で、現在の解釈とは違っているように思います。

この解釈はセミナー[1448]の質問1にコメントしておきましたが、東北大学100周年記念セミナーでの長谷川教授の講演にもありました。プレートが移動するのはマントルが対流するので、それによって引きずられてプレートが動くという旧理論による説明のはずです。旧理論ではプレートを動かす力は生じないというのが結論であります。

 「対流している熱いマントルは柔らかいのでそこにはひずみが溜まりません。地震が地球の比較的浅いところでしか起こらないのはそのためです。」とありますが、それでは深発地震が起きる理由を説明することができません。

 プレートテクトニクスや地震発生理論は研究者によって解釈に違いがあり、かなり曖昧いな主張が流通しているように感じます。

1486
宇津先生の地震学から学ぶ
2008-08-18(Mon)
それでは、宇津徳治著「地震学・第3版」には地震発生のメカニズムがどのように解説してあるのかを、見てみます。第10章から抜粋して紹介します。
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10章 地震発生のメカニズム
10.1 P波初動による発震機構

 A.P波の押し引き分布
 P波初動の向きは押し、引きのいずれかである。上下動成分では押しは上向き、引きは下向きになる。押しをC(compression)、引きをD(dilatation)で表すことが多い。(後略)

押し、引きの地域が節線nodalline)という直交する2本の直線によって四つの象限に分かれることは、静岡県中部地震(1917)(図10.1)に続いて、三次地震(1919)、島原地震(1922)などでも指摘されたが、関東地震(1923)の初動は特異な分布を示した。(管理者注:[1475]に示すように円錐機構で説明すれば特異な分布とは言えない。)


 地震波の初動分布は震源においてどのような力が働いたか、あるいはどのような運動が起こったかを反映しているので、発震機構を研究する上で重要な資料となる。地表での節線が象限型でなくとも、震源においてP波初動が押しの空間と引きの空間が二つの直交する平面(節面という)で境されている場合を象限型(quadrant type)という。丹後地震(1927)、北伊豆地震(1930)は地表の初動分布が象限型で、しかも地震断層と節線がほとんど一致し、押し引きの向きも断層の運動の方向と矛盾しなかった。(管理者注:地表の初動分布が象限型つまり4象限型分布になることは、円錐型機構から説明可能であることを石本博士は述べている。)
 その後、いくつかの深発地震の節線が楕円あるいは双曲線になるという報告が棚橋(1931)などからなされ、円錐型(cone type)の発震動構が唱えられるようになった。地下におけるマグマ貫入の衝撃を地震の原因と考えていた石本(1929,32)は円錐型を支持した。しかし、本多(1931〜34)は象限型に基づきS波を含めて研究を進め、現在では、深発地震を含めてほとんどの地震は象限型のK型という発震機構で表せると考えられている。

 初動分布の解釈について長年にわたり議論が続いたのは、日本のように密な観測網をもつ地域でも、多くの地震が象限型、円錐型のいずれを仮定しても節線が引けるからである(図10.2)。地殻内の地震では次節に述べるように、地殻構造の影響で節線は複雑な形となる。深発地震では節線の形は単純であるが、日本が狭く細長いため任意性が大きい。全世界の観測所のデータを用いても観測所の分布が偏っているため必ずしも唯一の解が得られない。節線の位置、形を決めるのは少数の観測所のデータに支配されることが多いが、観測所からのP波初動方向の報告にはある率(数〜10%)で誤りが含まれている。SN比の悪い記象では初動をとり違えることもあるし、ある期間、電磁式地震計の結線を間違えて押し引きが逆の報告をしていた観測所もあった。

 B.押し引きの観測から節面を求めること
 発震機構が象限型の場合について初動の押し引きの分布から節面を求めること、すなわち断層面解(fault plane solution、メカニズム解)を得ることを考える。後述するように、節面のうちの一つが断層面になるが、どちらが断層面かは初動分布からはわからない。なお、断層面でない節面は補助面と呼ばれる。断層の相対運動を表すスリップベクトルは補助面に垂直となる。

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以上が抜粋したものです。

現在では、深発地震を含めてほとんどの地震は象限型のK型という発震機構で表せると考えられている。とありますが、象限型のK型というのがダブルカップルと呼ばれているものです。

