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1491
2008-09-02 (Tue)
山が地下に潜るという寓話
[1448]の長谷川教授の認識にもあるのですが、「海山」がプレートの下部に潜り込むという現象があるとはとても思えません。ましてや、それが繰り返し起こっているM7クラスの地震の原因であるという説に関しては、宇田先生が述べておられるように、

「思いつきが十分な吟味もされずに既成事実となり、検証するデータもほとんどないのに、いつしか定説となる。そして気がつくと、どこまでが観測事実もしくは調査結果で、どこからが単なるアイディアなのか区別ができなくなっている。単純明快な概念が非科学的で醜悪な寓話と化してしまう・・・・。」

という単なるアイディアにしか過ぎず、醜悪な寓話ではないのかという気がします。アメリカの科学雑誌「サイエンス」に載ったという論文(新聞報道は[1490]参照)を抜粋して紹介します。
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/koho/press/kaizan2008/#_1
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海山に起因する弱いプレート間カップリングと繰り返し発生するM7級地震との関係
発表者: 望月 公廣 (東京大学地震研究所 助教)


2.発表内容
 東北日本列島下には、東側から太平洋プレートが約8.5 cm/年の速さで日本海溝沿いに沈み込んでおり(図1A)、これに伴うプレート境界型地震の活動も活発である。三陸沖で発生した大地震に関する最近の研究結果によると、30〜40年の間隔で決まった震源域が繰り返し大地震を発生してきたということがわかった。このように繰り返し震源域となるプレート境界面上の領域はアスペリティと呼ばれ、通常はプレート境界が強く固着しており、ある時に急激に固着が破壊することによって地震波を出すと考えられている場所である。アスペリティの形成要因の一つとして考えられているのが、沈み込んだ海底地形の凹凸である。
 海底地形の盛り上がりが沈み込んだ場合、その周囲と比較してプレート境界面に大きな摩擦力が働くと考えられ、固着が強くなりアスペリティを形成すると推測される。海底地形の凹凸の最も代表的なものに、海山があげられる。これまでに海山の沈み込みについて行われてきた研究では、大地震と海山の世界的な分布の比較、あるいは物理的シミュレーションによって、海底からの比高〜3000 mの海山が沈み込むことによって、M7級の大地震が発生する可能性が予測されていた。


図 1 茨城県沖の地震活動と構造調査測線
東京大学地震研究所広報サイト
より



(A);日本海溝沿いの海底地形。太平洋プレートは〜8.5 cm/年で西南西方向に日本列島下に沈み込んでいる。北緯38度より南には、海山が多く分布する。点線で囲まれた領域を(B)に示す。 (B)茨城県沖の地震活動と構造調査測線。白十字線は2004年、オレンジ線は2005年、マジェンタ(管理人注:赤紫色の線のこと)は海洋開発機構による構造調査測線を(太線は屈折法調査、細線は反射法調査)、六角形は海底地震計の設置位置を表す。丸は1996〜2005年の気象庁一元化震源によるM3以上の地震の震央を示す。黄色の星印は、1982年に発生したM7.0の地震の震央を、緑で囲まれた領域はその地震の余震域(瑞k源域)を表す。その北側の青で囲まれた領域は、地震活動が非活発な領域を示す。黒矢印は海山が沈み込んだために形成されたと考えられる、沈み込み方向に並んだ海底地形の溝を示す。黒点線は日本海溝軸を表し、海溝軸に接して約20万年前に沈み込みを始めた第一鹿島海山がある。
日本海溝より海側の太平洋プレートの海底地形を見ると、北緯38°より南側の福島県から千葉県にかけての沖合では多数の海山が分布している(図1A)。北緯35.8°には約20万年前に沈み込みを開始した第一鹿島海山が海溝軸に接しているとともに、海溝軸より陸側の海底地形には海山の分布に対応するように、すでにいくつかの海山が沈み込んだ形跡も見ることができる(図1B:黒矢印)。第一鹿島海山の沈み込みの延長上に当たる茨城県沖では、約20年の決まった間隔でM7級の大地震が繰り返し発生してきた。(略)
この繰り返し地震のアスペリティは、海底地形の特徴等から考えて、沈み込んでいる海山によるものであると予想されていた。(略)
 2004年構造調査で得られた地殻構造と、過去に海洋研究開発機構によって行われた構造調査の結果とを合わせて解釈することによって、震源域周辺におけるプレート境界の形状を求めた。その結果、比高〜3000 m、基底部直径〜50 kmを持つ、ほぼ富士山の規模に相当する海山が海面より深さ〜10 kmに沈み込んでいることを明らかにした。
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 以上が後半部を抜粋した記事です。黒矢印付近に見られる海底の溝が「海山がすでに潜り込んだ形跡の溝」というのはどのような根拠から言えるものでしょうか。剛体であるはずのプレート境界で、3000メートルクラスの山が潜り込み、痕跡として溝を残した・・・というのは寓話的アイディアに過ぎないと思います。
ではなぜ、海底地盤の構造調査を行うと地盤深くに富士山クラスの“山の痕跡に見える形状が現れるのか”という疑問を解いて見ます。
 この付近の海底には確かに図1−Aに見られるように、いくつかの海山が海底面上に存在しています。この海山はどのようにして誕生したのかを推定すると、ある時期その下部にマグマの上昇していた時期があり、そのときに海底火山としての爆発によって形成されたもの、或いは海底爆発とまでは行かなくとも、地震現象としての爆発によって盛り上がったものであることが推定できます。地上部でも伊豆半島や阿蘇山、霧島連峰周辺にそのような形状が見られます。近年の現象では伊東沖の手石海丘などが相当するでしょう。
これらは浅い場所での地震活動(爆発現象)のために地表に変形現象を起こしてしまったものですが、地震がこれより深い場所で起きた場合には、地表まで変形を起こすことなく、地殻内部の地質が爆発力の影響を受け止めて吸収してしまうことが推定されます。
この場合爆発力によって生じる圧密された地盤の構造が、振動法による探査において一見して“山の存在”を想像させるような構造を地盤内部に構築するのではないか
と推定されます。しかしそれは“一見して山のように目える”だけであって、決して海底にあった海山がプレート運動によって地盤の内部に潜り込んでいる姿ではないと思います。
 海底にある海山は手石海丘のように地震現象によってできた現実の山ですが、アスペリティーを形成する原因と考えられるという・・・地盤内部の山は“見かけ上の山”であるというのが私の見解であります。

 繰り返しますが、海洋底拡大説は完全に破綻しています。この事からも分かりますが、プレート説から誘導される諸々のアイディアは寓話に過ぎないものであると思います。

1492
2008-09-03 (Wed)
「ひずみ計」観測に意味があるか

 9月1日(防災の日)の中日新聞夕刊に「ひずみ計」の更新が進まないというニュースが載っていました。その中に、
「東海地震は、陸側と海側のプレート(岩盤)の境界が一気にずれ動いて起きる。その直前に、プレートがゆっくり動き出す「プレスリップ(前兆滑り)」をひずみ計データの異変によって検知できれば、予知は可能とされる。」
という記事があります。

 プレート論が破綻していることは何度も述べてきましたが、一歩譲って海側と陸側のプレートがずれ動くことが地震だと認めたとしても、その前兆的な動きを歪計が検出するとは思えません。なぜなら、プレートは“固体ではあるけれども、長期的に見れば粘性体としての流動・変形をすることもある”と解釈されているものだからです。長期にわたって作用する力によって生じる歪は変形することによって応力を解消してしまいますから、変位・変形は生じても応力を伴う歪(応力と歪はフックの法則に従う密接な関係がある)は存在しない可能性が高いはずです。完全に剛体ならば別ですが、粘弾性体であるというプレートが長期に亘って歪を蓄積することはありません

では「ひずみ計」では何を計測していることになるのでしょうか。構造的な詳細は知りませんが解説を見る限りでは、油を密封した容器の変形を測っているようですから、歪によって生じる油面の上下とは、粘弾性体の変形を測っているだけで、応力の増減を伴った本当の意味での「歪」ではない可能性があります。ひずみ計の設置場所が地下数百メートルということですから、このあたりでは岩盤は完全な剛体であると考えられているのかもしれませんが、そうであるとすれば、そのあたりの物性からプレート全体の動きを推定することに無理があります。プレートの本体部分はもっと深部にあり、高温・高圧のはずです。



 したがって、粘弾性的性格が強いはずですから、プレートの表面部分の歪を計測しても意味が無いことになってしまいます。どのように解釈しても、地下数百メートルでの「ひずみ計」による計測から、プレートと称する地盤のプレスリップ(その存在を認めるとしても)を把握することはできないでしょう。
そのような「ひずみ計」を設置するために、一ヶ所で億単位の費用が掛かるという話には驚いてしまいます。しかも耐用年数が10〜20年ということですから、ずいぶん税金の無駄遣いをやっているなぁと思います。

活断層調査もそうですが、この「ひずみ計」観測というものも、見直していただきたいと思うのであります。測地的観測では予兆監視は不可能であることは40年以上の経験から一般大衆にも周知の事実ではないのでしょうか。

1493
2008-09-04 (Thu)
中国で、「高感度水素地震感知器」の開発に成功か
moncyatというHNの方から次のようなメールを事務局宛にいただきました。

「 何年も前から石田先生のサイトに強い興味をもち、時々読ませて頂いています。今日、下記のように“人民網日本語版”で中国の科学者が地中の水素濃度を非常に高いレベルで探知できる装置を発明したという記事を見つけました。石田先生の長年のご研究に何か関連するところはあるのではないのでしょうか?」

以下はその記事です。
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中国の科学者が「地震感知器」を発明

 5.12四川大地震発生後、世界的な難題として地震の予知に再び注目が集まるようになった。

 ガスセンサーの開発で有名な中国地質大学の王維煕・教授率いる研究チームがこのほど、「高感度水素地震感知器」の開発に成功。この地震感知器は国内のいくつかの地震台や地震ステーションで試用した後、国家地震局の専門家チームによる評価が行われ、応用・普及につなげていく考えだ。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。

