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1551
2009-01-21 (Wed)
最新のホットスポット論?
Nemo氏の主張はこのセミナーが古い資料を使って地磁気の縞模様を議論しているとか、偏ったホットスポット観に基づいてプレート論の批判をしているということでした。学問は日進月歩を続けているし、プレートの移動を示す証拠は山積しており、指摘された件でプレートテクトニクスが否定されるものではない・・・というものでした。そして新地震学ではなく、旧地震学だ、古い地球観のアンシャン・レジームに戻そうとする復古運動だと決め付けておられます。

地磁気の縞模様の件は氏の誤解であることを述べましたが、ホットスポットに関する件で(最新の研究なのかどうかは不明ですが)ネットで調べてみました。
 次図は広島大学大学院総合科学研究科「地球資源論研究室」の下記サイト
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/index.html
に載っていたものです。図中の日本語はセミナー担当者が書き加えたものです。

広島大学大学院総合科学研究科「地球資源論研究室」サイトより

広島大学大学院総合科学研究科「地球資源論研究室」のサイト
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/index.html
より

火山のマグマは海嶺と海溝とホットスポットでしか生成・供給されないことになっていますが、ホットスポットにも三種類あり、さらにスーパープリュームというものからも供給されるというのが新しい解釈のようです。
しかし、固体マントルの内部をどのようなメカニズムで上昇するのか、タイプ1と2のホットスポットはどのような仕組みで固体マントルから生成されるのか、単なる寓話のようで、メカニズムが存在しないのではないかと思います。 

 マントル熔融論の立場でなら、スーパープリュームのようなものはマントルの対流として説明が出来ます。また、地殻内部のマグマの流れは、熔融マントルから上昇する熱で岩盤が融解し、火道が出来るという説明が可能です。

下段の図では、潜り込んだ海洋プレートがスタグナントスラブを作り、それが千切れてメガリスとなるということですが、この話にも説得性がないように感じます。固体であるプレートが固体であるマントルの中を千切れて落下していくという話はどう考えても寓話としか思えません。

 マントル熔融論では対流としての下降流が存在し、下降流の一部に深発地震面という帯状の一帯を形成する話になります。
[1203] 映画「日本沈没」の解説からでも紹介しましたが、スラブの動きを計算機でシミュレーションしている吉岡祥一・九州大助教授は「スタグナントスラブが切れ落ちるところまで模擬するのは工夫がいる。」と話しています。かなり工夫をしないと、このような計算結果は得られないようです。数値とか係数とかを少し変えるだけでシミュレーションというものはどうにでも変化することは数値計算をやったことがある人には自明の事柄であります。計算機が出した結果を全てが真実であるかのように受け取ることは危険であります。

このセミナーで7年間にわたって展開してきたことがアンシャン・レジームに戻そうとする復古運動なのか、全く新しい地球観の創造運動なのか、それは時代を経ないとわからないことだと思います。

1552
2009-01-22 (Thu)
地震が爆発現象であることを示すトランポリン現象
独立行政法人防災科学技術研究所が、昨年の岩手・宮城内陸地震の際に一関西観測点で、4000 gal を超える大きな強震波形を記録した話題は[1429]で、またトランポリン効果と名付けたという話題はすでに[1510]「トランポリン効果と地震爆発説」で紹介しました。
また、地表面で激しい震動になることは拘束のない自由な動きが出来る「自由端」になるからであるという説明も「1427」「断層は爆発破壊で自由端になった場所」で、すでに解説してあります。
この話題に関して、世界で始めて加速度波形が非対称性(片揺れ)になる現象を発見した、そしてその効果をトランポリン効果と名づけた、という内容でアメリカのサイエンス誌で発表したという防災科学技術研究所のプレス発表の資料がありますので、内容を抜粋して紹介します。
タイトルは
「大加速度地震動時における
片揺れ現象(トランポリン効果)の発見」

となっています。


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独立行政法人防災科学技術研究所プレス発表資料より

・ この加速度記録において最も特異な点は、地表における上下動成分が明らかに非対称な波形形状を示している点であり、上向きの振幅は下向きの2.2 倍以上あります。一方、地中における上下動成分における包絡形状はほぼ上下対称であり、地表記録に顕著に見られる非対称はごく表層における現象であると考えられます。
・ 他の記録において、同様な現象が見られるかどうかを確認するため、(略)データベースの中から、1G 以上の加速度を記録した 14 個の地震記象を解析したところ、そのうちの2つの記録( 小千谷で観測された 2004 年新潟県中越地震、東成瀬で観測された2008 年岩手・宮城内陸地震)において、明瞭な非対称性が認められました。このような非対称性が生まれる条件は今のところ分かっていませんが、今回発見された非対称性は他の地震記録にもみられることから、大加速度の条件下で比較的一般的な現象であることが示唆されます。なお、逆の非対称性(下向きが大きい)のケースは見あたりませんでした。

・ このような現象の成因として、表層付近の地盤が大加速度の入力により弾性限界を超えてしまい、部分的に粒状体的な振る舞いをするモデルを提唱し、トランポリン効果と名付けました。
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 以上が抜粋したものです。図を見て分かるように、地中では上下方向と水平方向の加速度に大きな差はないのですが、地表面では上下成分が大きくなり、しかも上向きの加速度が大きくなっているのが分かります。これは地震が爆発現象であることを如実に物語っています。4000galを超えるような加速度が生じる自然現象は爆発現象以外には考えられません。トランポリン現象は地下で爆発が起きたことを示しています。
 「非対称性が生まれる条件は今のところ分かっていません」・・と云う記述ありますが、爆発点(震源)の真上(震央)近くに加速度計を設置すれば、そして爆発の方向が真上を向いていれば(これが直下型地震の正しい解釈・意味ですが)、上下方向の加速度の波形は非対称になるでしょう。
 さて、[1427]で解説したように、地表面は自由端ですから、爆発現象に対して激しく変動してしまいます。地中深部になるほど拘束端になって変動が制限されるので、加速度も小さくなります。手のひらに載せた豆がゆっくりした上下動では手のひらから離れることはありませんが、980galを超えて激しく動かせば空中に放り上げられるようになるのと同じ現象です。
 地震は爆発現象であることを認めれば、ごく当たり前の現象であります。新潟の地震で大根がピョンピョンと大地から抜け上がって白兎が跳ねて遊んでいるようだった、という目撃談([1248])がありますが、震源の真上ではこうした状況になります。これが直下型地震の怖いところですが、爆発の方向が地表面に向いているからです。爆発が水平方向ならば震源の真上でも震動による被害は大きくならず、直下で起きる地震であっても、直下型地震と呼ぶべきものではありません。その代わり地盤が沈降したり、大規模な地震ならば瓜生島のような海没ということにもなるわけです。
以下のコメントは、[1510]にも書いたことですが、もう一度書いておきます。
プレートテクトニクス理論に縛られた地震学は脱皮しないと進歩・発展はありません。そして永久に迷宮から出ることは出来ません。やたらと、新しい「専門用語」を作り出しては分かったような気分になっているだけだと思います。