このダブルカップルに関しては、長い議論の末に結論が得られたのであるという見解がどの教科書にも記されています。しかし、[1474]の石本博士の見解にあるように、シングルカップル(J型)にしろ、ダブルカップル(K型)にしろ、震源でそのような力を想定することは断層が地震の原因であるという認識(大前提)の下に考えられた仮説であり、ダブルカップルの発信機構で(押し引き分布が)たとえ表示できたとしても、結論たるべき主張が已に前提の中に含まれて居る事から、論理上からすれば正常な証明とはならないということになります。円錐型発震機構でも、表示できるのであれば、ダブルカップルは正当性を失います。ダブルカップル原理主義のような立場は円錐機構の妥当性を吟味することを否定してしまう態度であり、地震現象を正しく認識する作業を拒否することになります。

私が主張したいことは、円錐機構の妥当性を今一度吟味する必用性があること、そしてフンボルト以来の地震爆発説を今一度見直すべきであるということです。地震爆発説が否定された根拠(爆発ならば全方位が押しになる・・・というような)に正当性が無いことが判明したのならば、当然その時点まで戻って再検討するべきではないでしょうか。

なお、宇津先生の解説でも、「発震機構が象限型の場合について初動の押し引きの分布から節面を求めること」と云うように条件付になっていて、円錐機構が間違っているとは考えておられなかったのではないのかと推察するのですが、どうなのでしょうか。

1487
宇津先生の地震学から学ぶ(2)
2008-08-24(Sun)
宇津先生の「地震学・第3版」第一章地震概説に地震の原因と予知という節あります。概論ですが、地震の原因について述べてありますので紹介します。

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1.8 地震の原因と予知

 地震の原因については古代ギリシャ時代から様々な空想がなされてきた。陰陽、あるいは地水風火のバランス等は論外としても、雷と類似の現象(地中雷)、地下の火山爆発、可燃性物質(石炭、石油、硫黄など)の爆発的燃焼、地下空洞の陥落、地下水が熱せられて生じた蒸気圧による岩石の破壊、マグマの急激な運動による衝撃等、多くの説があった。大地震のとき現れる地震断層も、地震の原因なのか結果なのか、議論の分かれるところであった。断層を地震の原因とする考えは濃尾地震(1891)を調べた小藤(1893)が述べている。

 San Frandsco地震(1906)のとき、San Andreas断層の北の部分が300km以上にわたり最大6.4mに及ぶ水平ずれを起こした。Reid(1910)は地震前後の測量データにより地殻変動を分析し弾性反発説(elastic rebound theory)をたてた。何らかの広域的な力が原因で地殻が弾性的に徐々にひずんでゆく。ひずみがある限度を越えると、地殻は断層面(fault plane)に沿って破壊し、断層面の両側の地殻はひずみを解消する方向に急激にずれ動き、これが地震波を発生するというものである。この説は欧米では素直に受け入れられたが、日本では地震はそのように単純なものではないという考えが支配的であった。

 P波は縦波であるから、その初動(initial motion)は震源から遠ざかる向き、すなわち押し(push、compression)か、震源に近づく向き、すなわち引き(pull、dilatation)のいずれかである。志田(1917)は静岡県中部地震(1917)などについて、各地の地震計の記録から押し引きの地理的分布を調べ、著しい規則性を発見した。P波やS波の初動方向や振幅の地理的分布は、震源域にどのような力が働いて、あるいはどのような運動が起こって地震波が発生したかを解く手がかりになる。この問題、すなわち発震機構(earthquake mechanism)の研究は、1930年代から本多をはじめ日本の研究者によって盛んに行われた。その結果によれば、ほとんどの地震は震源において直交する二つの面で押し引きの領域が分かれ、この面の一つが断層面に当たると考えてよいことがわかってきた。1960年代後半以降、実体波、表面波の解析から、主要な地震については、断層面の位置と大きさ、断層の相対的変位の方向と量、地震発生に伴う応力の低下量など、いわゆる断層パラメーター(fault parameters)が決められるようになり、Reid以来の断層説が定着している。

 断層を動かす力がどこから由来するかは、長らくなぞであったが、現在ではプレートテクトニクス(plate tectonics)により代表される全地球的な大規模な運動によるという考えが広く受け入れられている。ブレートテクトニクスは1967年ころにその大綱がまとまり、地球科学に大きな影響をもたらしたが、この説の成立には、世界各地の特徴的な地下構造やサイスミシティ、発震機構など地震学上の研究成果が大きな役割を演じている。(後略)