 王教授は「この地震感知器の最大の特徴は水素の測定感度が現在常用されている装置の100万倍以上にあたる、1千億分の1にまで高まったことだ。水素が現在地震予知の中で最も感度の高い化学物質の1つであることは世界で公認されてる。このため、この装置は将来地震予知の分野で一定の効果を発揮する可能性を秘めている」と話す。

 地震発生の予報は依然として世界的な難題だ。地震の震度と時間を正確に予知するのは今のところ不可能だ。海外の地震学専門家は地殻下層部にある塑性岩石か蛇紋石が地殻上層部の亀裂に漏れ出すと地震が発生すると考えている。こういった滑りやすい蛇紋石は鉄とマグネシウムが豊富に含まれる鉱物が水に反応して生成するもので、この生成過程で水素が発生する。この層が一旦断裂すると、水素は断層の切れ目から漏れ出し、空気中の水素濃度が急増する。「地震発生10〜40日前に突然、水素濃度が増大し、最大で正常の数万倍に達する」と王教授は説明する。

 この装置を使えば、トランジスタを測定の必要な環境に置くだけで人員を配置する必要はなく、リモコンで窒素含量を測定でき、地震の予知・予報の運営コストを大幅に削減することができるという。(編集KA)  「人民網日本語版」 2008年09月02日

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以上がその記事です。地震に伴って水素が発生することは、日本でも名古屋大学の杉崎先生の研究、岐阜県吉城高校の研究などで報告がありますが([1265]参照)、記事にも「地殻下層部にある塑性岩石か蛇紋石が地殻上層部の亀裂に漏れ出すと地震が発生すると考えている。こういった滑りやすい蛇紋石は鉄とマグネシウムが豊富に含まれる鉱物が水に反応して生成するもので、この生成過程で水素が発生する。」とありますように、水が熱解離して発生するという認識ではないようです。

熱と圧力の変化によって発生する熱解離混合ガス(水素と酸素)の爆発が地震であり、その水素ガスを検知すれば「ひずみ計」観測網に比べてはるかに安価な装置で地震の予兆監視ができると思います。
中国でのこの研究は地震の原因に関しては石田地震科学研究所の見解と相違がありますが、高感度水素濃度計の開発によって水素と地震との関係が明瞭になれば地震学の大きな前進に繋がるものと期待されます。日本でも税金の無駄遣いは止めて、水素濃度による観測体制に切り替えていただきたいと思っております。

 ちなみに、何人かのセミナー読者からいただいた寄付金にて購入予定の水素濃度計ガスマンはすでに注文してありますが、輸入品のためまだ納品されておりません。日本でも燃料電池車の開発のために、安価な水素濃度計の開発が各社で行われておりますが、そのうちの一社に電話確認したところ、まだガスマンのような形で計測できる完成品には至らないようで、センサー部分の開発だけのようでした。
 早く地震予知センサーとしても利用できるように開発を急いでいただきたいと願っています。

 なお、中国では「国家地震局の専門家チームによる評価が行われ、応用・普及につなげていく考え」・・とありますが、日本の場合かつて「高木式磁力計」の観測網を「地震を検知する原理が不明である。原理が分からないものを扱うのは非科学的でる。」という屁理屈で葬り去った経緯があります。([1191]〜[1193]参照
くれぐれもそうした愚行を繰り返さないようにお願いしたいと思っています。

1494
2008-09-04 (Thu)
自由闊達の議論から始まる進歩・発展
 日本は世界第二の経済大国と言われており、いろんな面で先進国の一員だと思っている人が多いと思うのですが、「お上の言うこと、皆が正しいということを疑わない」という習性が根強いのではないか思うことが時々あります。かつて中国の国家地震局が海城地震の予知に成功した宏観観察という手法もそうですし、今回人民網が報じているように水素検知器を地震予知に応用する姿勢もそうですが、日本とは違う姿勢を感じます。
 大衆レベルでは中国でも同じかもしれませんが、日本は悪く言えば社会全体が自主判断を避け、指示を待っているかのように見えます。今聞いていたNHKの「昼どき日本列島」でアナウンサーが「割り箸」に関する先日の報道の「偏り」を注釈していましたが、そこにも「作られた情報を疑わない」姿勢があることを感じます。
 

先日、割り箸はエコ運動に反する無駄であり、年間何万軒分の家に相当する木材が浪費されているという説明を番組内で流したわけですが、そこには大いなる誤解があります。林業は間伐をしないと、良材を生産することができないわけで、間伐材を利用する方法として「割り箸」の文化が生まれたわけです。この割ばしを浪費と見、禁止するならば、間伐作業の経費が得られず、林業にも影響が及ぶわけです。エコ運動が環境を潰すという逆説が生まれます。環境問題にはまやかしが多いことは地球温暖化問題でも述べました。([1451][1452]参照)

地震学における牢固としたプレートテクトニクス擁護の姿勢、活断層盲信の姿勢は先進諸国の中で日本が一番強いのではないでしょうか。しかし、昭和初期にはこのような姿勢ではなく、小川博士、石本博士のような学者が活躍されていましたから「自分の頭で考えなくなった」のは戦後社会の特徴なのでしょうか。全て上流から流れてくるものを受けているだけ、おかしいと思っても周囲が変だと言わないからそのままでいいか・・・という空気があるように感じます。そんな社会では進歩を望めません。もっと自由闊達に意見交換するべきだと思います。このセミナーを読んでいる地震研究者もおられると思うのですが、この6年間それらしき人からのメールが一つも届いておりません。2chでは失礼な書き込みをする院生なのか教員なのかが居ますが、ここには何のメールも届きません。
 これが健全な社会だとはとても思えないのですが、地震学も「黒船」がやってこないと変革できないのでしょうか。残念なことです。

1495
2008-09-08 (Mon)
いつまでプレートテクトニクスに縛られるのでしょうか
 書店の店頭に話題となっている「プレートテクトニクスの拒絶と受容−戦後日本の地球科学史−」という本がありました。イデオロギーとは関係なく、プレートテクトニクスの破綻を主張している私としては大枚を叩いて購入する気にはなれなかったので、サイト検索をしてみました。すると、名古屋大学の鷺谷教授が以下のように「信奉者」の立場で書いておられましたので、抜粋して紹介します。

http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/~sagiya/Site/About%20Me.html

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近くの変動

 学会では書籍の販売が恒例ですが、東大出版会から最近出た「プレートテクトニクスの拒絶と受容ー戦後日本の地球科学史ー」(泊次郎著)が目に止まりました。泊さんと言えば、朝日新聞の科学記者として活躍され、私も何度かお世話になりましたが、数年前に東大の院に入られたと伺っていました。今回の本は東大における博士論文の内容です。ここに書かれているのは、1960年代に成立したプレートテクトニクスが日本の地球科学界に受け入れられる過程を分析したもので、地震学と地質学での対応の違いや、地団研が及ぼした影響などがまとめられており、この分野に身をおくものとして、非常に興味深く読みました(お薦めです)。

 私は地球物理の出身で、地質系の状況については疎かったのですが、自分の在学当時(学部時代)でも、東大の地学科ではプレートテクトニクスの講義がなかったということを始めて知りました。地球科学という興味で言えば、地学科への進学も十分あり得た訳ですが、あちらへ進学していたら自分自身の地球観が大きく異なるものになっていたかも知れない、と思うと、教育の責任の重大さを改めて痛感します。

 当時と比べれば現在は情報開示が進んでいますが、それでも、大学受験の際に各大学の教員や学問の流儀までを区別し、判断するのは殆ど不可能だと思います。地球科学においては、大学学部レベルの教育内容が必ずしも規格化されているとは言えず、教育内容を今一度真摯に検討することの必要性を改めて感じました。

 学会中には、地球惑星科学の将来について議論するシンポジウムも開かれましたが、どこの大学でも大学院の定員割れやポスドク問題などが噴出しています。環境や自然災害等の今日的課題に総合的な観点から対処できる人材を供給できるのは地球惑星科学をおいて他になく、また、未解明の問題を数多く抱えたこの分野は本来十分に魅力的であるはずなのですが、そうした魅力を社会や学生さん達にどうやってアピールしていくか、今一度じっくり考え、行動していかなければいけません。まさに正念場です。

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 教授はプレートテクトニクスを完全に受容されており、教育の責任の重大さを痛感されているようですが、全く逆の立場(プレート論否定)から私も教育の責任の重大さを痛感しております。

 また、高校教諭山賀進先生のサイトには目次に続いて以下の文章がありました。著者の意見か山賀氏の意見かはっきりしませんが、「信奉者」の間ではこの見解が一般的なのでしょう。私には、地球科学の研究に共産党だとか、地団研だとかのイデオロギーが絡んでくること事態が不思議な気がしてなりません。事実を積み上げてみればプレート論が成立しないことは、イデオロギーと無関係に分かることであります。

http://s-yamaga.web.infoseek.co.jp/dokusho/2008/platetectonicsnokyozetsu.htm

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 なぜ、日本の地質学界はプレートテクトニクスに対して、否定的な態度をとり続けたのか(とり続けることができたのか)。

 ひとつには、明治以後の日本の地質学が地域主義・記載主義・地史中心という態度、つまり、世界の中の日本、地球史の中の日本という視点が欠けていたという伝統がある。外国語の論文の引用が必要ない状態が長く続いたという。

 そしてそれと密接不可分なのが、地団研の存在であろう。一つの学説に対し団体の運動として、それを批判・拒絶してきた歴史。かつて(1980年代に)私がある人(物理)に、地団研を評して「遅れてきた民科」といったら、「違う、民科が破産したことを知らない人たちの集まりだ」といわれて納得したことがある。確かにルイセンコ論争などには興味がなかった(無視したかった?)人たちだろう。

 地質学界の民主化を求めていたはずなのに、40歳定年制を引いていたはずなのに、私が学生のころは既に、幹部(故井尻正二氏たち)への個人崇拝、またなし崩しの定年延長など、目を覆いたくなるような状況にあった。そしてそれらに無批判に加入する人たちがまだ多くいた。