1553
2009-01-24 (Sat)
続・仮説の修正
 
深発地震の被害が小さい理由
[1464]の「仮説の修正」において、「地震波はマントル内部を通過していない」というこれまでの主張を修正しました。それは、[1356]で区分したAの波(遠地性浅発地震)の到達が理論に合わないように見えるのは、一箇所での波形記録を見ているからであって、何点かの記録を並べた表示で見れば理論に合うことが分かるという指摘があったからです。確かに東北地域で起きた浅発地震と深発地震の波形記録を並べてみると、少なくともP波はどちらも理論に合っていることが分かります。つまりマントル中を伝播していると判断せざるを得ません。
 そこで、マントルは熔融しているが粘弾性体であるから、爆発的な短周期成分については弾性体(固体)として、地震波を伝播させるという解釈をしました。密度が大きく、粘性の高い流動体であるから、高圧下での爆発的現象による短周期振動に関しては固体的に振舞うという考え方です。しかし、あくまでもマントルは融解していると考えています。
 しかしそれにしても[1356」の@やAの浅発地震と、Bの深発地震とでは波形が違いすぎます。
マントルが固体ならば、あるいは粘弾性体として地震波を伝播させているのなら震源の深さだけでこのような違いがあるはずがありません。
 そこでもう一度再検討して、[1325]の内容を書き直しておきました。同じ文脈ですがここでは、深発地震の被害は何故小さいのかという視点で説明します。震源が深いから被害が小さいのだ、というだけでは説得力がありません。
上に示した東北地方の地震に関しても言えることですが、[1325]に示した浅発地震と深発地震の波形記録でも同じですので、それを使って何故深発地震の被害が小さいのかを説明します。


左側はフィジー諸島南の海域で起きた深発地震(深度507km)で、右側はマリアナ諸島の南海域で起こった浅発地震(深度10km)です。
深発地震では直達するP波とS波が明瞭に記録されていて、後続して大きな振動が続かない全体的に一定振幅の平易な波形であります。実は大きな振幅の後続波がないから相対的に明瞭に見えるわけです。
 後続する震動がないのは深発地震が溶融マントルの内部で起きる地震であって、震源ではP波しか発生しないこと、つまりマントルが融解しているために震源でS波が発生しないことが原因だと思います。それで深発地震は被害が出ないのであろうと推定できます。
 深発地震の記録でS波として現れているのはP波が地殻に衝突する際にP波の衝撃から誕生するものであろうということ
述べてきました。しかし、そうではなくて(修正した考え方で)、粘弾性体であるからマントル中でもS波が発生するのであると想定しても、地震波のエネルギー(振幅)としては固体である地殻内部の爆発に比べて数パーセント程度であろうと推察されます。それが、地震被害を生まない理由でしょう。

 一方右側の浅発地震(深度10km)は深発地震に比較して、大変複雑で大きな振幅の波形が後続しています。また、直達するP波とS波は深発地震とよく似て振幅が小さいですから、粘弾性体であるマントル内部に進入するとしても、やはり数パーセントのエネルギーだけで、残る90%以上のエネルギーは反射して地殻内部を伝播していると考えられます。それが原因で大きな震動が長時間継続するのではないでしょうか。
 つまり、地殻内部での爆発現象(浅発地震)では爆発と同時にP波もS波も誕生します。そして、数パーセントのエネルギーはマントル内へ放出して、定説どうりの伝播をしますが、ほとんどのエネルギーは地殻内部で反射と屈折を複雑に繰り返して、長時間にわたって震動するのであろうと推測できます。
 定説が正しいとすれば深発地震と浅発地震とで、このような違いは起こらないはずであります。
 地震波の走時表を決定している実測のデータはこの数パーセントのエネルギー(振幅)が到達する時刻を読み取って作られていることになるのでしょう。


1554
2009-01-24 (Sat)
仮説の修正内容を点検
[1465]「地球トモグラフィーの理解」において、以下のような主旨のコメントを書きました。
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「マントルは弾性体としての性質をも持つ」と解釈すれば、地震波という爆発による振動を伝播させていると言える。したがって、トモグラフィーの計算そのものは成立するが、その結果の解釈に疑問が残る。計算の結果を見て、プレートの潜り込む姿であるとか、スタグナントスラブ、メガリスというプレートの一部分が存在しているという解釈はおかしい。
―――――――――――――――――――――――――
 このコメントで「トモグラフィーの計算そのものは成立する」と書きましたが、計算の前提にあるマントルが固体であるという仮定は完全に成立するわけではありません。計算手法であるインバージョン法で仮定する経路で伝播するのはほんの一部のエネルギーであり、大部分のエネルギーは地殻内部を伝播していますので、数値計算の結果はあまり信用できないことになります。
 以上、[1464]で表明した理論の修正とは「一部分の地震エネルギーはマントル内を通過する」ことを認めるということであって、大部分に関しては依然として「地震波の伝播経路に間違いがある」のであり、「[1357]地球トモグラフィーにも根本的矛盾がある」などの地震爆発論としての主張は修正する必要はないということになります。
地震波の走時表に関しては、粘弾性体を通過する一部分の地震波について成立する関係ということになります。

1555
2009-02-01 (Sun)
歪エネルギーが地震を起こすのではない
本日18時に宮城県沖でM5.2の地震(深度20km)がありました。

この地域では[1529]に示したように、深さ10kmで昨年12月にも数回の地震が起きています。最初の地震が起きてから59日しか経っていませんが、このような短時間に歪エネルギーが蓄積されるとは思えません。また五十日間も地震が無かったと言うのは、今回の地震が余震であるという説明では説得力に欠けます。
地震は水が地下の熔融マグマから放出される熱によって解離した解離ガスの爆発現象であって、歪エネルギーが地震を起こしているのではないことを、関係者に早く認識していただきたいと思います。


1556
2009-02-02 (Mon)
水蒸気雲の写真情報
“水蒸気雲”の写真情報を読者から送って頂きました。今年の元旦に西伊豆から静岡・由比方面を撮ったものですが、由比地区近辺の陸上に水蒸気の上昇による雲らしきものが見えています。

水蒸気らしきものは低い丘陵の奥から出ていますから、推定すると図に示すように、国道52号線周辺の一角のように思われます。


 これと類似した現象は伊豆東方沖群発地震が始まる前にも伊東沖で観察されています。
 写真の水蒸気雲らしいものが地震の前兆であるのかどうかは分かりませんが、伊豆東方沖の場合は5ヶ月後に手石海丘で海底爆発が起きていますから、5月くらいまでは注意しておいたほうがいいと思います。
地震前兆である可能性もありますが、そうであるなら、地下水の水位変化や、コンパス異常、電磁波異常、水素濃度の上昇、といった現象も現れるはずですから、科学的な計測とつき合わせて総合的に判断する必要があります。またこの地区に居られる方が宏観現象に関心を持って注意して観察していただくことを願っています。
 地震と雲の関係に関しては、セミナー[986]に述べましたように、それだけで判断することは非常に難しいことを経験上感じております。
 また、本日浅間山が噴火し、活動を始めたようですが、富士火山帯の地下深部でマグマの移動が起こっていることが解離ガスの発生を促しているのかも知れません。浅間山は那須火山帯と富士火山帯の交点付近に位置しますが、岩手宮城内陸地震など東北の地震活動も那須火山帯地下でのマグマ移動が影響していることが考えられます。