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 以上が地震の原因に関する記述です。これを読むと断層を動かす力はプレートが移動する力であると(定説では)考えられているようですが、“プレートは自重によってマントル内部へと沈み込む”ということですから、水平方向の力が生まれるとは思えません。そもそも海洋底拡大説が破綻している([1386]参照)のですから、プレート論を用いて「全地球的な大規模な運動が地震の原動力」とすることは不可能です。

さらに細かく言えば、

「プレートが押す力を「何らかの広域的力」と考え、この力によって生じる歪が限度を超えると、断層面に沿って破壊し、断層面の両側の地殻はひずみを解消する方向に急激にずれ動く。」

という現象が地震であるならば、石本先生が指摘([1243])されるように、図Aのように変形するはずであります。


実際には図Bのように変形し、断層を離れると変動量はゼロになりますから、この現象は震源付近だけで発生する力学現象のはずです(石本博士)。だからダブルカップルが震源で働いているのだという解釈なのでしょうが、ダブルカップルがなぜ震源で発生するのか、その説明は定説では全くなされておりません。二つの偶力を想定すれば・・・という仮定から話が進んでいるだけであります。また、「何らかの広域的力」というものを認めるとしても、そこからダブルカップルが発生する理屈は存在しません。

震源付近だけに地表の傷跡ができる理由は爆発(Explosion)と爆縮(Implosion)という二つの化学反応が起こっているという説明が一番矛盾なく説明できるもので、ダブルカップルの力学を説明しえる物理的解釈だと考えています。

1488
宇津先生の地震学から学ぶ(3)
2008-08-26(Tue)
地震の原因はプレートテクトニクスに代表される全地球的な大規模な運動であるというのが定説の説くところですが、それではプレートはなぜ動くのか、そのメカニズムについて宇津先生の地震学からさらに学んでみます。ただし、プレート論の矛盾を確認するためなのですが・・・。

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10.8 プレートテクトニクスと地震の原因

 A.プレートテクトニクス

 地殻とその下のマントル最上部から或るリソスフェアは地球の表面を覆っているが、プレートテクトニクスという学説はこのリソスフェアがプレート(plate)と称するいくつかの部分に分かれ(図10.18)、各部分はその内部では大きく変形をすることなく水平方向に運動していることを主張する。


必然的に二つのブレートの境界では、二つのプレートの収束、あるいは発散、あるいは擦れ違いが起こる。収束境界では密度の大きいプレート(大洋プレート)が密度の小さいプレート(大陸プレート)の下に沈込み(subduction)を起こす。その場所が島弧-海溝系である。大陸プレート同志の収束のため沈込みができず衝突して摺曲山脈ができる境界もある。発散境界ではその隙間をマントルの岩が上昇してきて埋め、冷えて新しいブレートが生産される。この場所が中央海嶺-リフト系である。また二つのプレートが水平に擦れ違う境界がトランスフォーム断層(transfom fault)である。この3種類の境界はそれぞれ特徴的な地形と上部マントルの構造、地震活動と発震機構が見られる。(後略)

 E.プレート運動の原動力

 地球は深い部分ほど高温であるから不安定な状態にあり、もし岩石が流動できるならば熱対流が起こるはずである。氷期後の隆起などにみられるように地球の岩石は非常にゆっくりではあるが流動できる程度の粘性を有している。プレートの動きも地球内部の対流的運動の一環であるといえよう。

 プレートに働く力として次のようなものが考えられてきた。プレートはほぼ等速運動をしていると考えられるので、これらの力がつりあっていることになる。(1)島弧で沈込んだプレートは、周囲のマントルよりも低温で密度が大きいから、沈み込もうとする力(負の浮力)が働き、地表のプレートを引っぱる。(2)中央海嶺では、下からわき上がってきた岩により地形が盛り上がり、両側のプレートを押し広げようとする。(3)ブレートの下のマントルが対流の一環として動いており、プレート下面を粘性でひきずる。以上のほか、プレートの運動に抵抗する力が沈み込んだ部分や隣のプレートと擦れ違う部分、衝突する部分に働く。