 井尻氏は日本共産党の科学哲学部門のトップでもあったはずで、こんな教条的な人(スターリン批判もできない人)がトップでは共産党も大変だとも思った。

 既に当時のトップの多くは鬼籍に入った。だがその伝統は続いているようだ。つまり、過去の己(プレートテクトニクスに対する態度)を批判的に検討することなく、逆に歴史を改ざんしようとしている(反対したことなどない=組織で機関決定したことでないことは確かだろうが、有力幹部の意向を無視できない団体の体質が見事に反映されていた)。歴史はこうして作るというのが、彼らの「歴史法則」なのか。この本では、そうした“逃げ”ができないように、当時の論文の内容にまで踏み込んで、地質学会、物理学会でどのように扱われたかもカウントされている。

2008年6月記

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 以上が山賀氏サイトにある文章です。「過去の己(プレートテクトニクスに対する態度)を批判的に検討することなく」とありますが、プレートテクトニクスを生み出した「海洋底拡大説」やそれから誘導される「海洋底の寿命2億年説」が全く間違っていることを認識し、イデオロギー論争とは無関係に、事実認識に基づいて過去の己を批判的に検討していただく必要があると私は思います。

1496
2008-09-08 (Mon)
プレートテクトニクス自体が業界不況の真因ではないのか
「世界日報」の書評に多田則明という方が、泊次郎著「プレートテクトニクスの拒絶と受容」 について、次のような応援演説をしておられます。私は全く逆の立場で「特定の思想が科学の発展を遅らせた事例として、忘れるべきでない。」と考えておりますが、何年か後にはプレートテクトニクスそのものが、その立場(「特定の思想が科学の発展を遅らせた事例」)に立たされるものと確信しています。

http://www.worldtimes.co.jp/syohyou/bk080810-3.html

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日本の科学を遅らせた共産主義

 東京大学で竹内均教授らから地球物理学を学び、朝日新聞記者から「科学朝日」副編集長になった著者は、一九七〇年代から八〇年代にかけて、プレートテクトニクスに基づいて日本列島の地震記事を書いたところ、多くの地質学者から偏っているとの批判を受ける。世界のジャーナリズムでは既に常識となっているプレートテクトニクスが日本の地質学会では拒絶されている事実に興味を持ち、朝日を退社後、東大大学院に入ってその原因を研究した。本書はその博士論文を一般向けに出したもの。

 プレートテクトニクスの受容が世界から十年余り遅れた理由の一つは、日本の地質学会が日本列島成立の解明を第一目的にしていたという地域主義的な性格による。二十世紀初めの大陸移動説から海洋底拡大説を経てグローバルな地球の運動を捉えたプレートテクトニクスに対しても、それで日本列島の造山がどう説明できるかに関心が集中した。八〇年代半ばから、それを裏付ける観測結果が次々に出てきて受容に傾く。

第二の理由は、戦後の日本の政治状況を反映したもの。科学の民主化を目指して結成された地学団体研究会が、同会の発案者であり、地向斜造山説の地質学者、井尻正二の強力な指導の下、組織的に反対したからである。同説は海溝付近に堆積した土砂が、その重みで陥没し、マントルが噴き出すことで山が隆起したとする。学生時代からマルクス主義に傾倒していた井尻は戦後、共産党の科学技術部長になり、唯物弁証法に基づいた科学を提唱する。井尻にとって米国発のプレートテクトニクスは思想的に拒絶すべきものだった。

 一時、三千人もの会員を擁した地学団体研究会は、科学研究費の配分や日本学術会議、地質学会などの選挙にも集団の力を発揮した。そのため、学生は教授が帰ってからプレートテクトニクスの勉強会を開いたりしていたという。特定の思想が科学の発展を遅らせた事例として、忘れるべきでない。 【書評者:多田則明】

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 私は今も昔も共産主義者ではありません。プレート説に反対したのが共産主義者だったのかどうかにも興味はありません。私が、教育の現場で、プレートテクトニクス理論に反対の立場の高校教師がおられることを知ったのは[1140]にあるように佐藤完二先生が最初でした。今から二年半程前のことです。それ以前から、地震学に興味を抱いて地震の本当の原因がどこにあるのかを、探求してきたものです。[712]にもコメントしましたが、

「日本は、プレートテクトニクスに対する反対運動が、世界で最も激しく長く組織的に続いた国である。」

というのは、それが本当ならばプレート論の危うさを見抜いていたからこそ、アメリカのようにプレート説一色になるのに抵抗があったということで、立派なことではないのかと思っています。

 それには小川博士や石本博士の洞察に満ちた自然探求の影響があったからであろうと思います。

 また、「井尻にとって米国発のプレートテクトニクスは思想的に拒絶すべきものだった。」という「思想的」という文言が、地球科学という分野でやり取りされること自体がおかしいと思います。それとも、地球科学は科学ではなくて一種の「思想」なのでしょうか、[1491]に述べたように、国引き物語のような「寓話的」と思える発想がまかり通るのは、疑似科学に近いような状態に地球科学・地震学があるのかもしれません。

鷺谷教授の話によれば、この業界は今若者に人気が無いようですが、その原因は特定の思想(プレートテクトニクス)が科学の発展を遅らせていることに根本的な原因があることに気付くベきでしょう。

なお、ニューオフィス36にて以下のように書きましたが、「地震爆発論」は「地向斜説」をサポートしているわけではありませんので、間違わないでください。

セミナー[706]にも書きましたが、石田理論はプレートモデルを捨てて地向斜モデルに戻れと言っているわけではありません。新しい地震論ですがまったく新しい観点からの造山理論でもあります

1497
2008-09-09 (Tue)
地震予知研究で世界をリードすべし
 [1493]にある人民網の記事の中に「水素が現在地震予知の中で最も感度の高い化学物質の1つであることは世界で公認されている。」とありましたが、日本ではそのような認識があるという報道に接したことがありません。 [246][248]あるいは[794]で紹介した杉崎先生の研究、山崎断層や飛騨の断層から出る水素ガスの件以外にはあまり聞いたことがありません。そこで、ネット検索で調べてみると、28年も前のものですが、[246]にある脇田先生などによる山崎断層の調査報告がありましたので紹介します。タイトルは「山崎断層における水素の放出」というものです。

山崎断層における水素の放出



 図を見ると確かに山崎断層に沿って、高い水素濃度の検出が見られ、断層を離れると低い濃度になっています。

結論として、著者らは水素が発生するのは断層活動によって新しく破壊された岩石と、地下水との相互作用の結果である可能性があるとしています。

[248]で紹介したように小泉氏はこの調査研究を高く評価する一方でその後の研究では内容が支持されていないと次のように記述しておられます。

 「Wakita et al.(1980)は、微小地震(破壊)によって形成された岩石の新しい表面と水が反応して水素を生成しているという仮説を提唱した。 この研究は、観測と実験・理論がかみあった見事な成果であった。しかし、その後の研究の進展は、上述の結果を必ずしも支持してはいない。観測を重ねるにつれ、土壌ガス中の水素濃度は、非常に時間変化が激しく、同一の場所でも、10日程度で2〜3桁も変化するのが珍しくないことが分かってきた。」

その他の検索では東京大学地震研究所広報の「直下型地震の予知」という項目に以下のようなものがありました。

http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/KOHO/Yoran2003/sec5-6-jap.htm

「地殻の応力の高まりや変形の進行によって、間隙流体の移動が生じると考えられる。これが地下水や地中ガスの変化に現れる。例えば、白馬の八方温泉の地中ガス中の水素濃度は、1996年には、約10%であったが、1998年には0.3 % に降下した。」

いずれも、断層がずれることによって水素が発生するという解釈であり、熱解離によって発生するという視点はありません。

 [248]の最後に、「熱解離から発生するガス量は、岩石の破壊面と反応して発生するガス量よりも多量なものであり、地表まで達するのは不思議ではないでしょう。とにかく興味深い課題として、熱解離も研究課題に入れてほしいものです。」と書いておきましたが、地下水の熱解離という視点を入れた研究を展開して欲しいものです。

 以上のように、水素ガスと地震との関連に関して、検索を行ってみても、得られる情報はこのように大変少ないものです。したがって、日本では水素ガスが「地震予知の中で最も感度の高い化学物質の1つ」という認識があるとは思えないのであります。

 水素以外の予知方法に関してもですが、フランスは人工衛星を打ち上げて地上の電磁波を調べ、それによって地震予知を研究しようと日本に協力を呼びかけましたが、「測地学的地震予知法」に拘っている日本の研究陣は協力を断ったという話です。それどころか、日本では「地震予知は不可能」という空気が強くなって、各所で地震予知の名称が消えてしまいました。よって、水素ガスを観測して予知の手法に役立てようという発想は日本では見向きもされないのではないでしょうか。

 このままでは日本の地震予知に関する研究はフランスにも、中国にも、ギリシャにも追い越されてしまうでしょうか。そうなったら「日本は地震の研究で世界をリードしている」といい続けることはできません。そうなる前に抜本的方向転換を図って世界をリードすることを目指すべきです。

[794]の最後には次のように書いてありますが、現在携帯型の水素濃度計ガスマンの到着を待っているところです。

資金さえあれば水素濃度計を全国に配置して、大地震を事前に予知する事は可能であると思います。地震計を配置するよりは遥かに安価なプロジェクトとなるはずです。

1498
2008-09-12 (Fri)
昨日(11日)の地震から余震を考える
北海道十勝沖で11日に起きた地震の余震経過をまとめてみました。

出水市防災気象情報サイトより加工させていただきました。

11日午前9時21分に20kmの深さで起きた本震の後、30km、10km、50km、60kmで余震が起きています。

 定説では余震が発生する原因は以下のように考えられています。(wikipediaより)

 「余震の原因は、本震時に解放されきれなかったエネルギーが放出される為だと見られる。地震はプレートに力が加わってできた歪みが断層で発散されることにより起こるが、特に大地震の場合は、一度の本震で長く深い断層が全て動いてしまうわけではなく、両端や下部に引っかかったままの部分が残り、そこに新たに力が集中し始める。そうして連鎖的に周囲の断層も動いて歪みが解消するときに余震が発生する。」