 定説によると日本での火山のマグマ生成はプレートの潜り込みが原因である([1536]、[1541])とされていますので、火山の地下でマグマが水平に移動することは想像し難いですが、石田理論ではマントルは熔融していると考えていますので、火山のマグマも地下では連結していて、水平方向に移動することも可能です。

 火山活動が活発化してきている可能性、つまりマグマの移動が起こっているという意味ですが、その一環として由比地区に“水蒸気雲”が現れているという見方もできます。
 断層地震説では“水蒸気雲”などの現象を地震と関連させて理解することができませんが、地震理論も“チェンジ”して爆発と言う観点から考えていただきたいと思います。


1557
2009-02-04 (Wed)
浅間山のマグマ活動から思うこと
噴火した浅間山をGPSで観測すると東京ドーム1.6杯分のマグマが上昇して山体を膨張させたことが判明した、と国土地理院が発表しました。毎日新聞が以下のように報道しています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090203-00000129-mai-soci
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<浅間山>地下マグマ量、東京ドーム1.6杯分 国土地理院
2月3日20時17分配信 毎日新聞
 国土地理院(茨城県つくば市)は3日、噴火した浅間山(群馬・長野県境、標高2568メートル)の地下のマグマ量が、推定約200万立方メートルになると発表した。東京ドーム約1.6杯分に相当する。地上に出たマグマはごく一部で、地理院は引き続きマグマの動向を監視する。
 GPS(全地球測位システム)の観測データをもとに、山体を膨張させたマグマの位置や深さ、体積変化などを計算した。
 その結果、山頂火口の西北西約6キロ地点で、地下深くにあったマグマが、約7カ月かけてほぼ垂直に、岩盤の割れ目などを抜けて深さ約2キロの地中に達したという。また、マグマ量は約200万立方メートルで、中規模噴火とされた04年の200万〜300万立方メートルより小さいとしている。【石塚孝志】
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国土地理院のサイトには次の図面が載っていました。

説明では「(力源は)西北西約6キロ、地下2キロで、ほぼ垂直に板状にマグマが貫入したことが示唆される。」とあります。

@ マグマが貫入するエネルギーはどこから生じるのか。
A マグマが生成されるメカニズムはどのようなものか。

については特に説明がありません。
@の貫入エネルギーに関しては、マグマに含まれる解離ガスの爆発力であろうと考えていますが、定説では説明が出来ないように思います。
A のマグマ生成理論に関しては[1371]で、すでに説明しましたが、ここでは「地球のしくみ」と言う書籍(新星出版、2006年7月)の“マグマができる条件”および“沈み込み帯のマグマ”と題する節などから抜粋して紹介します。内容は明らかに定説の地震発生理論とは相容れないものだと思います。
「地球の仕組み」より抜粋
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マグマができる条件
 日本には狭い国土のいたる所に火山があるが、広大なオーストラリア大陸には火山はほとんど存在しない。これはなぜなのだろうか。地球上に最も大量に存在する玄武岩質マグマを例にとって、火山ができる条件を考えよう。
 噴出したばかりのマグマの温度は1200で程度ある。マグマは地下深部で形成されるが、マグマが発生した場所の温度は、少なくとも噴出時の温度以上であったはずである。すると、地下の温度勾配から類推して、マグマが発生した場所は地下100km程度であったと考えられる。
その場所はマントルに相当し、かんらん岩からできていると推定されている。

図3-3マントルがマグマになる条件(「地球のしくみ」(新星出版)より加工・加筆)

 図3-3に地下の温度の深さ(=圧力)による変化をA線で示した。また、玄武岩質マグマの材料であるかんらん岩の圧力による融解温度の変化をB線で示した。
この図で注目すべきことは、どの深さでもA線はB線の下位にあり、2つの線は交差しないということである。このことは何を意味するか? それは、地球内部ではかんらん岩は溶けない、つまりマグマは発生しないということである。
 (略) 世界の大部分の地域では火山が存在せず、つまり図3-3の通り、地下ではマグマがつくられていないことを示している。逆に地下でマグマが形成されている地域では、どんなしくみがはたらいているのか、それが次の疑問である。

マグマ発生とプレートテクトニクス
 実際の地球内部で図3-3のA線上の点Pの状態にあるかんらん岩が溶けるには、かんらん岩の状態が変化してB線より上に位置することが必要だ。それには次の3つの可能性が考えられる。
@かんらん岩の温度上昇
      (図3-3のP点からX方向の変化)
Aかんらん岩の圧力低下
      (図3-3のP点からY方向の変化)
Aかんらん岩への水の添加
      (図3-3のB線からB’線への変化)
 ところで、火山の分布(那須火山帯、富士火山帯など)は線上に連なっているが、これは、マグマの発生の原因がプレート境界と関係が深いことを示唆している。@〜BのうちABがプレート運動によるものである。

沈み込み帯のマグマ活動
 日本列島の地下には、海溝から海洋ブレートが沈み込んでおり、火山や地震が日本列島に沿うように帯状に分布している(沈み込み帯という)。プレートの沈み込みが日本列島に火山が多い・・・つまり地下でマグマが発生する原因である。
 マグマ発生の条件のひとつ「マントルヘの水の添加」については、図3-3でグラフをもとに説明した。実際には、マントルヘの水の注入口は「海溝」である。
 海嶺で海水に接してつくられた海洋地殻の岩石には、含水鉱物として鉱物の結晶中に水が蓄えられている。海洋プレートが海溝から沈み込むと、地球内部の熱と圧力により海洋地殻の岩石から次第に水が遊離し、上部に横たわるマントルに加わるのである(図3-11)。

図3-11沈み込み帯のマグマ活動(「地球のしくみ」(新星出版)より)

 しかし海溝から沈み込んだばかりの海洋地殻から水が出ても、接しているマントル(図3-11のA点)は、温度が十分高くないため、水が加わってもマグマを発生させることができない。やがて沈み込んだ海洋地殻が日本列島の真下あたりまで来ると、それに接するマントル(図3-11のB点)は十分温度が高くなっており、マントルが部分的に溶け始めてマグマが発生するのである。なお、こうしてマントルからつくられたマグマは玄武岩質マグマである。
 このように、マグマは海溝から一定程度離れた地点の地下で初めてつくられるので、一定程度離れた地点から火山が出現することになる。最も海溝寄りの火山を連ねた線を火山フロント(図3-13)といい、海溝を連ねた線とほぼ並行になっている。