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 以上が抜粋したものです。

「大陸プレート同志の収束のため沈込みができず衝突して摺曲山脈ができる境界もある。」ということですが、これがヒマラヤ山脈や、丹沢山系を形成した原因ということになるのでしょう。しかし、“自重で沈むプレート”にそのような力があるとはとても思えません。

 また、「地球の岩石は非常にゆっくりではあるが流動できる程度の粘性を有している。」とありますが、そうであるのなら石本先生が述べられるように200年〜300年といった長期間に亘って歪を蓄積することは不可能になります。外力が作用しても、流動して変形してしまうわけですから歪が蓄積されない・・・これは力学の常識です。粘弾性を持つ岩石が剛体的挙動を示すのは爆発的な現象つまり短周期の振動に限定して起きる挙動に過ぎないという解釈のほうが合理的であります。

 プレートに働く力として解説している三つのケースについては、マントルの粘性によって“引きずる力”程度ではプレートを動かすことはできない・・・というのが最近の解釈ではないのでしょうか。とすればプレートの移動が地震の原因であるとする定説は破綻することになります。

 地震学は「弾性反撥説」やプレート論を捨てて、新しい考え方・・・といってもフンボルトや石本博士の地震観に立ち戻るだけですが・・・つまり、「地震爆発説」を探求する時期を迎えていると思います。

 登山の鉄則として道を間違えたなら、間違えた地点まで戻れ・・・戻る勇気を持て・・・という言葉を聞いたことがあります。

1489
2008-08-30 (Sat)
川崎教授の解説に思う
中越沖地震が起きたとき([1267]参照)に、NHKのテレビでこの地震は「太平洋プレートがユーラシアプレートを押しているために生じる歪が開放されて起きた地震 」であると解説された、京都大学防災研究所地震予知研究センター長の川崎一朗教授が「Liverty」という雑誌のインタビューに興味深い話をしておられますので、抜粋して紹介します。
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地震  なぜ起こるのか――研究が進むほど深まる謎

 「謎が一つ解けると二つの謎が出てくる」

 6、7月にかけて日本国内では、東北地方でマグニチュード6を超える地震が相次いだ。震災に対する国民の関心が高まるなか、専門家やマスコミの間では「日本は地震活動期に入った」とも言われており、気の抜けない日々が続きそうだ。
 ◇
 「一つの謎が解ければ、二つの謎が出てくるという状態で、実は地震のことがますます分からなくなっている」

 地震大国日本は地震研究で世界をリードしているが、その最前線に立つ京都大学防災研究所地震予知研究センター長の川崎一朗教授は、地震学の現状は研究が進めば進むほど謎が深まるばかりなのだと話す。
 地震は、地球の表面を覆う厚さ約100キロメートルの岩盤(プレート)が動くことで発生するが、陸地のプレートのズレ(活断層)が動いて起こる「内陸型」と、海底で沈み込んで歪んだプレートの反動で起こる「海溝型」の大きく二種類がある。

Liberty 2008.10 No.163より


 1995年の阪神・淡路大震災以降、日本の地震学は、地震発生のプロセスや地殻構造の分析、シミュレーション技術の進歩などによって目覚しい進歩を遂げてきたというが、「ますます分からなくなっている」とはどういうことなのか。