 今回の地震は被害状況から見ると大地震というほどの規模ではないようにも思えますがM7.0ということですから、かなり大きな地震です。解説では余震の原因として本震で開放しきれなかった歪の開放であると説明していますが、なぜ一気に開放せず、「両端や下部に引っかかったままの部分が残り、そこに新たに力が集中し始める。」という現象が起きるのか疑問に思います。なぜズルズルと数時間、時には数十日も時間を掛けて開放し断層が滑るのか、説明ができません。一旦開放されたのちに、再度断層運動を再開させるのに必用な歪を短時間で蓄積するとは思えません。疑問を図示して見ます。


  図に示すFはプレートが押す力ですが、歪と応力は一対一の関係にありますから、歪といってもかまいません。このFが断層で起きる摩擦による抵抗力Rを超えるときに断層は滑ることになります。こうして本震が起こりますが、一旦静止すれば、次に滑るためには、同じくRを超える歪が蓄積しなければ動けません。本震後に「新たに力が集中し始める」ことによってFを超える歪がなぜ短時間で蓄積するのでしょうか。そのような短時間で蓄積されるのならば、もっと早く本震が起きていいはずであります。

また、滑る位置が本震とは違うから、もっと小さなFでも滑るのだという解釈ならば、なぜその場所で本震の前に前震として滑らなかったのかという疑問が発生しますし、一つの断層のある部分が固定していて、他の部分が滑るというのも、物理現象としてのイメージが浮かびません。[1479]のすべりコンターの概念にも共通するのですが、断層理論には物理的なイメージが希薄な憶測が含まれているように感じます。

 ところで、現実には小さな余震が起きていますが、唯一の解釈は本震によって乱された水の解離層が不安定化していて、安定するまで解離と結合という化学反応を繰り返しているという解釈が可能性の高いものだと考えます。



 図は中越沖地震のときの余震の発生状況を示したものですが、本震の後に余震が急激に起きて、余震の震源分布が絨毯爆撃の跡のように広がっています。これを見て、歪が少しずつ開放されているのが分かる・・・という説明を納得する方は居ないのではないでしょうか。

1499
2008-09-17 (Wed)
岩手・宮城内陸地震も人災の可能性あり
 9月17日付の電気新聞に掲載された下記のニュースが16日7時のNHKニュースでも報道されたそうです。四川地震でも情報を寄せて下さった方からのものですが、セミナーで解説して欲しいというメールの内容でした。

http://www.shimbun.denki.or.jp/backnum/news/20080917.html

 電中研(電力中央研究所)と地球環境産業技術研究機構(RITE)の共同研究であるというこの実験に関して私は全く知りませんでしたが、長岡市深沢でRITEが行った実験と共通する危険性を感じます。つまり、今年6月に起きた岩手・宮城内陸地震も中越地震・中越沖地震と同じく人為的に起こしてしまった可能性があるかもしれないということです。先ずは電気新聞の報道を紹介します。

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                      9月17日付


CO2地中固定化へ、電中研が秋田で実験−地下1000メートルの岩盤に注入

 真水に溶かした二酸化炭素(CO2)を地下1千メートルの岩盤に注入し、岩と反応させて固定化するための基礎実験が16日、電力中央研究所の雄勝実験場(秋田県湯沢市)で始まった。230度ほどある高温岩盤の割れ目に炭酸水を押し込み、その炭素を個体化して永久にとどめる技術開発に応用する。実用化されれば地中貯留に適さない場所でもCO2を埋められる。温暖化対策の切り札として期待されるCO2回収・貯留(CCS)技術の適地が広がることにもなる。

 世界で開発が進むCCS技術は石炭火力発電所などの排ガスからCO2を回収し、圧力を掛けて地中や海底下に埋めている。CO2が地上に漏れ出さないためにも、水を通さない岩盤の真下が適地といわれている。

 一方でCO2を水に溶かして地中に押し込めば、岩盤に含まれるカルシウムが高温下で炭素と反応して炭酸カルシウムとなり、岩盤の割れ目に入り込んだまま固定化される。地上に漏れ出す心配がなく、従来方式だとCO2貯留に適さない場所にもCO2を埋められるようになる。

 この「CO2地中固定化技術」の基礎実験は、電中研と地球環境産業技術研究機構(RITE)が共同研究する。CO2が地中で固体化する速度のデータを集め、より効率的に素早く固体化させるための各種条件を解明することが目的としている。

 実験では地中1千メートルまで掘り下げた井戸を使い、炭酸水(CO2濃度1%)を1日あたり4トン注入。その上から流し込む真水の圧力を利用して岩盤の割れ目に炭酸水を押し込む。

 19日まで毎日注入し、炭酸水が割れ目に入り込む速度などを計測する。同じ地中に炭酸カルシウムの結晶粒も配置。炭酸水の濃度や地中温度、流し込む真水の圧力を変えながら実験し、結晶が成長する速度のデータも収集する。

 実験を取りまとめる電中研地球工学研究所の海江田秀志上席研究員は「実用化できればCO2貯留の適地が増える。山村にあるセメント工場などでも回収したCO2を炭酸水としてそのまま地中に押し込むことが可能となる」と話している。

 雄勝実験場は、電中研が「高温岩体発電」と呼ばれる新型地熱発電の関連技術を実験していた場所。地上から真水を地下1千メートルに押し込み、その熱を使って160度の温水と蒸気を取り出していた。高温岩体発電の実験はすでに終了したため、その井戸を利用して02年からCO2地中貯留の実験を始めた。06年度からは経済産業省の補助金を受けて、08年度末までの日程でCO2地中固定化技術の実験に取り組んでいる。

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 この雄勝実験場で行われていた「高温岩帯発電」を紹介するサイエンスチャンネルのビデオが以下にあります。

http://sc-smn.jst.go.jp/8/bangumi.asp?i_series_code=D010602&i_renban_code=042

 これを見ると、「高温岩帯発電」の実験は1986年から開始され、毎分500リットルの水を送って地熱発電の基礎資料を得ていたようです。実験では水圧破砕という方法で高熱岩盤に亀裂を作り、その空間(東京ドーム16個分)に井戸から水を送ってもう一本の井戸から高熱化した水を取り出して、発電に利用しようというものです。原理的には水を循環させていますから、CO2の地下貯留のように「ところてん式」に地下水を押し出すことは無いはずですが、ビデオを見ると分かるように、水の回収率が25〜30%(最初は14%)ということですから、圧入した総量一万トン(水圧破砕のために使用した水だけなのかもしれないが)の水のうち70〜75%の水は亀裂を通って外部に押し出されていることになります。因みに、長岡市深沢の岩野原実験場で行われたCO2の貯留量も一万トンであった。

 また、地表に露出している岩盤の節理は北下がり20度ということですが、ボーリングの結果では地下に同じような天然の割れ目・破砕部分ができています。その割れ目が水圧破砕で節理に沿って広げられるそうですから、東北東27km程度に位置する岩手・宮城内陸地震の震源付近に向かって水が押し出され、解離層が乱されたことが原因で地震が起きた可能性は十分に考えられます。

 雄勝実験場の正確な位置は分かりませんが、秋の宮と泥湯温泉の間の小杉山線沿いにあるそうですから、震源との位置関係は次図のようになるかと思います。


この近辺の地震と火山活動の関連を調べてみると、実験場付近では昨年から秋ノ宮温泉・高松岳付近で群発地震が起きていたようで、実験との関連が疑われます。

19日まで継続するという今回の実験は「水を循環させる」のではなく、目的はCO2を含んだ水を地下に貯留して固定化するというものです。したがって、「ところてん式」に押し出された水が、高温地帯に移動して水の解離状態を不安定にする可能性は「高温岩帯発電」よりも高くなるはずです。

 圧入する水の量は一日4トンと少量ですが、その上から流す真水の量は不明です。4日間の短期間ですから、解離層を乱す可能性は少ないのかもしれませんが、本格的な実験は地震の原因を究明するまでは避けてもらいたいと思います。

 地震の原因が完全には解明されていない現状で、「断層地震説」を盲信して、地下環境に人間の手を加えることは大変危険であることを認識するべきです。

 この地震は何度も書いてきましたが、4000ガルという加速度を記録しましたし([1429]参照)、荒砥沢ダム上流の大崩落([1435]参照)から推定するに、断層が動くことによって地震が起きたというよりも、爆発によって結果として断層ができたという「地震爆発説」のほうがはるかに説得力がある地震だったのではないでしょうか。

 注:ビデオの中の解説では破砕のために一万トンの水を入れたとされていますが、これは長岡で行われた液化CO2の注入量と同じ容量です。実験場から震源までの距離も20k〜30kmの範囲にあります。中越地震が人為的地震とすれば、岩手・宮城内陸地震も人為的地震の可能性が存在します。

 高熱岩盤が地下深くにあるコロラド州デンバーでさえ、廃液を注入すれば地震が発生することは実証済みの事実です。地下の浅い場所に高熱岩盤があって、周囲に温泉が何箇所もあるような場所で、地下に流体を送れば、地震が起きることは明らかではないでしょうか。液体の地下圧入が危険性を持つことをはやく認識して欲しいと思います。つまり、地震学の間違いを早急に気づいていただきたいと念願します。

1500
2008-09-19 (Fri)
10年前の雫石地震の原因を探る
 あるブログの情報によると、東北・北海道周辺での地熱発電所の建設と地震災害との関連を示唆するものがありました。(リンクはお断りだそうです。)

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(2004年 葛根田発電所で、大規模地滑り)(セミナー管理者追加)

その記事を読むと、蒸気の圧力が低く、冷却塔のポンプで蒸気を吸い上げ、発電していたそうです。ポンプで蒸気を吸い上げるという行為は地下における圧力を低下させることを意味します。これは水の解離度を増大させることになりますから、水素ガスの発生量が増えることを意味します。自然循環に近い形で噴出蒸気を採取するならまだしも、吸い上げるという行為は水素爆発つまり地震を誘発することになり、大変危険な行為であります。今年4月に起きた葛根田発電所での大規模地すべり災害は地震災害である可能性が高いと考えるべきです。


10年前の雫石地震の原因はどちらか(松川か葛根田)の発電所で、地下の熱水貯留空間を作るために水圧破砕を掛けたことにより、押し出された水が高熱地帯に送られて水の解離度が増加したための水素爆発かと憶測しましたが、発電の操業中に「蒸気の圧力が低く、冷却塔のポンプで蒸気を吸い上げている」という作業が行われているとは知りませんでした。