図3-13火山フロント(「地球のしくみ」(新星出版)より)

なお、火山は日本列島上にのみ出現するが、これは海洋地殻がさらに沈み込むと(図 3-11のC点)、海洋地殻が水を全て出し切ってドライになってしまうため、マグマが発生しないのだと考えられる。
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 以上が抜粋記事です。図3-3に関する理解に矛盾があることはすでに[1371]で解説しましたが、海溝付近で取り入れられた「海水」が日本列島の真下あたりまで来ると、マントルが部分的に融解するのならば、この辺りでは地震の原因となるアスペリティーだとか、歪エネルギーの蓄積だとか、弾性反撥だとか言う地震の発生メカニズムに関する概念が崩れてしまうのではないでしょうか。あるとき(A点付近)は弾性反撥が、あるときはヌルヌルの融解現象がというのでは、科学的な合理性と言うものが全く存在しない「思弁的科学」([906]参照)と言われてしまうと思います。B点で部分融解したものが、どうして数百キロもある地表にまで登っていくのかも納得できる説明はありませんし、海洋地殻がC点では水を全て出し切ってドライになってしまうため、マグマが発生しない、と言うのもたんなる「思弁」のように思えます。

地震学は「地震は爆発現象である」「マントルは熔融している」という全く新しい観点から「チェンジ」しないと、「思弁地震学」の泥沼から抜け出せないでしょう。

[906]にも書きましたが、思弁とは「実証・経験によらず、頭の中だけで論理的に自分の考えを組み立てること。」であります。

1558
2009-02-06 (Fri)
四川大地震とダム建設の関係
「四川大地震は建設中の三峡ダムによって引き起こされた可能性がある。」というニュースが英国のテレグラフ紙で報道されています。ただし、「ダムの水圧によって断層に歪を引き起こしたことが原因である」と言う地震の定説論に沿った論旨であり、地震爆発説で述べてきた「ダムの水圧で水の解離現象を進行させて、爆発が起きた」というものとは全く違った観点であります。technobahnの報道を紹介します。地震爆発論の論旨は「地中に水を圧入するのは危険である:後編」を参照してください。
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四川大地震はダム誘発地震だった、英高級紙が異例の報道

2009/2/4 16:58

2008年5月12日に中国、四川省一帯を襲い8万人にも上る死者と500万人にも上る被災者を出した「四川大地震」の原因として震源地の近くある三峡ダムに蓄えられた膨大な貯水の重みが断層にひずみを与えたとする考えが中国国内の専門家の間で広まっていることが3日、英テレグラフ紙の報道により明らかとなった。

 三峡ダムは1993年に着工した中国・長江中流域の三峡に建設中の世界最大級の大型重力式コンクリートダム。2004年からは貯水を開始し、2009年竣工に向けて最終段階に入っていたものとなる。

 四川省成都地理院の范筱(Fan Xiao)主任技術者は、テレグラフ紙のインタビューに応じて「この地域は地震多発地帯となるが、この地域で過去にマグニチュード7以上の地震が発生したことはなく、マグニチュード7.9という地震規模や、その特徴からして四川大地震は過去に例がない特異な地震だった」とした上で「地震の原因としては複数考えられるが、ダムの存在によって地震が誘発されたというのは考えられなくはない」と述べ四川大地震が建設中の三峡ダムによって引き起こされた可能性は排除できないとの見解を示した。

 テレグラフ紙はまた、コロンビア大学・ラモント・ドハティー地球科学研究所のクリスチャン・クローズ(Christian Klose)博士の発言として「(四川大地震を引き起こした)龍門山断層は過去100万年に渡って大きな地震を引き起こしたことはなく、(2004年から貯水を開始した)三峡ダムの水の重みによって断層にひずみを引き起こしたことが、今回の地震につながったのではないかと」とする説も紹介している。

 ダムの存在によって地震が誘発されるという考え方は昔からダム反対論者の間で指摘されてきたもので、必ずしも排除されるものではないが、四川大地震のような大地震の発生原因とダムの存在を結びつけることはかなり突飛な考え方に近く、これまで専門家の間でこうした考え方を真っ正面から取り上げることは少なかった。

 テレグラフ紙の報道が、独断専行型の印象操作報道なのか、あるいは本当にダムの存在が四川大地震を引き起こす原因となったのか、三峡ダムの建設そのものが中国の国家プロジェクトとして進められているということもあり、今のところは外野の研究者が得られる情報は極めて限定されている。
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以上がtechnobahnの報道です。
四川省の地震が三峡ダムの影響ではないのかと言う話題はすでに[1401]〜[1403]で述べたように、地震直後から取り沙汰されていました。
「“三峡ダム計画”と言葉を変えれば、その実態は数百のダムの集合体とも言うべきもの」だそうですから、この一帯には破損した紫坪埔ダムを始め多くのダムがあるわけです。報道されている中にはtechnobahn記事中のChristian Klose博士がこの紫坪埔ダム(Zipingpu dam)の建設が地震を起こしたのではないかと述べているものもあります。紫坪埔ダムも三峡ダム計画の中の一つとして扱われているのかもしれません。 そうしたダム群の貯水から押し出される地下水の移動が解離層を乱し、解離ガスの爆発という現象を引き起こしたという可能性は否定できません。「地中に水を圧入するのは危険である:前編」で紹介した島村氏もそうですが地震学者は、歪が引き起こす破壊という地震原因論に拘っています。しかし、地震直後に震源地付近で撮影された映像に流れた土煙を上げる衝撃などは明らかに爆発による破壊を推定させるものです。
[1402]で述べた地震爆発論による解釈を以下に再掲しておきます。


「ダム建設で地震を誘発するのは地盤を破壊して断層を滑らすからではなく、解離ガスを発生させて爆発を起こすからです。たしかに、海外では100メートルを超えるダム建設で地震が起こらないケースもあります。これはヒマラヤ奥地のようにマグマが地下深部にある場所だからです。日本のように、マグマが浅いところに存在する火山帯では100メートルを超える貯水は慎重に水位の調節をしないと危険になります。地下深部の解離層を不安定にするような急激な水位変化は危険であります。地震の発生理論が間違っているために、なぜ日本では危険なのか、なぜ水位が問題になるのかなどが理解されていませんが、地震爆発論ならば、火山国の日本で高水位のダムを建設することの危険性、CO2を地下に圧入することの危険性が理解できます。」

四川省の地震の原因が三峡ダム本体や紫坪埔ダムをはじめとするダム群の貯水から発生する水圧によって地下の解離層が乱され地震を誘発した可能性は十分に考えられるところです。