「なぜ地震が起こらないのか?」
 例えば、海底のプレートは年間約10センチメートルの速度で沈み込んでいるが、それによって生じる歪みに見合うだけの地震が起きていない。日本列島の下に沈み込む太平洋プレートの動きから計算すると、三陸沖から宮城沖でマグニチュード8クラスの巨大地震が30〜40年間隔で繰り返し発生してもおかしくないのに、実際には100年に1回ぐらいしか起きてない。
 一般の人は『なぜ地震が起こるのか?』と疑問に思うわけですが、私たち研究者にとっては、『なぜ地震が起こらないのかこということが疑問なのです』と川崎教授は明かす。
 「これだけの地震が起きる」という科学的な分析結果に比べ、実際に発生する地震の回数は少なく、まさに“収支”のバランスが合わない。それは、目に見えない現象として、いつの間にかエネルギーがどこかへ放出されてしまっているとしか思えないそうだ。
 川崎教授は苦笑いしながら言う。「我々が想像している以上に自然は複雑です。科学が進歩すればするほど、その向こう側に分からないことが、どんどん増えていく感じなんです」
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 以上が抜粋記事です。
「海底のプレートは年間約10センチメートルの速度で沈み込んでいるが、それによって生じる歪みに見合うだけの地震が起きていない」・・・というのは、プレートが潜り込んでいるという先入観念が正しいものではないことを意味しているのではないでしょうか。セミナー「1386]で述べたように、プレート論が破綻していること知れば、そのような先入観念に縛られることはありません。「いつ起こってもおかしくない東海地震」という強迫じみた報道もこの先入観念がベースにあるといっていいでしょう。地震はプレートが潜り込むことによって起きるのではなく、地下の水が熱と圧力の変化によって解離現象を起こし、水素と酸素の混合ガスを発生させ、それが爆発と爆縮という化学反応を引き起こして発生するのだという新地震学の内容を知れば、“収支”のバランスが合わないというような発想は無用になります。
 川崎教授は次のようにも語っています。
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医者がMRIによる人体の断面画像を手にして、ますます人体の複雑さに悩まされるようになったように、地震も膨大なデータがあっても分からないことがたくさんあります。ましてや、現時点では予知をできるような段階にはありません。たとえどんなに科学が進歩しても、予測に含まれる不確定さをゼロにすることはできません。最後の最後は、不確実さを含む情報の受け手側が、自己の責任においてどう判断するかにかかっているのです。
現在の地震研究ではシミュレーションが幅を利かせていますが、シミュレーションはあくまでも仮想現実。自然はもっと複雑なものです。少し飛躍があるかもしれませんが、そういう意味では、「自然そのものを研究する学問を学ぶこと」 が重要だと思います。
地震はプレートが動くことによって発生しますが、そのプレートを動かすのが、マントル対流です。この対流は、地球ができたときに内部に取り込まれたウランやトリウムという放射性元素が崩壊する熱によって動くと考えられています。現在の科学技術では、地下10数キロメートルよりも深く掘ることができないので、人類はマントルに達したことがなくその詳細は分かっていません。きわめて地震が発生しやすい状況にあるにもかかわらず、それに見合うだけの地震は発生しておらず、地震学はその理由を解明できていないのが現状です。
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大変謙虚な姿勢で自然そのものを研究する学問の重要性を説いておられ、私もその通りだと思います。コンピューター・シミュレーションで地震現象を把握することは計算手法の中にすでに答えが入っているわけですから、それで地震現象を解明するのには無理があります。

 その意味では昭和初期に活躍された、小川琢治、石本巳四雄両博士らは地震現象をよく観察しておられたように思います。コンピューターの発達と地震計の設置によって、いくらでも論文が書けるようになったので、“地震学者が地震に付随する現象を知ろうとしなくなった”というゴールド博士の警鐘([425])もあります。

 なお、プレートを動かすマントル対流について「この対流は地球ができたときに内部に取り込まれたウランやトリウムという放射性元素が崩壊する熱によって動くと考えられています。」という解説がありますが、「マントル対流にはプレートを動かす力は無い」というのが最近の説であり、冷却による自重の増加がテーブルクロスが落下するように後続のプレートを引きずる・・・という「能動的プレート移動論」というものと矛盾していると思います。[1448]で述べた長谷川先生の講演にも同じような説明がありますが、地震学者の解説には最新の知見を反映した統一見解がないようで奇異に感じます。

1490
2008-08-31 (Sun)
山がプレートの下に潜ることがあるのか?
もう6年も前のことですが、「市民グループが構築する新しい地球観」([205])と題してアルビン・トフラー氏の言を引用して次のように述べたことがあります。

『学問の世界も、民主主義という後ろ盾があって、学会という公式機関の決定は質の悪いものになっていくでしょう。学会が認めてくれるまで待っていたら、人生が終わってしまいます。もっと迅速に、もっと思慮深く、もっと複雑な決定をするには、民間セクターと市民社会グループとの連携が起きるようになると思います・・・。と読み替えてみたら、なるほどなーと思えました。坂柳先生も学会誌に投稿したが、断られたと、こぼしておられましたが、私も同じ経験をしてきました。多様化の時代、スピードの時代には、学会という公式機関の決定は陳腐なものになっていく危うさを感じます。市民グループの生き生きとした活動のなかから新しい芽が伸びていくのでしょう。専門家たちに任せないで、新しい地震観、新しい地球観を構築していきたいものです。』