地震の原因は地下で起きる爆発現象です。地震に関する知識が間違っているという認識を持たないと、人為的地震の悲劇は繰り返されます。

 [1499]で述べたように、岩手・宮城内陸地震の原因も周辺にある地熱発電所の建設或いは操業時の地下環境の安定破壊あるいは、ダム建設による地下環境の安定破壊などを考慮していないためである可能性が高いと言えます。

1501
2008-09-22 (Mon)
注水後に地震発生
[1499]で紹介したCO2の地下貯留実験の直後に群発的な地震が近辺で起きています。
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 真水に溶かした二酸化炭素(CO2)を地下1千メートルの岩盤に注入し、岩と反応させて固定化するための基礎実験が16日、電力中央研究所の雄勝実験場(秋田県湯沢市)で始まった。230度ほどある高温岩盤の割れ目に炭酸水を押し込み、その炭素を個体化して永久にとどめる技術開発に応用する。
  この「CO2地中固定化技術」の基礎実験は、電中研と地球環境産業技術研究機構(RITE)が共同研究する。CO2が地中で固体化する速度のデータを集め、より効率的に素早く固体化させるための各種条件を解明することが目的としている。

 実験では地中1千メートルまで掘り下げた井戸を使い、炭酸水(CO2濃度1%)を1日あたり4トン注入。その上から流し込む真水の圧力を利用して岩盤の割れ目に炭酸水を押し込む。
 19日まで毎日注入し、炭酸水が割れ目に入り込む速度などを計測する。

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出水市防災気象情報サイトより加工させていただきました。


 [1499]では「4日間の短期間ですから、解離層を乱す可能性は少ないのかもしれませんが・・・」と見ていましたが、16日の実験開始後17日1回、20日1回、21日には2回の地震がいずれも栗駒山近辺で発生しています。いずれも震源の深さは10kmと浅い地震です。発生場所は注水を実施した雄勝実験場から、いずれも20km近辺の地点です。私は、注水実験によって、小規模ではあるけれども、人為的に地震を起こしている可能性が高いと見ています。
地震爆発論の立場からは交換・循環方式でない注水実験は水を高熱地帯に押し出してしまうので、大変危険であると考えられます。

1502
2008-09-24 (Wed)
2012年のポールシフト論議
渡邊延朗という方がフォトンベルトに関するレポートを出しておられます。その中に、「強力なエネルギーを持つフォトンが星雲状に高密度で集合したのがフォトン・ベルトで、その中に突入するということは、人智を超えた凄まじい現象が起こると予測される。」とか、「このままでいくとおそらく2012年前後にポールシフトが起こる可能性は高いと思われます。」という文章が見られます。
レポートNo.87では「ロシアの専門家もポールシフトの可能性を警告した」というタイトルで、ノーボス通信の記事、「Geomagnetic field: when will compass fail? (地球磁場;コンパスはいつ失敗(fail)するのか?)」が紹介されています。
記事をみても、フォトン・ベルトとポールシフトがどのような因果関係にあるのか不明なのですが、最近あちらこちらで2012年前後にポールシフトが起きるという話題が出回っています。 昨年暮れにNHK関連の日本放送出版協会が発行した「2012地球大異変:科学が予言する文明の終焉」ローレンスE.ジョセフ著、という書籍にも、マヤの暦は2012年12月12日で終わっていて、その日に何かが起きるとし、ポールシフトのことを話題にしています。しかし、納得できる合理的な説明は存在しないように思えますので、ジュセリーノ氏の9月13日大地震説が起こしたような騒動にならないように、内容を吟味しておく必要があると思います。まずは、そのメルマガを抜粋して紹介します。
★★★
宇宙の法則研究会: ロシアの専門家が、ついにポールシフトの可能性を警告した。  ロシアのノーボス通信(日本における共同通信のようなニュース配信機関)の政治担当のコメンテーターが書いた、「Geomagnetic field: when will compass fail? 」と題した記事が9月5日全世界に向けて配信されました。
 ポールシフトとは地球の北極と南極の磁極が入れ替わる現象で、地球ではこれまで7600万年の間に171回のポールシフトがあったと言われます。 アメリカのケーブルTVでは、すでにこれから起こる「ポールシフト」をテーマにしたドキュメンタリー番組を頻繁に放送しています。 おそらく「脳死」していて商業主義一辺倒の日本のマスコミによって多くの日本人は、「ポールシフト」が起こる日に何も知らずに突然直面する可能性があります。
 この記事の内容を簡単に説明すると次のようになります。
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*地球の地磁気が激しく移動しており、北極の磁極はこの1年間ですでにカナダの北極の氷棚から大西洋にあるロシア領土のセベルナヤゼムリャ島に向かって40kmも(24.85マイル)漂流している。磁極は限りなく、赤道方面に移動しているように推測される。
*地球の磁場強度はここ200年間で、10パーセント減となっていて、最近では1,7も減少している。磁極が移動しつつある大西洋のある地域では10パーセントもの現象を見せている。
*今後地球の磁場が弱まったり一時的に消失したりするとバン・アレン帯に影響が出て、有害宇宙線の大量侵入が起こり、突然変異や遺伝子異常などを引き起こす可能性がある。今後飛行機に乗ることは、危険性が高まるかも知れない。
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 最近、「大陸移動説(プレートテクトニクス説)」は間違いではないかと否定する意見が一部で出始めています。たとえば、南米大陸とアフリカ大陸はひとつの大陸から離れ離れになったと言われますが、地域によっては今から100万年前に分離したようなところもあって大陸の離れ方と時間経過にどうしても説明がつかないのです。そこで最近、磁極逆転(=実際に地球の南極と北極が入れ替わる)という地球規模の大カタストロフィによって、ヒマラヤなどが一瞬にして誕生したのではないかと推測され始めているのです。今年の初めにNHK関連の出版会社から出版された「2012 地球大異変」という科学ジャーナリストが書いた書籍の中でもポールシフトのことが取り上げられています。(略)
 このままでいくとおそらく2012年前後にポールシフトが起こる可能性は高いと思います。 これから地球で生きるわれわれは、ただ身の廻りで起こってことだけではなく、全宇宙レベルで何が起きているかということに関心を振り向ける必要があります。
★★★
 以上がこのメルマガの抜粋ですが、地球の姿勢が変化することなく、単に南極と北極が入れ替わる磁極逆転のことをポールシフトと考えているようです。これは船井幸雄氏のサイトでも同じです。しかし、恐竜などの生物を絶滅させるような大洪水を引き起こすのはそのような現象ではありません。アインシュタインが支持したハプグッド教授提起による地殻移動がその現象であり、結果的に地球の回転軸が変化する現象を私はポールシフトと考えています。
いくつかのサイトでもポールシフトが起こることが原因で火山の大噴火や大地震が引き起こされるという解説がありますが、それは因果関係が逆転していると思います。最初にポールシフトがいきなり起きるのではなくて、大陸規模での隆起・沈降を引き起こすような大噴火・大地震などが起きることが原因で地殻の重心が移動し、それによって地軸が変化し、恐ろしい大洪水が発生するというのが正しい因果関係であると考えています。

 そのポールシフトが2012年に本当に起きるのかどうか、私が納得できる合理的な理由はどこにも見当たりませんが、起きるとすれば、一つの原因として回転体である地殻の重心を移動させてしまうほどの大陸規模での隆起・沈降が前駆現象として起きるはずですから、そのような巨大地震の予兆を観測しておく必要があります。地震予知の確立が大前提ですので、地震学を正しい方向に修正しておかなければなりません。
その他の原因としては、小惑星の衝突、両極付近の大規模な氷床移動・消滅が考えられますが、それが2012年に起きるという情報は今のところ無いのではないでしょうか。

前にも書きました([1347])が、ジュセリーノ氏の予言を批判する意図はありません。予言とは「このままの道を進むと、前方10kmに崖があって転落しますよ、道を変えなさい。生き方を変えなさい。」という忠告であって、「道を変えたので、崖から転落しなかった、良かったね。」ということに導くのが予言の正しいあり方だと思っています。
 このまま行けば2012年に我々が大きな崖から転落する危険があるのかどうか、私は預言者ではないので、それは分かりません。しかし、何か人間の在り方が間違っているような感じは抱いています。

地球に意識があるとすれば、そしてそれをガイヤ意識というのだとすれば、ガイヤ意識は地球表面に住む人間の活動、すなわち胃腸内部の細菌のような存在に大いなる関心を持っているに違いありません。人間は胃腸内部にピロリ菌のような悪玉菌が増殖すれば、胃腸薬を大量に服用して、ピロリ菌を退治し善玉菌の率を高めようと治療行為をします。核兵器をちらつかせて相手国を威嚇するのはピロリ菌の行動に相当するでしょう。そのときガイヤ意識は天変地異を起こして、地上を清掃したくなるのではないでしょうか、ピロリ菌にとっては青天の霹靂のように胃腸薬が天空から落ちてくるわけですが、地球としての治療行為がポールシフトかもしれません。ガイヤ意識から治療行為が不必要であると認定されるような人間としての正しい行動が求められるのではないでしょうか。2012年までには後4年しかありません、手遅れになっていなければいいのですが・・・。

ポールシフト現象を正しく理解するために、
http://jp.youtube.com/watch?v=1aPNcUJuiLY
から一部分を借用して改訂版解説動画を作らせていただきました。http://www.ailab7.com/polesift3.wmv
解説の字幕の内容に関してはニューオフィス43.新しい地動説・ポールシフトを参照してください。

1503
2008-09-26 (Fri)
ウィキペディアに見るポールシフトの誤解
 ポールシフトに関してウィキペディアでどのように解説されているのかを紹介し、その中にある誤解を述べてみたいと思います。そこでは「地震爆発論」から誘導されるこのセミナーの「新しい地動説・ポールシフト」も疑似科学として外部リンクされているだけであり、残念ですが本文中には全く引用されておりません。
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ポールシフト
ポールシフト (pole shift) とは、惑星など天体の自転に伴う極(自転軸や磁極など)が、何らかの要因で現在の位置から移動すること。
実際に、地球の地磁気は過去100万年あたり1.5回程度の頻度で反転していることが地質的に明らかである。
自転軸に関しても、2004年12月26日に発生したマグニチュード9.3のスマトラ島沖地震では、北極の自転軸が最大で約2cm程度移動した(広義の"ポールシフト"、極運動が発生した)可能性があるとする予測がある。