1559
2009-02-11 (Wed)
スノーボールアースはあり得ない
 地球はこれまでに、証拠があるだけでも4回の氷河期を迎えたことになっています。
 一番古いのは原生代末期の7億5千万年前頃の氷期で、過去10億年のなかでもっとも厳しかったとされています。その時は氷が赤道まで覆いつくし全地球が凍結してスノーボールアースを作り出したと言われています。
 以前NHKスペシャルで、海も陸も凍ったという話を放映していましたが、生物学者からは無理な話だと否定する意見が出されたことを[1130]で紹介しました。

この話は赤道直下のナミビアでの調査で、6億年前の氷河の痕跡が見つかったことから、当時はこの地域まで氷河が発達し、地球全体が氷漬けになったのだ、と結論付けているのです。
このセミナーで何回も述べてきましたが、地殻移動を認める石田理論で解釈すれば簡単な話です。次図に示すように6億年くらい前のある時には現在のナミビア砂漠辺りが極地域になり、氷冠ができて、氷河が発達したということです。Aの状態からBの状態に移行する間に海の水位は変動しますが、地球の歴史から見ればほんの瞬きするような時間です。

現代の地動説である地殻移動・ポールシフトを認めれば、なんでもない地球の歴史の一コマと言うことになります。
 新地動説を認めないで謎解きをしようとすると、「凍結したきっかけは大気のメタンが酸化して無くなり、それによる温室効果が無くなって冷却した。終了したのは火山の噴火で二酸化炭素が出てきて温暖化したからである。」という「思弁科学」が出てくることになります。[1130]に紹介した角皆先生の言葉を借りれば「ずいぶん無理な話をつなぎ合わせたものだ。」ということになります。

 そもそも6億年とか7億年いう年月は気の遠くなるような時間ですが、その一割程度の7千万年の間だけでも、図に示すように地球磁場は170回ほどの逆転をしています。

図に示す地球の平均気温がどのような方法で測定されているのか知りませんが、地球の姿勢を不動であると考えて、固定点での物理量から推定しているのであれば、その固定点が極地入りしたときには氷河期という推定が下されてしまいます。しかし、それまで極地だった地方は温暖化していますから、地球全体がスノーボールになるようなことはありません。太陽が一定の活動をしているのなら、地球全体がスノーボールになるようなことは想像できません。生物学者も「生物進化に係わる既存の一般常識からも首を捻るところが多く、不審に思っていました。」([1130])と述べています。全球凍結とは確証的データは得られていない「思弁」なのだろうと思います。

 また、170回全てが地殻移動現象であったとは言えないとしても、どの大陸にも海底でしかできない地層が存在すること、海底鍾乳洞の存在、などから考えて、大陸規模での隆起と沈降は必ずあったはずです。また、南極大陸にも恐竜の化石がありますから、南極は温暖な地域にあったことも明らかです。スノーボールアースという「思弁」よりは、物的な証拠となりえる地層や化石が支持している大陸規模の浮沈と地殻の滑動を採用するほうが、地球の謎を簡単に解けると思うのです。[1074]で紹介したように、アインシュタインが
「初めてハプグッド氏からの手紙を読んだとき、私は強い衝撃を感じたことも事実である。ハプグッド氏の考え方は今までにはなかった新しいもので非常に簡潔でわかりやすく、・・・・さらに実証性が高まれば・・・地球の地表の歴史に関する、他のどんな説よりも重要な説となるであろう。」
と賛辞を送ったのも、「地球の地表の歴史」を解き明かす重要な説となることを認識していたからであろうと思います。

1560
2009-02-15 (Sun)
静岡・清水区で夏日観測
昨日(14日)は先日水蒸気雲が観察された静岡・清水区([1556]参照)で夏日となりました。
関東・東海地方を中心に105地点で2月としての最高を記録したようで、各新聞が報じています。

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http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090215ddm041040056000c.htm
気温:各地で2月最高を記録 静岡・清水26.8度、東京都心23.9度
 日本海から北海道を通過した低気圧に南から暖かい空気が流れ込んだ影響で、14日は全国的に気温が上がり、気象庁の約960カ所の観測地点のうち、関東・東海地方を中心に105地点で2月としての最高を記録した。
 気象庁によると、最高気温を記録したのは北海道から九州にかけての29都道県。
 特に晴れた関東・東海地方で気温が上がり、静岡市清水区(26・8度)▽神奈川県小田原市(26・1度)▽千葉県茂原市(25・7度)−−など10地点で夏日になった。
 東京都心も平年を13・9度上回る23・9度まで上がった。6月下旬並みの陽気になった静岡市葵区の公園では、せせらぎに入って遊ぶ子供もいた。
 15日は暖かい空気が残るが、16日から再び冬の寒さが戻る見込み。【前谷宏】
毎日新聞 2009年2月15日 東京朝刊
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南から暖かい空気が流れ込んだ影響・・・という認識のようですが、それだけならいいのですが、静岡在住の方はコンパス異常を含めて宏観異常に気をつけていただきたいと思います。因みに名古屋でコンパスが西へ4度ほどずれています。
これだけで地震前兆であるとの判定はできませんが、地下深部のマグマの動きに変化があるのかもしれませんので、慎重な観測の継続をお願いします。観測結果は地区別の記録簿へご記入をお願いします。

1561
2009-02-18 (Wed)
徳山ダム上流部分での地震
 先ほど起きた福井嶺北付近の地震は、震源が岐阜県との県境付近にあり、徳山ダムのダムサイトから19km、ダム上流端からは10km程度の位置でした。

 この地震がダム建設の影響であるとは断言できませんが、すくなくとも、太平洋プレートが日本列島の載っているユーラシアプレートを押しているために、それによる歪が蓄積されて起きた地震という認識は捨てたほうがいいと思います。

 月面には海も無く、プレート活動もありませんが、地震(月震)が起きています([1417]参照)。完全には冷却し切っていない、内部に熔融マントルが存在していて、その内部で解離層が乱れて地震を起こしていると考えられますが、地球内部にははるかに多い熔融マントルが存在します。その地球マントルの動きに影響を与えるような、大ダムや、地下空間への人工的工作については、解離層を大きく乱すことは無いか、解離ガスを大量に発生させることは無いか、など「地震爆発論」からの検討を加えるべきであります。
追記:M2.5の小さな地震ですが全く同じ場所で起きています。群発地震にならなければいいのですが、ダムの貯水と関係があれば、大きなダムでよく起きる群発地震になる可能性もあります。群発になるようならば、解離層が安定するまでの間は貯水の水位を大きく変化させないように運用することが求められます。