 ANS観測網やこのセミナーは、「市民グループの生き生きとした活動のなかから新しい芽が伸びていく」ことを願って科学ボランティアとしてスタートしました。
 現在、ANS観測網が必ずしも期待したようなものに成長していない面はあります。その一方で、「山がプレートの下に潜る」という以下のような新聞報道を見ると、星野先生の危惧された「辻褄の合わない話」([210]およびライブラリー28参照)が横行するようになったのを感じます。
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M7級の茨城県沖地震、海底の「山」が震源を形成
2008年8月29日(金)9時14分配信 読売新聞


 約20年おきに起きているマグニチュード(M)7級の茨城県沖地震を引き起こす震源域の形成に、海底下にある富士山級の大きな山がかかわっていることが東京大地震研究所などの分析でわかった。
 プレート(板状の岩盤)境界で起こる海溝型の巨大地震の発生メカニズムの解明につながる成果で、29日の米科学誌サイエンスに掲載される。

 海溝型地震は、陸側のプレートとその下に沈み込む海側のプレートの境界にひずみが蓄積して起きる。これまで境界面にある山そのものがひずみを蓄積する震源域と考えられていた。同研究所の望月公廣助教(海域地震学)らは、この仮説を確かめるため、1982年7月と2008年5月の同じ震源域で起きた茨城県沖地震に着目、地震波の伝わり方などから海底下の構造を探った。
 その結果、海側のプレート上に直径約50キロ、高さ約3000メートルの山を見つけたが、地震の震源域とは一致せず、南東にずれていた。山すその直下に微小地震が多発していることも判明した。山が海側のプレートとともに沈み込む際、陸側のプレートにひっかかり、その山すそ直下や山周辺のプレートにひずみが蓄積し、震源域になるとみられた。
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 以上が新聞報道ですが、20年おきに地震が起きているというのは「収支が合わない」という川崎教授の見解([1489])とは違いがあるようです。最初に述べた「辻褄の合わない話」を列挙してみましょう。

・ プレートというものが剛体であるのならば、なぜその上にある3000メートルの山が相手の剛体の下部に潜り込めるのでしょうか。山が引っかかって潜り込んだり、押し込めたりとても押し切れないはずですが、どのような力がそれを成し遂げるのでしょうか。
・ プレートが沈み込んだり、【移動】する原因はプレートが海嶺で誕生した後、海溝付近まで【移動】する間に冷却されて密度が大きくなり、周囲のマントルよりも密度が高くなって、自重によって沈み込むことが原因であるとされています。沈み込んだプレートがテーブルの下部からテーブルクロスを引き摺り下ろすような仕組みで後に続く水平部のプレートを引っ張っているのが【移動】のメカニズムであるとされています。これが「能動的移動」という最新の説明であると解説書にはあります。そうならば、海底の山はテーブルクロスの上の大きな花瓶に相当するはずですが、なぜ引っかかってしまわないのか不思議です。
・ テーブルクロスの上にある小物がクロスの滑り込むときに一緒に潜り込めなくて、“カンナくず”のように貯まるのが付加体「ほころび始めたプレートテクトニクス」参照)という解釈になっています。伊豆半島はこうしたメカニズムで南方から運ばれてきたものだという解釈のはずですが、なぜ海底にある山は海溝に止め置かれないで、潜ってしまうのでしょうか。
 このように、辻褄の合わない話が立派な科学雑誌に載る時代をどう見ればよいのか、星野教授の感想は「自然科学の学説は、自然現象を正しく予測し、その学説が技術に応用されたとき、万人の認める法則となる、といわれている。こうしてみると、予報も出来ず、産業にも応用されないプレート説を、公理とみる風潮は、その国の科学知識の水準を表現しているのかもしれない。」というものです。
 あるいは、解説文で私が述べたように「大陸移動を信じない学者はいっぱいいます。それなのに教科書にまでプレート説をのせるのはなぜでしょうか。戦後社会はアメリカ一辺倒で、学問までがアメリカ合衆国ジャパン州になってしまった」と見なければいけないのでしょうか。
 それでもなお、気を取り直して「市民グループの生き生きとした活動のなかから新しい芽が伸びていく」ことを信じたいと思います。

注:星野教授の「地球膨張論」を支持しているわけではありませんので、間違わないでください。

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