1 自然科学におけるポールシフト
1.1 自転軸のポールシフト

月を生成した原因と考えられるジャイアント・インパクト仮説では、原始地球に火星大の原始惑星が衝突したことによって現在の地球と月の組成が成立した他、地球の公転面に対する自転軸の傾斜角(約23.4度)もこの際に確定したとされる。
また天王星は黄道面に対する自転軸の傾き(赤道傾斜角)が97.9°、冥王星は122.5°もあり、ほぼ横倒しの状態になっている。また、金星は178°傾いており、ほぼ逆方向に回転をしている。その原因については不明だが、有力な説では、数十億年前の微惑星や原始惑星の衝突によりポールシフトが起こったのではないかと考えられている。

1.2 地磁気のポールシフト
地磁気の磁極は、頻繁に変化していることが観測されている。また、海洋プレートに記録された古地磁気の研究によって、数万年〜数十万年の頻度でN極とS極が反転していることも知られている。この変化は永年変化と呼ばれているが、その原因についてはいまだ明確な説は存在していない。

2 オカルト・疑似科学におけるポールシフト
一般的に用いられる「ポールシフト」の多くは、もっぱら疑似科学やオカルトの世界で用いられるタームであり、特に(磁極の移動ではなく)自転軸の移動を意味する文脈で使われることが多いとされる。さらに、自転軸上の北極と南極が(何らかの要因で、短時間のうちに)反転する意味で使われることもある。
どのような形にしろ、オカルト論者などが主張するような自転軸の北極・南極が瞬間的ないし短時間で入れ替わるようなポールシフトが地球上で発生したと仮定した場合、発生する急激な加速度に耐えられる高等生物はまず存在しないことが容易に想像でき、その後に引き起こされる気候変動・地殻変動などのために壊滅的な被害が発生することが予測される。 さらに、地球の自転軸を瞬間ないし短時間で移動・反転させるほどのポールシフトを発生させるには膨大なエネルギーが必要であり、彼らが主張するような「致命的なポールシフト」が地球外からの質量の衝突などによって発生した場合には、ポールシフト以前に人類はおろか地球上の生物は全て絶滅する可能性が高い。 (原始地球に火星大の原始惑星が衝突することによって発生し月を生成したとするジャイアントインパクト仮説ですら、火星ほどの質量が衝突して地球と月を「再構成するに等しい破局」をもたらした上で、現在の地球の公転面に対して地軸を23.5度傾斜させるに留まっている)

2.1 回転軸が変わるポールシフト
初期のポールシフト理論は、1958年のチャールズ・ハップグッドの著書The Earth's Shifting Crust と1970年のPath of the Pole により広まった。ハップグッドは、片方、または両方の極に氷が集まりすぎると、地球の回転バランスが不安定になり、コア周囲の外皮のほとんど、またはその全てが滑り、その結果回転軸が変化してバランスが保たれるのではないかと予測した。
この、1万2千年から2万年ごとに発生するポールシフトの結果、激しい気候変動が地球の大半に発生し、赤道地域は温帯に、そして温帯であった地域は赤道や極になるとしている。
極の氷以外の理論としては、以下のようなものがある。
高速な小惑星や彗星との、岩石圏がマントルから独立して動くような角度での衝突。
地球近傍を磁力を持った天体が通過し、一時的に磁場を再設定する。岩石圏が引きずられ新しい回転軸が生まれる。
ただし、現在の自然科学の世界では、大規模な(自転軸の)ポールシフトが頻繁に発生していたという考えはいずれも認められておらず、疑似科学やオカルト的妄言などとして扱われているのが現状である。
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以上がその内容です。
 先ず、回転体に関する基本的なことですが、回転体の重心は必ず回転軸の上に来るという性質があります。回転体の重心が何かの原因で移動すれば回転軸は新しい重心を含むように姿勢を変化させることになります。ジャイロ効果があるから、地球と云う回転体は傾くことが無いと云うのは間違いです。独楽の端に粘土でも付着させて廻そうとしても廻せないことは経験上知っていますが、独楽の心棒を変えないかぎり廻せません。
 地球という回転体でも同じことで、重心が回転軸上から移動すれば回転軸は変化せざるを得なくなります。ただし、有意な程度の移動量が膨大なものとなるでしょうから、現実には地球の回転軸が変化するとは想像もしていないわけです。
 ところが、地球内部と厚さ100km程度の地球表面部の殻(これを地殻と呼ぶことにします)とが別の動きをする可能性があると考えれば、話は違ってきます。つまり、地球内部と地殻との間に潤滑油のような働きをする層があるとすれば、地殻の重心移動(大陸規模での隆起や沈降現象による)が生じるときに、独立した回転体である地殻の回転軸は新しい地殻の重心を含むように回転します。これがハプグッドの述べた地殻移動という現象です。地球内部の回転軸は移動しなくても、太陽から眺めていれば、地球の回転軸が移動したようにも見えます。現実には地殻が移動し、北極と南極が移動しただけであります。ハプグッドは両極にある氷の溶解を重心移動の原因と考えましたが、アトランティス大陸やムー大陸の沈没という規模の現象も該当します。下記の動画を参考にしてください。
http://www.ailab7.com/polesift3.wmv

 さて、ウィキペディアの解説では「ポールシフトを発生させるには膨大なエネルギーが必要」としてありますが、以上述べたように、ポールシフトは回転体の性質として起こるものであって、膨大なエネルギーは必要としません。また、「発生する急激な加速度に耐えられる高等生物は存在しない」とありますが、急激な加速度が作用するわけではありません。自動車の進行方向が変わる程度の加速度しか働かないはずです。もしこのポールシフトが起こったとすれば、太陽や月が流れるように急激に移動する光景を人間は観測することになるでしょう。
 ただし、その後に起こる大洪水は恐ろしいことになるでしょう。地殻の回転方向が変化するわけですから、海水は巨大な津波となって大陸上に溢れかえります。人間も動物も大陸奥深くにまで流されるでしょう。それがシベリアやカナダにあるマンモスの墓場や古代の動物の化石となっているのでしょう。また温暖な地域に住んでいて、寒冷地に押しやられた人類は急激に寒くなって「氷河期」になったという誤解を持つのでしょう。両極地方にあった氷河の跡が赤道近辺に移動して不思議に思われ、かつては全地球が凍結した時代があるに違いないなどと誤解されているのかもしれません。南極大陸から発見される恐竜の化石は大陸の移動を証明するものではなく、地球本体の上を地殻が全体として滑動したことを意味しているのだと思います。やがて氷の下から文明の痕跡も発見されるかもしれません。ハンコック氏はそれをアトランティスだと言うかも知れませんが、私はもっと前の知られていない違う文明だと思います。

1504
2008-09-30 (Tue)
「地球は冷える」と予測する丸山教授
 マントルトモグラフィーの研究で知られる東工大の丸山茂徳教授が「地球温暖化の原因が本当に二酸化炭素なのか、もう少し冷静に議論する必要がある。」と述べておられます。毎日新聞の記事がありますので、紹介します。


★★★
地球の歴史を見れば、温暖化は頻繁に起きてきた。気温に影響する最大の要因は太陽の活動で、宇宙線や地球の磁場に左右される雲の量、火山活動などもある。「CO2が寄与する気温の上昇は太陽活動に比べたら微々たるもの。1940〜75年はCO2の濃度が高くなったのに気温は下がったんですよ」
 CO2削減に向けたエコ論議が過熱する中で異論を唱えるのは勇気がいるが、 「昔から懐疑論者だったからね」。
 太陽活動はすでに弱くなっている。「これからは寒冷化に向かいます。私が正しいかどうかは、5年後に決着がつくでしょう」
★★★
セミナー[1452]では『地球温暖化詐欺』という動画を紹介し、
「アル・ゴアが示した、気温とCO2の強い相関関係は因果関係が違っているようです。気温の上昇が先に起こってその後CO2が増えてくることが記録からわかる。つまり、太陽活動が活発だと雲が少なく気温が上がってCO2も増える。太陽が不活発になると、雲が多くなり、地球が寒冷化し、生物の活動が減ってCO2が出なくなる・・・なんという明快な理屈でしょうか。」
と述べてきました。丸山教授の述べられるところも、同じ論旨のようです。地球温暖化には火山活動、中でも目視できない海底火山からの熱量も大きく影響していると思います。
このドキュメント放送の内容に関しては逆にデータの捏造があると言う解説がウィキペデキアに載っています。
 いまや、マスコミの流す情報は受け手がよく吟味しないといけない時代になっています。それは地震の発生原因に関しても言えることであります。「活断層」の恐怖に関しても同じことです。マスコミから流れる情報を「本当にそうなのか?」と吟味する力が必要になります。

1505
2008-10-01 (Wed)
活断層調査への疑問
 東京電力は、青森県東通村の原発1号機設置許可申請の際、近辺にある横浜断層を「変位はみられず活断層ではない」と評価していたが、再調査した結果、活断層であると発表したそうです。しかし、いずれの核施設とも「基準地震動を上回らないため影響はない」としています。毎日新聞が次のように報道しています。