1562
2009-02-18 (Wed)
解離ガスの爆発現象
[1518]「夢の暖房機」大爆発:金沢・利屋で爆発、2人死傷 新型の暖房装置点火で (北國新聞社)
という話題を紹介しましたが、これは水暖房機(Water Heater)という解離ガスの反応を応用した新しい技術を利用したものだと思います。
 原理的には解離ガスのCold Fusionを利用したものですが、解離ガスの爆発現象が大変危険なのものであることを勉強するために、YouTubeで発表されている数編の動画を使用させていただいて、まとめてみました。
 「解離ガスの爆発」としてあります。小規模の爆発では「バチッ」という音を発する程度ですが、袋に注入した実験では相当大きな「爆鳴音」を発します。安全装置を取り外して「ロケット遊び」をしている動画では水暖房機の上部が内向きに凹んでいるのが分かります。爆縮によって凹んでいるのではないかと思われます。
 この動画では全て電気分解によって発生させた解離ガスですが、地震現象はマグマの熱によって「熱解離した解離ガスの爆発」が原因であります。

注:金沢で起きた爆発事故は「水の電気分解によって発生した水素と酸素を、ガソリンを貯めた別の金属製タンク内に送って混合ガスを生成し、これを燃料として利用する仕組み。」とありますから、アメリカで実用化されている「Water Heater」とは少し違う方法で燃焼させているのかもしれません。

1563
2009-02-24 (Tue)
美濃中西部群発地震
[1561]に紹介した福井嶺北付近の地震は美濃中西部域を震源として頻発し、群発地震の様相を示しています。
気象庁が発表している一週間の震源一覧から、この付近の地震を抽出すると一週間に285回もの地震が起きています。
このような地震が歪の蓄積現象から生じるとは思えません。
解離層の不安定化による化学反応現象であることを示しています。
一覧は次に載せておきました。
美濃中西部地震一覧

1564
2009-02-25 (Wed)
北大森谷博士の地震予知手法
[1508]で紹介した北大森谷博士の地震予知に関するテレビ番組がYouTubeに掲載されていました。ご覧にならなかった方は下記を見てください。
前半:http://www.youtube.com/watch?v=3alH2-afeWw
後半:http://www.youtube.com/watch?v=K0TXh7hs-b0
この番組で森谷博士は北海道の地震予知は100%完璧に出来ると述べておられます。これほど的確に予知に成功している手法をなぜ気象庁が取り組まないのか不思議です。原因はかつて、高木式磁力計が地震前兆を捉えているのに、現象を起こす原因が不明であるから「非科学的」であるとして、同じく気象庁が葬り去ったのと同じような姿勢を感じます。その経緯はニューオフィス54 55 56に紹介してあります。

さて、この番組で森谷博士は地震の原因を断層地震説に沿って解釈されています。つまり、異常電波が止まってから10日前後で地震が発生する原因として、想像の域を出ないがと断って次のように述べておられます。

断層が周りから壊れ始め、その時電磁波異常が起こるのだが、最後に摩擦の非常に大きな部分があってどうしても残る。これが最後に力尽きて滑る。(10日前後という日数は)その時間だろうと思われる。

これは、地震爆発説で解釈すると以下のようになります。


(10日前後という日数は)解離ガスの発生が終了し、周りから熱が戻ってきて、着火温度に復帰するまでの時間である。解離現象は吸熱反応であるために、解離した直後は温度が低下していて解離ガスは着火しない。つまり解離が継続している間はプラズマ化した解離ガスの移動でMHD発電が起こり、電波異常が起こる期間であって、爆発して結合水に戻ることはない。解離現象が終息し、貯留された解離ガス周辺の温度が戻って着火するまでの時間が10日前後である。

ということになります。電波異常の期間が長いほど、貯留される解離ガスも多くなりますので、大きな爆発になるといえます。
異常期間が長いほど巨大地震になる可能性が高いと言えるでしょうし、終息から発震までの時間も長くなるでしょう。森谷博士の経験則では、異常継続時間と地震の規模に関して、
10〜30分     M1〜4
200〜400分   M4〜5
1000分〜     M5以上
という目安があるということです。

 このように、地震爆発説で解釈すると森谷博士の地震予知手法は的確な「科学的根拠」を持つものでありますから、気象庁は真剣に取り組んでいただきたいと思います。

1565
2009-03-01 (Sun)
結果が見える調査船「ちきゅう」の作業
中日新聞(2月24日夕刊)に海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が再始動するというニュースが載っていました。


「故障した推進装置の修理が二十三日に終わり、五月から紀伊半島沖で巨大地震の発生の仕組みに迫る掘削を再開させる見通しだ。二〇〇七年からの一次調査の成果を踏まえ、ちきゅうによる海洋科学掘削は新たな段階に入る。」とあります。記事の最後には「最終目的の地震メカニズムの解明につなげていきたい。」という平朝彦・地球深部探査センター長の言葉があります。

 600億円をかけて建造されたこの調査船の話題は2005年に[1050]で紹介しましたが、当時は「人類がだれも手にしたことのない、海底下七千メートルのマントル到達に挑む。」とか、「マントルは、地殻の下にあって、大規模な火山活動や地震を起こす原動力になっている。直接マントルを調べることで、画期的な発見を狙う。」いう紹介記事にびっくりして、「マントルは熔融していて、その中に含まれる解離ガスが爆発し、掘削は失敗するのではないかと思う。」と言う過剰な反応をしておりました。このセミナーではマントルは熔融しているという立場をとっているからです。
しかし、今回の記事をみると掘削計画の概略図も載っていて、ほんの地球表面を掘削するだけであることが分かります。また、定説ではモホ面の下部をマントルとしていますから、マントルといっても当然固体部分の岩盤を少し掘削するだけのことです。

それにしても、このような掘削で本当に「地震発生のメカニズム」が解明できるとは思えません。付加体の存在を証明するような大断層が存在するのかどうか、また巨大分岐断層というものが存在するのかどうか知りませんが、潜り込むプレートが削られて出来たとされる付加体という概念には大いに疑問が存在します。

プレートを移動させる原動力とは冷却して重くなったプレートが自重によって沈下していくと説明されています。自重で沈降するフィリピン海プレートの上面から堆積物が削られてカンナくずのように蓄積し、10キロ近い厚みの付加体が形成される、とはとても信じられません。自重で沈降するという静的な動きから、削り取るという動的な動きが生まれることはありえません。
地震爆発論の立場からは探査船「ちきゅう」の計画で「地震発生のメカニズム」が解明するとは考えられません。多分海底に何本かのボーリング調査をするだけで終わることになるでしょうから、あまり悲観的なことは言いたくないのですが、税金の無駄使いになるだろうと思います。そのような結果の見えている研究に国民の血税を使うよりは、[1564]に紹介した森谷先生の確実性のある予知研究に使用したほうが国民は納得するのではないでしょうか。或いは高木式磁力計というものを復元して観測を復活して欲しい、と願うのは私だけではないと思います。

注:ウィキペディアの解説によると、以下のように日本列島の大部分は付加体であるとされています。

「付加体(ふかたい、accretionary prism)とは、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレートの上にたまっていた堆積物がはぎ取られ、陸側にくっついたままとなったもの。日本列島の多くの部分はこの付加体からなる。日本列島の付加体の地質時代は、大陸側から太平洋側に向かって新しくなる傾向にあるが、これは太平洋側から海洋プレートが沈み込み新しい堆積物が付加されるということが繰り返された結果であると考えられている。付加体としては、四国の沖合に広く帯状に分布する地層である四万十帯がある。」

以上がウィキペディアの解説ですが、このセミナーで述べてきたように、プレートテクトニクス理論が破綻していることは明らかですから、「付加体」と言うのは「神話」の世界にある「国引き物語」のような「寓話」にすぎません。そんなバカな!・・・というのが私の感想です。

1566
2009-03-05 (Thu)
トンガ海域の巨大津波
Nemo氏はご自分のブログ「宏観亭見聞録」「トンガの地震は津波を起こしにくい」という少し古い科学誌の記事を紹介されています。内容は、

「 ――(2006年5月の)この地震は M8.0(USGS は後に M7.9 に修正)、震源の深さ 55km。プレート境界で発生する圧縮応力による逆断層型の地震ではなく、沈み込んでいる海洋プレート(スラブ)内で伸張応力によって発生した地震。そのため、上盤(陸側)プレートの跳ね上がりがなく、大きな津波が発生しなかった 。トンガ周辺で発生する地震では大きな津波がおきることは少ない ―― 」(Nemo氏訳)

というものです。
さらにプレートの潜り込みに関してチリー型とマリアナ型があることを説明し、以下のように解説しています。

「上記のトンガの地震は、トンガ・ケルマディック海溝から沈み込んだスラブ内で発生したものですが、この海溝はマリアナ型であると考えられています。上盤プレートと海洋プレートの結合が弱く、プレート境界型の大地震が発生しにくい場所です。」

 つまり、トンガ海域ではプレートの潜り込みがマリアナ型だから、巨大津波が起こり難いという構造的な見解を追加して上記の記事を肯定されています。

しかし、剛体であるプレートが垂直に近い形状で急激に折れ曲がって潜り込む(マリアナ型)とか、プレートが自重によって潜り込むというプレート説による解釈は力学的に納得できるものではありません。
 また、記事中にある「圧縮応力による逆断層型地震」とか「伸張応力による地震」という解釈も自重で沈むだけのプレート内で何故そのような現象が生じるのか力学的に説明することは困難です。
 地震爆発論でいえば爆発の方向が水平に近かったから、大きな津波が起きなかったということになります。爆発が垂直に近い場合にはこの海域でも大きな津波が発生することは当然であると思います。紹介されている他の記事でも、1994年と1977年の地震では津波が小さかったという内容が報じられていますが、これとは逆に大津波が起きたことを推定させるような、巨大津波で運ばれた1600トンと推定される巨石がトンガに存在するという記事もあります。以下はその内容を抜粋したものです。
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古代の大津波が運んだトンガの巨石
Rebecca Carroll for National Geographic News
September 30, 2008


 トンガの中心のトンガタプ島では、不思議なことにサンゴでできた巨石が大地に転がっている。最新の研究によると、この巨石は、火山の噴火によって発生した記録的な津波によって数百メートル内陸へと運ばれたものだという可能性があるという。研究チームは、最後の氷期が終わり、海面が現在とほぼ同じ高さまで上昇した後、過去7000年の間に古代の津波が島の海岸を襲ったと推定している。
 7個ある巨石のうち最大のものは、幅が15メートルあり、重さは1600トンと見積もられている。この巨石は現在、海岸から100メートル以上内陸の海抜10メートルを超える地面に鎮座しており、南太平洋の平らな地形からすると非常に異質な景観をもたらしている。
 テキサス州オースティンにあるテキサス大学地球物理学研究所の上級研究員クリフ・フレーリッヒ氏は、「この巨石は、津波によって上り坂を押し上げられた最大の物体ではないかと考えている。巨石はトンガのあちこちにあるわけではなく、1つの島の1つの場所だけに集中して存在しているのだ」と話す。
 研究チームは、まず地震が原因ではないかと疑ったが、津波がトンガタプ島の西岸を襲っている点から、この考えは棄却された。地震による津波だとすれば、断層線の存在する東方から津波がやって来るはずだからである。

 こうして研究チームは、「トンガタプ島を襲った津波は、島から35キロ離れた海中火山群の1つが噴火して発生したものである可能性が最も高い」と結論付けた。2007年に、トンガ周辺の海底の測量調査が実施され、火山群の中に山腹部分の陥没やカルデラが存在することが判明した。こういった地質学的特徴は、不安定な火山活動や並外れて大きな噴火によって生み出されるものだ。
 研究チームの一員で2003年に初めてトンガの巨石を津波の証拠だと論じたアラン・モートン氏は、「トンガで最後に津波が記録されたのは1919年のことで、現地ではトンガに津波は来ないと考えている人も多い。今回の研究により、トンガの人々も津波の危険性に気付いて、津波に備えるようになるだろう」と話す。
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以上が抜粋した記事です。この記事では海底爆発と断層地震とを別物として考えているようですが、「地震爆発論」ではそのような区別はしません。フンボルトが考えていたように、ごく浅い場所で起きる爆発が火山噴火であり、それより深い場所で起きる爆発が地震現象であると考えています。
 津波が運んだ津波石は石垣島にもあり「津波大石」(推定500〜600トン)として知られています。トンガの津波大石は、推定1600トンですから、相当な規模の津波が発生したものと考えられます。津波は地震の原因である解離ガスの爆発が垂直であれば大きなものになることを知っておかねばなりません。トンガ海域の地震では大きな津波が発生しないという風評がスマトラ沖地震のような悲劇を生むことにもなりかねません。
地震爆発論によって解釈すると、どの海域においても構造的に津波が起こり難い場所などは無いのです。
ただし、今後の調査・研究でサージチャンネルの配列形状に特徴があり、解離ガスの爆発方向に特別の傾向性があるというようなことが判明すれば別の話になりますが・・・。

1567
2009-03-13 (Fri)
大西洋中央海嶺上での大きな地震
北極圏では珍しくM6.5という大きな地震が6日(金)にありました。震央は、北極圏にあるノルウェー領スヴァールバル島北西の大西洋中央海嶺付近です。この地震は、図に示すように大西洋中央海嶺の上で起きた浅い地震(深さ10km)であります。

Nemo氏のブログ「宏観亭見聞録」では「大西洋中央海嶺からのびるトランスフォーム断層(横ずれ断層の一種)でおきたものと思われます。」と紹介していますが、この地震はアイスランドで地上に現れ、さらに北上して伸びている中央海嶺の真上で起きているように見えます。
 地震爆発論では海嶺上で起きる地震の原因は熔融マントルの対流が上昇するときに、マントルに含まれる解離水がその場の解離能力を超えるようになるために、爆発が起きて結合水に変換される化学反応である、という説明になります。(ニューオフィス26参照)