★★★
 青森県東通村の東通原発や同県むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設に近い「横浜断層」について、東京電力と東北電力、リサイクル燃料貯蔵(RFS)の3社は19日、活断層と評価したと発表した。
 いずれの核施設とも「基準地震動を上回らないため影響はない」としている。
 3社は共同で3月から9月8日まで地面を掘って地層を調べるトレンチ調査や、人工地震による断層調査など を行っていた。活断層の長さは約15キロあり、「洞爺火山灰」(約11万5000年〜11万2000年前)を合む断層中央部の地層に変形が確認された。
 また、その上の「阿蘇4火山灰」 (約9万年〜8万5000年前)を合む地層近くにも変形がみられたことから、新耐震指針(06年9月)基準の後期更新世(約13万年〜12万年前)以降に活動かあったことは否定できないとした。
 横浜断層中央部からの距離は、東通原発が約13キロ用済み核燃料中間貯蔵施設が約26キロで、各社とも横浜断層による地震の最大規模をマグニチュード6・8と想定している。
 東京電力は06年9月、東通原発1号機の原子炉設置許可申請をした際、横浜断層を「変位はみられず活断層ではない」と評価した。
新潟県中越沖地震を受け経済産業省原子力安全・保安院が再調査を指示していた。
★★★
 中越沖地震・岩手宮城内陸地震など最近の地震では活断層が見つからなかった場所で大きな地震が起こったことから、活断層の詳しい調査が行われようとしています。この報道もその一環ですが、活断層と認定しても「基準地震動を上回らない」と云うことならば、何のために再調査しているのか良く分かりません。また、新しい安全評価の基準として中部電力浜岡原子力発電所のサイトを見ると「岩盤上の最大加速度は800ガル」として考えられています。
http://www.chuden.co.jp/torikumi/atom/more/jishin_hyouka.html
 果たして4000ガルもの加速度が記録された地震現象に対して、原子力発電所が本当に安全であると言えるのでしょうか、大変疑問に感じます。
 また、活断層の詳細な調査と言うものがいかなる意味を持つのかも疑問に感じます。
 以下の文章は朝日新聞に投書したものですが、採用になりませんでした。

活断層調査への疑問
 報道によれば「岩手・宮城内陸地震のような内陸直下型地震の頻発を受け、政府の地震調査研究推進本部は、現在、確認されている全国約2000の活断層について、位置を正確に把握し、想定される地震の規模を公表する方針を固めた。」ということである。
こうした活断層調査の結果がどのような意味を持ち、どのように生かされているのかを疑問視している読者は多いと思う。たとえば今回の地震後の調査で初めて明らかになったという断層の位置が、事前に判明していたら、地震は予知ができたのであろうか。正確に把握できれば、地震の規模と発生確率がより正確に推定できるのだろうか。大体、発生確率がゼロであったのに、このような大きな地震が発生したという報道を聞いた時点で、地震調査研究というものに疑問を抱いた人が多いのは当然であろう。
 私はかれこれ二十年近く地震の発生メカニズムを研究してきた。その間に官学の地震研究者が地震の予知に成功したという話を聞いたことがない。活断層調査の重要性がうたわれ、40年近く断層の調査研究が継続してきたにもかかわらずである。
 私が研究してきた内容は、昭和の初頭に活躍した小川琢治、石本巳四雄らの先覚者が唱えてきたマグマ貫入理論というフンボルトの地震観にもとづくものである。当時はマグマの貫入する原因が明確ではなかったというだけで、原因が水素ガスの爆発と爆縮という化学反応エネルギーであると見直すだけで、地震に伴う諸現象の発生を説明できる合理的なものである。この水素爆発・マグマ貫入理論によれば、断層とは、巨大地震の爆発によって生じる地皮の傷に過ぎないという結論になる。つまり、断層は地震の傷痕であり、断層地震説は、原因と結果の因果関係を取り違えているということになる。大きな地震が起きるたびに、未知の活断層が隠れていたという報道に接するが、そもそも存在しなかった傷が今回の地震で作られてしまったというのがこの理論からの帰結である。
 そうであるならば、傷痕をどれだけ正確に調査したところで、予知に結びつかないのは当然であろう。地震は水素ガスの爆発であるならば、地震予知には水素ガスの濃度を計測する観測網を全国に敷き詰めればよいことになる。神戸の地震では30000ppmという高濃度の水素ガスが地震後に観測されたということだから、現行の地震計のそばにこれ(水素ガス濃度計) を設置するだけで、活断層調査費よりも格段に安価な予算で、地震予知が可能になるかもしれない。

1506
2008-10-02 (Thu)
地震と高熱水の関係
 1999年に起こった台湾大地震([1391]、[1392]参照)で震源断層に高温の水が存在していたことが分かったと毎日新聞が報道しています。

毎日新聞2008年9月15日朝刊より


報道では「水の沸点を上回っているが、高圧だったために液体として存在したと見られる。」とか、「断層のずれで摩擦熱が発生、水圧が上昇し岩石の強度が低下する。これが断層のずれを大きくし、被害を拡大すると言われてきた。だが、水の存在は未確認だった。」という見解が述べられ、その水が確認されたことから、水の存在が「70キロ離れた地表で約8mもの段差が起こった」原因であると述べています。
 分析した石川剛志リーダー(地球化学)は「現在の断層付近の地温は50度以下で要因は断層のずれによる摩擦熟以外考えられない」と話しています。
しかし、摩擦熱が発生するのには、断層が繰り返し運動をするか、長い区間を一定方向に運動するかしないと発生しません。地震が起きる前にこのような摩擦熱が発生することは考えられません。摩擦熱が発生するとすれば、地震後にしか起こりえない筈です。
 この熱は摩擦とは無関係のもので、マグマが上昇してくるために起こる熱の移動であると考えるのが極自然の考え方です。
 私の考えでは現在は50度以下の水温になっている震源付近ですが、地震当時はマグマの上昇によって高温度になっていて、水の解離度が高くなり、解離ガスが大量に貯留されていたと解釈しています。
 地震の発生機構に関しては解離水の爆発による地震の発生機構を参考にしてください。
地震と水の関係については色々な考えが提起されていますが、因果関係を無視したり逆転して考えているケースが多く見られます。

プレスリリースはこちらを参照:http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20080915/index.html
上記のサイトと東大地震研究所の図面とを拝借してフィリピン海プレートの怪として図示させていただきました。

洋研究開発機構と東京大学地震研究所瀬野教授のサイトにある図面から加工させていただきました。

★日本付近では潜り込み、台湾付近では乗り上げる・・・そのようなプレートが存在するものでしょうか?中間ではプレートが裂けてしまうのでしょうか?
★誕生する場所が存在しないようですが、どのように解釈するのでしょうか?

お分かりになる方があったらご教示お願いします。

 この疑問点に関して、私はプレートテクトニクス理論の矛盾・破綻を示すものであり、プレート論を捨てて、地震爆発論と言う古くから存在したけれども、廃れてしまったパラダイムを採用する必要があると考えています。地震学ならびに地質学など地球科学を専攻される方のご意見をお聞かせいただきたいと思っております。

1507
2008-10-06 (Mon)
関東圏で地震が多い理由
関東圏の直下に100キロ四方の岩盤が形成されていて、地震を頻繁に起こしているという研究が[1506]に紹介した海洋開発研究機構の論文が載ったのと同じ科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に掲載されるそうです。
読売新聞ニュースから紹介します。

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関東直下に「地震の巣」…100キロ四方の巨大岩盤が形成
10月6日3時18分配信 読売新聞
関東地方で地震が多発するのは直下にある100キロ四方の岩盤が原因であることが産業技術総合研究所などの解析で分かった。

 巨大な岩盤の発見は、都心に壊滅的な被害をもたらす恐れのある首都直下地震の発生メカニズムの解明に役立つと期待される。科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に6日掲載される。

 産総研の遠田晋次主任研究員らは、関東地方周辺で1979〜2004年に起きたマグニチュード(M)1以上の地震のデータ30万個で地下のプレート(板状の岩盤)の位置関係を調べた。その結果、陸側のプレートに、東から沈み込む太平洋プレートと南から沈み込むフィリピン海プレートに挟まれる形で、栃木県南部から神奈川県北部までの深さ40〜100キロに新たな岩盤を確認。地震は、岩盤といずれかのプレートとの境界で集中して起きていた。

 地下を伝わる地震波の速さから岩盤と太平洋プレートの性質は同じと判明。岩盤は太平洋プレートの上面がはがれた断片と推定された。遠田主任研究員は、1855年のM7級の地震は岩盤とプレートの境界で起きたとみており「将来の首都直下地震もこの境界で起きる可能性が高い」と指摘している。
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遠田氏の研究内容の詳細は以下にもあります。
関東直下の新しいプレート構造の提案
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20050610/nr20050610.html

 さて、この研究にはいくつかの疑問を抱かざるを得ません。
これまでにも述べてきましたようにプレート論を支える海洋底拡大説が破綻していること以外にも、疑問が多くあります。

@:潜り込んだフィリピン海プレートはどこへ行くのでしょうか。 太平洋プレートはマントル内部でマントル物質に変化して循環するということですが、フィリピン海プレートはどこへ消えてしまうのでしょうか。また、[1506]にも述べたように、台湾周辺では陸上に乗り上げるような挙動をすることになっていますが、剛体であるプレートがそのように動く筈はありません。そもそも誕生する場所も無いプレートにそうした意味を持たせることがナンセンスです。
A:太平洋プレートがなぜ剥がれてブロック化するのでしょうか。剥がれるというメカニズムが理解できません。プレートは冷却して自身の自重で潜り込んでいくと説明されていますが、なぜ剥がれてプレートの上部に移動するのでしょうか。
B:関東周辺で1979〜2004年の26年間にM1以上の地震が30万回も起きているそうですが、その原因がどうしてプレート説で説明できるのでしょうか。換算すると一時間20分に一回の割合で発生していることになりますが、そのように頻繁に歪が蓄積し開放されているということは信じ難いことであります。

 実際には、関東圏の地下にも、マグマが流れていて、そこに存在するマグマ溜りの内部で、小さな爆発現象が繰り返されていると考えるほうが合理的だと思います。各地の温泉地には地獄谷という名称の泥池がありますが、そこで起こっている爆発に類似した【解離ガスの爆発・爆縮現象】が毎日のように起こっていることが関東圏に地震が多い原因ではないかと思います。

1508
2008-10-20 (Mon)
地震関連のテレビ番組から
本日(19日)「近未来ジキルとハイド」というテレビ番組で地震関係の話題を放映したようです。後半の北大森谷教授の「的中率100%の地震予知」の部分以降しか見ることができませんでした。
案内記事を読むと活断層を動かす犯人は「地下マグマ」という記事があり、トンデモナイ解説が書いてありますので抜粋して紹介します。
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地下マグマで地震を予測できる!<注目される活断層研究>
※活断層…プレートの活動で常に圧縮を受けている地殻がその力に耐え切れずにズレた傷跡。