断層地震説では海嶺の真上でも断層反撥で説明するのでしょうか。また、海嶺はプレートが誕生して左右(東西)に拡がっていく場所という説明になっていますが、何故プレートの誕生する場所で摩擦による断層反撥が起きるのか理解に苦しみます。またこの付近は直ぐ西にグリーンランドがありますし、東にはスヴァールバル島があります。グリーンランドやスヴァールバル島は誕生したプレートとどのような関係になるのでしょうか。海底で誕生したけれども、年月が経つうちに陸上に姿を現したのでしょうか、それともグリーンランドの下に潜っているのでしょうか、プレート論者の説明を聞きたいのですが、疑問に答えてくれる方がありません。([1538]参照

1568
2009-03-16 (Mon)
水に関する新しい技術
フリーエネルギーを推進する会レポートというサイトhttp://reportt.exblog.jp/にある、
水の発電機動画(招き猫)を公開します

という記事に半永久的に動く招き猫の動画があります。これに刺激を受けて、自分でも実験してみました。備長炭とブリキ板と水だけでできる3セットの「水電池」で2.90ボルト(3セットを直列につないだ場合)が得られました。不思議ですが、最初は2.74ボルトだったのですが、6時間後に撮影したら2.90ボルトでした。

このような簡単な装置で3ボルト弱の発電が出来るのなら、工夫すれば家庭の電力程度は「水電池」で十分賄えるような気がします。
 水に関しては我々が知らないことがまだまだたくさんあるようです。地球科学の世界にもこの新しい水に関する知識を導入しないと時代遅れの学問になってしまうでしょう。地球内部のマグマの熱によって解離したガスが爆発するのが地震であり、工学的に解離ガスを効率よく発生させて利用しようというのがWater Fuel Cellという新しい技術なのだと思います。ブラウンガス、HHOガス、などの名称で呼ばれている新しい概念のガスを利用する工業技術がエネルギー問題を解決し、未来社会を築いていくのでしょう。


Water Fuel Cell ( WFC ) Researchesのサイトにある上の図にはDissolved Gasesという表現がありますが、石田理論で述べてきた解離ガスのことであります。

追記:装置を設定後16時間経過しても、電池が消耗するということはなく、逆にアップして3.00ボルトを発電しています。上記サイトには招き猫が40日動き続けていると以下のように書いてあります。

「水は蒸発しますので、時々足してやります。−電極がイオン化しつくすまで動き続けるわけです。この動画の装置でも数ヶ月は動き続けます。今日現在で約40日間招き続けています。」

1569
2009-03-16 (Mon)
水に関する新しい技術(続き)
玩具の招き猫が無かったので電池式の時計が動くかどうかを確かめてみました。テスターでは3ボルトあっても、時計は動きませんでした。電流量が少ないからのようです。そこで、「水電池」を5セットに増やし、水に食塩を溶かしてみました。時計に接続しないときは4.5ボルト程度あります。時計に接続すると2.5ボルト程度に電圧の降下がありますが、時計は見事に安定して動き出しました。現在一時間以上経過しましたが、安定して動いています。動画でご覧ください。


1570
2009-03-19 (Thu)
深発地震面の二重構造について
 [1566] で紹介したトンガ海域の巨大津波に関してNemo氏の解説では、
「プレート境界で発生する圧縮応力による逆断層型の地震ではなく、沈み込んでいる海洋プレート(スラブ)内で伸張応力によって発生した地震。そのため、上盤(陸側)プレートの跳ね上がりがなく、大きな津波が発生しなかった 。トンガ周辺で発生する地震では大きな津波がおきることは少ない」
と翻訳されています。

元の記事を見ると、slab-tear earthquake という表現になっていますが、定説地震学では「伸張応力によって発生した地震」という解釈になるのでしょうか。Tearは裂けるという意味ですから、伸張応力によって裂けるという意味ならば、元記事にある図の解説とは結びつかない気がします。
 一方、東京大学地震研究所のサイトには東北地方で起きる深発地震が二重構造になっていて、単純梁に発生する応力場と同じように、上面は圧縮力、下面は引張力が起きるとして以下のように解説してあります。
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2008年7月24日 岩手県沿岸北部の地震の速報

2008年7月24日00:26、岩手県沿岸北部を震源とするMj6.8の地震が発生しました。 (後略)
________________________________________
【概要】
USGSなどの自動決定による発震機構が、東西方向に伸張軸を持つ正断層型であること、震源の深さが108km(気象庁)と深いことから、太平洋プレートに見える二重深発地震面のうち深い方の面において、プレートの沈み込み方向に引っ張りの力(ダウンディップエクステンション: down-dip-extension)を受けて発生した地震と考えら れる。
 東北地方の下に沈み込む太平洋プレートでは、地震分布が厚さ30km程度の薄い二つの層(プレートの上面近くの層と中心近くの層)に分かれ、これを二重深発地震面という。上面の地震は沈み込む方向に圧縮の力(ダウンディップコン プレッション: down-dip-compression)、下面では沈み込む方向に引っ張りの力により発生することが知られている。」


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 以上が東京大学地震研究所の解説です。単純梁の力学から類推して、上面で起きる地震は圧縮力が原因で、下面で起きる地震は引っ張り力が原因で、それぞれ地震になるのだと解釈しているとすれば、自重で沈降しているだけのプレートに何故そのような力が作用するのか理解ができません。単純梁に働く力学を固体で囲まれたプレートに適用するには無理があると思います。東京大学の解説では下面ではなく中間面となっていますが、どちらにしても「引き裂かれる」ことが原因で地震が起きるという力学的メカニズムは存在しないと思います。
 また、トンガ周辺の深発地震面と東北地方のそれとが同じ構造なのか、それとも違うのかなどを含めて、定説地震学における深発地震面には理解し難いものがあります。
 深発地震の二重面というものが重大な意味を持つものであるかのような雰囲気で研究が進められていて、脱水不安定説という考え方にまで発展しているようです。
 しかし、二重面は世界の全地域で見られる普遍的な構造ではありません。東北地域に見られるだけのものです。(参考:ニューオフィス64「世界各地の深発地震面の形状」

私はマントルの対流がこの部分だけ分流しているのではないかと思っています。つまり、東北地方の深発面が二重構造を持つのは、70km付近からマントルの流れが上層と下層の二つに分流し、140km付近でまた合流している姿を表しているのではないかと推定しています。



誰も地球内部を実際に見ることはできませんから、諸現象を合理的に説明できるような説を採用するしかありません。

深発地震面はマリアナ海溝周辺でも他の海溝でも複雑な構造をしていますが、マントルの対流が複雑な流れになっていて、その内部で水の解離と結合という化学反応が起こって、地震が起きていると考えています。これが「地震爆発論」での解釈です。
参考: ニューオフィス6465セミナー[1524]〜[1528]など。

 なお、地震爆発説では、深発地震が海溝でのみ発生し、海嶺では浅発地震しか起きない理由が合理的に説明できますが、断層地震説では合理的な説明が出来ないのではないでしょうか。どなたか事務局(ansin@ailab7.com )まで投稿して、説明をしていただければと思います。


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