ズレる際の激しい衝撃が「活断層型地震」。
一度ズレた断層は今後もズレる可能性がある。

今年発生した岩手・宮城内陸地震は、今後300年以内にズレる確率が0%と考えられていた断層帯がズレて起きた、まったく想定外の地震だった。

<地下マグマによる地震発生メカニズム>
じつは、活断層を動かす犯人は「地下マグマ」。

※地下マグマ…地球の奥深くにあるものではなく、浅い所を漂いながら活断層に影響を与えるもの。
マグマに含まれている水分が、内陸地震発生の鍵。

深さ100キロ位から上昇する地下マグマの一部は、火山のマグマ溜まりに吸収され、それは地震の原因にならない。問題は、途中で固まってしまう地下マグマ。

これは、もともと水分を含んでいるため、固まる時にその水分を吐き出す。マグマの吐き出した水分が、断層に入ることによって断層が滑りやすくなる。
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以上が抜粋した記事ですが、下線を引いた部分は新説?のような気がしてなりません。活断層の解釈で「プレートの押す力に耐え切れずにズレた傷跡」というのは定説とは違います。定説では断層は傷跡などではなくて、地震の原因そのものの筈です。断層が傷跡ならばそれは地震の結果であり、原因と結果の因果関係が逆転してしまいます。その意味で新説になるはずであります。

 また、マグマの吐き出した水が、断層に入ることによって滑りやすくなるという解説も新説のように思えます。マグマがどうして水を吐き出すのか良く分かりません。地震爆発論(石田仮説)では、「マグマに含まれる解離状態の水が地震という爆発現象によって結合状態の水に戻る。」、これが海嶺付近で見られる熱水の湧昇現象(ブラックスモーク)であるとしています。
 定説では、地震の原因は蓄積された歪が限界に達して開放される現象ということになっています。マグマが存在する周辺の温度は高温であり、岩石が長期にわたって弾性を持つことは困難なはずで、長期的に見れば変形し、歪を蓄積することはありません。また、これまでにも述べてきました(セミナー[1393])ように、滑るという現象は破壊ではありません。一方新しい断層が発生するときは明らかに破壊現象です。
 定説地震学には大きな矛盾が存在し、勝手な解釈がまかり通っています。当セミナーでは地震は爆発現象だと考えています。

 さて、番組の後半の部分では森谷教授の地震予知の話がありました。これも案内記事を抜粋して紹介しておきます。
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<的中率100%!地震予知のスペシャリスト>
北海道大学 地震火山研究観測センター 森谷武男博士。
過去5年間、北海道・日高山脈で起きた約50回の地震、全ての予知に成功!
6年前から国の支援を受けて北海道全域の研究を本格的に開始。
地震予知の鍵を握るのは『電波』!
博士の研究によると、普段は遠くて受信できないはずの電波(FM放送など)が受信できると、地震が来るという。

<異常電波のワケ>
地震発生前には、その前兆として地中で地盤に何らかの圧力が掛かり始め、地上で静電気が発生する(NASAの研究でも実証済み)。
その静電気が電波に影響を与え、遠くまで届くようになると考えられる。

<予知の方法>
・場所⇒異常電波を送った発信施設の、本来電波が届く範囲内。
 複数の発信施設の範囲が重なるエリアに震源地を絞り込む。
・時期⇒異常電波が途切れてから10日前後。
・大きさ⇒過去のデータをもとに、異常電波が続いた期間から予測。
<予知ドキュメント>
取材期間中、震源地を青森東方沖とする北海道での地震予知が的中!

【9月11日 午前9時21分 十勝沖地震 震央マグニチュード7】
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 森谷教授が日高山脈で起きた地震を100%予知できたというのは信用できる話であろうと思います。なぜそのような現象が起きるのか、その原理は不明であっても、予知することは可能であると思います。
 かつて高木式磁力計が地震前兆を捉えているのに、現象を起こす原因が不明であるから「非科学的」であるとして葬り去られましたが、(ニューオフィス545556参照)国会での審議では素人である政府委員の方から、

今日の学者の皆さんのやっていらっしゃることは、これはおかしい、何の原因であろうかという疑問に発して、それを解明しようというところに、すべての学問は出発しておると私は思う。何か知らぬ、偶然が一致する、その事実は認める。(略)それは認めて、こういう現象は認めておるが、その現象の原因の原理がわからぬから飛ばしてしまう、そういうことで学問が進むでございましょうか。

という叱責を受けています。
現在でも、理論が存在しない現象を扱うのは非科学的であるという間違った慣習が地震学会にはあるのでしょう。森谷教授が「この研究をやっているのは私一人ですから、北大に来て手助けしてください。」と学生さんに呼びかけておられたのが印象的でした。
一人でも研究を実施される勇気ある森谷教授ですが、電磁波の発生する理論に関しては静電気説とか断層の摩擦による効果などをあげておられ、プレート説や断層説から飛び出して発想する勇気は見せておられないようです。
 私は熱解離した水素と酸素の混合ガスがプラズマ流としてマグマの流路や岩盤の亀裂内を高速度で移動するために起こるMHD発電が原因で発生する電磁波現象ではないかと考えています。

 森谷教授の予知方法が高木式磁力計のように葬り去られることなく、より広範に採用されて発展し、地震予知が可能になることを祈っておりますが、そうなっても理屈が分からない限りは地震学会のメインテーマになることは期待できそうにありません。

 したがって石田地震科学研究所では「地震の謎」究明に直結する方法として、すなわち地震爆発論の証明のためにも、直接水素ガスの観測に挑戦しています。篤志の方からいただいた寄付金によって近日中に携帯型の水素検知器が納入されます。断層地帯での計測を実施して、何らかの方向性を見出したいと考えているところです。

1509
2008-10-27 (Mon)
水素濃度計ガスマンによる機器の検定
 サイトのトップにも表示しましたが、水素濃度計ガスマンH2が納品されました。寄付をいただいた方々、ならびに安価に納入していただいたエムケー・サイエンティフィック社に御礼申し上げます。
 さて、これまで計測を行ってきましたフィガロ社製TGS821との対応関係を調べてみました。TGS821では[1257][1258]で紹介しましたように、内部抵抗値を低濃度用の56.4kΩと高濃度用の1.2kΩに切り替えができるように加工しております。従来は低濃度用として計測値を電圧表示で掲示してきました。縦軸の電圧と水素濃度の関係は検定しないままで経過してきましたので、その対応関係をチェックする意味もあり、実験用水素ガスボンベを購入して調べた結果を紹介します。
下の図は高濃度用(内部抵抗値が1.2kΩ)に切り替えたTGS821とガスマンH2を同じタンク内に設置して水素ガスを封入した結果です。

ガスマンの計測可能範囲である0〜1000ppmの間では両者はほぼ線形関係にあることが分かりました。この検定表によってTGS831の出力を水素濃度に変換することが可能になります。
一方、低濃度用(内部抵抗値が56.4kΩ)について同じ検定をした結果が次の図であります。

GTS821の計測可能範囲(100ppm〜2000ppm)である100ppm以上ではほぼ直線関係があるようですが、それ以下ではガスマンが0表示になっても、TGS821は1volt前後の数値を表示します。したがって、4.25volt以下の表示の場合には、信頼度が低いと見なければいけません。これまでの観測値はすべてそれ以下の数値でしたから、100ppmを超える水素濃度になったことはないということになりますし、水素濃度の概略・目安を見ていたことになります。
 ガスマンH2は充電式電池で作動しますので、今後は断層付近での計測を実施したいと思います。神戸の地震のあとで20000〜30000ppmという高濃度の水素が観測されたということですから、大地震の前兆としては100ppmをはるかに超える水素濃度になるのではないかと思っています。

[1265]で紹介した岐阜県吉城高校地学部の研究では以下の記述が見られます。

「H2濃度に関しては、群発地震の前まで0.5〜2%(5000〜20000ppm)の間で変化していた値が、地震が始まると、0.5%で変化無く推移した。」

1510
2008-11-03 (Mon)
トランポリン効果と地震爆発説
岩手・宮城内陸地震においては、4022ガルが記録されましたが、これを防災科学技術研究所が「トランポリン効果」と名付けたそうです。すでに[1429]などで、これは地震爆発でしか説明できない現象であることを述べておりますが、いつまで断層地震説・プレートテクトニクス理論にしがみついて解釈するのでしょうか、現代地震学はますます闇の中に分け入ってく感じです。読売新聞の報道を紹介します。
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地盤まるでトランポリン、岩手・宮城内陸地震で初の現象確認
11月1日22時55分配信 読売新聞

 今年6月に起きた岩手・宮城内陸地震で、地盤がトランポリンのように震動する現象が発生していたことを、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の青井真室長らが突き止めた。
 地盤が下向きよりも上向き方向に大きく揺れており、こうした現象を確認したのは世界で初めて。現象の詳しい仕組みがわかれば、建物の耐震性向上に貢献できると期待される。米科学誌サイエンスに発表した。
 青井室長は、震源近くの岩手県一関市内で過去最大の加速度となる4022ガルを記録した地震波を解析した。その結果、揺れの大きさは、上向き方向が、下向きよりも約2倍も大きかった。これはトランポリンが沈みこんだ際に大きな反発力で上向きに人を飛ばす仕組みと同様の現象で、研究チームは「トランポリン効果」と名付けた。さらに、1996年以降の14の地震波を分析したところ、2004年の新潟県中越地震でも確認できた。
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以上が新聞報道です。このセミナーでは大きな地震が起きる度に「地震爆発説」に基づいた解説を行ってきました。2004年の中越地震に関しては[869]以下に、2007年の中越沖地震に関しては[1267]以下に、そして岩手・宮城内陸地震に関しては[1428]以下に解説してありますので参考にしてください。

 プレートテクトニクス理論に縛られた地震学は脱皮しないと進歩・発展はありません。そして永久に迷宮から出ることは出来ません。やたらと、新しい「専門用語」を作り出しては分かったような気分になっているだけだと思います。

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